新型コロナ労災認定された17事例

判明17例中、医療従事者等以外は4例

2020年7月1日から2日にかけて、新型コロナ労災認定状況について、一部の具体的な事例が報道された。

<共同通信>新型コロナ労災認定の職業判明/バスガイド、土木作業員も
2020/7/1 21:26 (JST)7/1 21:37 (JST) 
新型コロナウイルスに感染し、6月10日までに労災認定された全国17人の職業が1日、厚生労働省関係者への取材で分かった。バスガイドや土木作業員ら4人が含まれ、看護師や医師ら医療・介護従事者は13人だった。・・・・
https://www.47news.jp/news/new_type_pneumonia/4969932.html

共同通信が「取材で分かった」とした情報が、次のような内容であることが明らかになった。

 所轄労働局職 種請求から認定
までの日数
概 要
1大 阪バスガイド641月に中国武漢市からの観光客ツアーガイドを担当
2神奈川看護師(相模原中央病院)27急性肺炎で入院し、後に転院先で陽性が判明し患者の看護を担当
3愛 知看護師(旭ろうさい病院〉38陽性患者の看護を担当
4熊 本土木作業員32感染していた作業員と工事用車両に同乗していた
5北海道ホームヘルパー17利用者が感染していた
6北海道障害者施設職員17利用者が感染していた
7北海道ケアワーカー(千歳市の医療機関)24入院患者に陽性者が確認された
8埼 玉医師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
9埼 玉看護師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
10埼 玉看護師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
11埼 玉看護師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
12埼 玉放射線技師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
13埼 下看護師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
14埼 玉看護師(川口工業総合病院)28陽性患者に対応
15愛 媛マッサージ師10感染者が出たサービス付き高齢者住宅でマッサージを行った
16東 京看護師(中野江占出病院)20勤務先でクラスターが発生
17東 京営業22アフリカに出張、パリ経由で帰国する際に発症
新型コロナウイルス感染症に関する支給決定事例(2020年7月1日判明分)

日本経済新聞は7/2付でこうした情報を厚生労働省サイドの話を含めて次のように報じた。

新型コロナの労災認定 医療・介護関係が大半 17人中13人

新型コロナウイルスに感染し、6月10日までに労災認定された全国17人の職業が、厚生労働省関係者への取材で分かった。バスガイドや土木作業員ら4人が含まれ、看護師や医師ら医療・介護従事者は13人だった。

厚労省はこれまで「生活関連サービス業」などと業種までは公表しているものの、職業については明らかにしていない。
関係者によると、4人は中国武漢市からの観光客のガイドを担当したバスガイドと、感染した同僚1人を乗せて車を運転した土木作業員のほか、陽性者が入るサービス付き高齢者住宅で施術したマッサージ師、パリ経由でアフリカに出張した営業職の会社員。

医療・介護現場で認定されたのは、既に判明している中野江古田病院(東京・中野)の女性看護師のほか、埼玉県川口市の川口工業総合病院の看護師や医師、放射線技師計7人や相模原中央病院(相模原市)、旭ろうさい病院(愛知県尾張旭市)にそれぞれ勤務する看護師2人ら。
厚労省の発表によると、6月10日時点で187件だった労災申請は同30日時点で433件に増え、認定件数は計54件となった。

厚労省は4月、全国の労働局に医療・介護従事者は業務外での感染が明らかな場合を除き原則労災保険の給付対象になると通達。スーパーの店員、バス運転手など「顧客との近接や接触機会が多い職場」は感染リスクが高いとし、申請があれば迅速な処理を行うよう求めている。

日本経済新聞 2020年7月2日

集団感染発生医療機関の労災請求割合は35%止まり

2020年7月1日の衆議院厚生労働委員会における阿部知子衆院議員が新型コロナ労災関連の質問を行った中で、加藤厚生労働大臣ら政府からの次のような答弁があった。http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=50391&media_type

  • 厚生労働省が5月段階でクラスター発生把握とした医療機関が85医療機関、うち、労災請求がされたのは6月1日段階で11機関、6/30では37機関から労災請求があった。
  • 各都道府県労働局が6月30日、集団感染発生があったと確認した(都道府県労働局6/30段階)105医療機関。うち98機関には労災請求勧奨した。あとの7機関はすでに労災請求済のため勧奨はしなかった。
  • 国家公務員については、たとえば厚労省は、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号での感染者9名のうち、6/30までに3件、厚労省に報告あり、これは人事院に報告ずみ。のこりについても、調査等をすすめている。

というようなことだった。
上記105機関には85機関が含まれると解釈されるので、35/105=35.2%からしか労災請求が行われていない。

労災認定事例の具体的情報開示に前向き大臣答弁

本サイト記事の通り、医療従事者等とともに、医療従事者以外の労災請求件数が低迷している。

原因としては、医療従事者については「業務外の原因が明確でなければ認定する」(上記の委員会でも加藤大臣が述べている)との方針が通達でしめされている反面、医業従事者等以外における認定事例の具体的状況については、今回、ようやく4例について明らかにされたに過ぎない。

この点について加藤大臣は、認定事例情報を示すことに前向きな考えを述べたので今後の一定の情報が開示されていくとみられる。

使用者に対する労災請求勧奨が重要であるとともに、ほとんど情報がない現状においては「どのような事例が認定されてきているのかを具体的に明らかにすること」が患者・感染者の立場からはより労災請求をしやすくするだろう。今のところ、不支給事案が生じていないが、いずれ不支給決定を受ける事案もでてくるだろう。それも含めて明らかにしながら、迅速かつ社会的に公正な労災認定作業が行われるべきである。

厚生労働省などの認定当局は、被災労働者保護を踏まえた認定作業を行わなければならないし、かつ、これから新型コロナウィルス感染症と向き合おうとしている社会におけるコンセンサスを逸脱した不当な線引きをしてはならない。

本サイトの新型コロナウィルス感染症関連記事一覧

[toc]

コロナ禍と労働災害発生状況-感染症対策と高年齢労働者対策が課題

目次 コロナ禍の労働災害が激増労働災害の全数を押し上げ高年齢労働者対策と感染症対策が安全衛生の課題にコロナ禍の労働災害が激増 新型コロナウイルスの感染者数増加が止まるところを知らない状況だ。第7波が到来して以降、1日に2 […]

<ビデオ解説>新型コロナウイルス感染症の労災申請のすべて その1、2、3、4~全国安全センターYoutubeチャンネル

全国安全センターが「新型コロナウイルス感染症と労災」解説動画を公開した。 それぞれの内容は、 その1「新型コロナ労災認定状況と認定基準」、その2「具体的な労災保険手続き」、その3「今後の課題」、その4「厚生労働省の実務マ […]

コロナ禍の労災補償と安全衛生-労働者が感染したら迷わず労災保険の給付を請求するという常識

目次 コロナ労災認定件数「激増」 蓋然性があれば業務上 コロナ禍療養の現実に即した対応 コロナ禍労災は職場での対応が大事 死傷病報告と退避させる義務 コロナ労災認定件数「激増」 新型コロナウイルス感染症の労災保険給付件数 […]

1万件を超えた新型コロナウイルス感染症の労災認定件数

民間労働者の労災補償をカバーする労災保険での新型コロナウイルス感染症労災認定件数が、7月に入って累計で1万件を超え、8月27日現在で、労災認定件数(支給件数)は12,840件。 決定件数では13,097件で、13,097 […]

在宅の職場環境も安全衛生法令並みにー新型コロナ対策でテレワークガイドライン改正

新型コロナウイルス感染症対策が問題となって以来、「テレワーク」という言葉が一気に普通名詞として存在感を増している。テレワークとは、仕事を労働者の自宅で行う在宅勤務、所属する事業所外に設けられたオフィスを利用するサテライト […]

新型コロナウイルス労災請求1万件/ 休業補償停止事案について厚労省に要請

目次 請求1万件超、認定5千件超 休業補償停止事案 請求1万件超、認定5千件超 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るい始めて1年以上が経過した。COVID-19による労災は2020年5月に初の […]

新型コロナ労災請求2000件突破ー11/26現在:請求2181件、認定1141件、不支給31件(はじめの不支給11件(10/26)の理由は「コロナ感染と認められなかったため」ー厚労省) 2020.11.26

目次 最新の新型コロナ労災認定状況 コロナ労災認定2000件超え 新型コロナ労災の「不支給決定」は2020.10.20に11件計上し、31件まで増加。 労災請求件数、認定件数は多くはない 新型コロナウィルス感染症労災関連 […]

新型コロナ労災の認定事例紹介、13事例に増加更新/厚生労働省 2020.10.21

厚生労働省は、10月21日付で、新型コロナ労災の認定事例を13事例に増やして、改訂した。 労災請求件数がまだまだ少ないこと、製造工場などからの請求がどう考えてもすくないこと、認定事例の数も少ないことなど、新型コロナ労災に […]

新型コロナウィルス感染症について~まとめ (関西労働者安全センターサイト記事)

新型コロナウィルス感染症感染症に関する主に労災、安全衛生関連記事のまとめです。 [toc] また、全国労働安全衛生センター連絡会議(全国安全センター)の新型コロナウィルス感染症関係記事はこちらになります。

新型コロナ労災認定687件(1330件請求中)、地方公務災害認定53件に 2020.9.28現在

新型コロナウィルス感染症労災・公災認定状況(最新) 厚生労働省と地方公務員災害補償基金は、新型コロナウィルス感染症による認定件数を職種別に公表しているが、最新の数値は次の通り。 目次 労災保険による新型コロナ労災請求・認 […]

新型コロナ労災認定・10事例(厚生労働省2020.9.28)~港湾作業員、タクシー乗務員でも

新型コロナ労災認定事例10ケース(厚生労働省公表分2020.9.28) 厚生労働省による労災保険での新型コロナ労災認定件数は2020年9月28日現在、687件(請求件数1330件中)である。 このうち、10事例について概 […]

新型コロナウィルス感染で現場から報告~関西労働者安全センター運営協議会で/大阪

8月3日、関西労働者安全センター運営協議会を開催した。2月に総会を開催して以来、会議を見合わせていたが、ZOOMによるネット参加と併用という形で実施した。 忙しい中、多数の委員に参加いただいた。ZOOM使用により、遠方か […]

急増するテレワークと労働環境-在宅勤務の労働条件確保、安全衛生対策が課題

目次 テレワーク促進政府目標、新型コロナ対策ですんなり達成?! テレワークガイドラインは労働基準の適用が基本 テレワークの作業環境ー「事務所則」準拠はあくまで助言 労働基準が試される~厚労省の新たな検討会の議論 テレワー […]

新型コロナ労災認定された17事例

目次 判明17例中、医療従事者等以外は4例 集団感染発生医療機関の労災請求割合は35%止まり 労災認定事例の具体的情報開示に前向き大臣答弁 判明17例中、医療従事者等以外は4例 2020年7月1日から2日にかけて、新型コ […]

新型コロナウィルス感染症・労災申請400件超、労災認定は54件。不支給はゼロ件(2020/7/2)-労災申請は積極的に!迷ったら相談を!

[toc] 厚生労働省の5/12の段階で、労災請求件数29件、認定ゼロ件だった新型コロナウィルス感染症労災認定状況が、ここにきて、ようやく請求件数が増えてきた。公表されている最新数字(2020年6月30日現在)では、労災 […]

新型コロナウイルス感染症: 労働災害としての対策を明確に

目次 いまだ4件の給付新型コロナウイルス感染症の労災 医療従事者は原則業務上高い感染リスクの労働環境下も 積極的な周知が不可欠震災にくらべて遅かったが… 特別休暇が前提の公務員見えにくい公務災害の現状 コロナ禍の死傷病報 […]

労働者の新型コロナウィルス感染症にかかる「労働者死傷病報告」提出義務違反は罰則対象=労災かくし。厚労省がリーフレット

目次 リーフレットを持って、事業場に監督に行くべし 労災申請・認定件数極小、地方公務員はゼロ、国家公務員は情報すらなし リーフレットを持って、事業場に監督に行くべし 病院、介護施設、役所業務、救急など、公務労働、民間問わ […]

コロナ労災の請求件数はいまだに30件弱 5/12現在:仕事関係で感染発症したと考える方は、積極的に労災申請を!

厚生労働省の5/12現在の公表数字で,労災保険への新型コロナウィルス感染症の労災請求件数がいまだに29件にとどまっていることがわかった。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuit […]

コロナ緊急事態宣言下で街をかける Uber Eats(ウーバーイーツ)配達員にインタビュー

新型コロナウィルス感染対策での緊急事態宣言後、事務所のあるオフィス街では、ウーバーイーツのロゴの大きなカバンを背負った配達員たちを、多数見かけるようになった。しかも、明らかに外国人が多い。小柄で黒髪のアジア系の若者が多く […]

新型コロナウィルス感染症と労働組合の対応

目次 たとえば 労働組合からの統一要求 安全対策 たとえば 近所の医院で発症者が確認されたとか、商店の休業などの張り紙を目にすることが増えてきたことでまさに身近な問題となった新型コロナウィルス感染症問題だが、先月末から関 […]

新型コロナの労災:治療費、休業補償は労災適用されます/お困りの方は相談を。

一般的にも誤解されていることが多いのですが、労災申請のための用紙に事業主証明欄があることから、事業主が証明しなければ、申請できないと思っている労働者がまだまだ多いです。労災をいやがる会社が、証明拒否をして被災労働者に圧力 […]

新型コロナウィルス感染症で「医師、看護師、介護従事者等は原則労災の対象」など幅広く、より具体的に。通勤災害、平均賃金算定などに課題 厚生労働省新通達 2020年4月28日

業務中に感染したとみられる新型コロナウィルス感染症について、労災取り扱いについての問題点が指摘されていたが、さらに具体的に踏み込んだ記載の新たな通達を厚生労働省が出した。短い通達でこれまでよりより具体的で、小難しいことを […]

新型コロナ労災対応で新通達-「予断なき受付」徹底を指示 2020年4月23日

厚生労働省が「相談又は問い合わせがあった場合には、感染経路が特定できないことをもって直ちに保険給付のないしょうとならない胸を説明するなど予断を持った対応をおこなうことのないよう徹底されたい」との現場への指示をした通達を出 […]

新型コロナウイルス感染症と労働安全衛生および労災に関する緊急要請/全国安全センター

全国労働安全衛生センター連絡会議(全国安全センター、東京都)は、新型コロナウィルス感染症によって生じている事態に対して、「 多くの労働者の安全と健康、権利と尊厳が深刻な危機にさらされて」いることに対して労働者の健康と権利 […]

労災申請3件。「コロナ労災幅広く 感染認定、柔軟に解釈 厚労省」との報道 2020/4/24

今朝の毎日新聞朝刊が厚生労働省からの取材として、申請件数が3件になっていることと、認定調査にあたっては柔軟に対応する方向だということを伝えた。窓口対応、相談対応においてこれが徹底されて、申請抑制にならないようにしてもらい […]

新型コロナウィルス肺炎労災申請、未だに2件。相談件数は500件超。「仕事や通勤が原因で感染」と思ったらまず申請を。

全国の労働局等に設置されている「特別労働相談窓口」に寄せられた相談状況(4月14日時点)が明らかになった。分野別の数字は次の通り。(阿部知子衆議院議員事務所経由で東京労働安全衛生センターが公表) 全体で20万人近くから相 […]

新型コロナウィルス肺炎で事業者団体向けに厚生労働省が通知2020年4月17日付/事業者に労災申請の勧奨求める

今回の事態に対処するための業界関係団体など向けて厚生労働省が通知を出した。 緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業で働く方々等の感染予防、健康管理の強化について、経済団体などに協力依頼しました 令和2年4月17日(金 […]

事業主確認廃止など迅速化/韓国「新型コロナウィルス肺炎」労災対応で

韓国で新型コロナ肺炎による労災が初めて認定されたことを本サイトでも報告したところだが、その際の、認定当局である韓国勤労福祉公団の報道発表を入手した。日本では労災補償業務は厚生労働省(労働基準監督署)が行うが、韓国では同公 […]

韓国で「新型コロナウィルス肺炎」労災認定

ハンギョレ新聞日本語版によると、今回の新型コロナ肺炎による労災が初めて認められた。認定されたのは、ソウルのコールセンターの労働者で労災申請して3週間で認定されたということだ。今後はさらに増加すると考えられる。記事の中のコ […]

新型コロナ感染症の労災申請は積極的に/労基署に「労災は無理」と言われたら相談を

仕事との関連で新型コロナ感染症(以下、コロナ)に感染、発症した場合は、業務上疾病となる。 厚生労働省はその取扱いについて、1ヶ月以上前に次の通達を出していることがわかった。 「新型コロナウイルス感染症に係る労災補償業務の […]

新型コロナウイルス感染症の労災の取扱について

医療現場をはじめとして、業務に関連して(業務に内在する危険が現実化して)感染、発症した場合については、労災として認められるものです。 いわゆる「職業病リスト」においても、そのようなカテゴリーが設けられています。 労基則別 […]