労働者の新型コロナウィルス感染症にかかる「労働者死傷病報告」提出義務違反は罰則対象=労災かくし。厚労省がリーフレット

リーフレットを持って、事業場に監督に行くべし

病院、介護施設、役所業務、救急など、公務労働、民間問わず、新型コロナウィルス感染症に感染発症した労働者が出たときは、労働安全衛生法に決められた「労働者死傷病報告」を提出する義務が事業主に課せられている。この義務に違反した場合は、罰則がある。提出しなかったり、ウソの報告をした場合がこれにあたる。

役所が「労災かくし」というときは、厳密にいえばこのことを指す。労災事故のときに「会社が証明しない」「健康保険を使うことを強制された」「病院で休みなさいと言われたのにとにかく会社に出てきて座っておけ」と言われたといった事態を含めて「労災隠し」と言うのが一般的なのだが、行政側の定義はといえば、「労働者死傷病報告」提出義務違反、虚偽報告のことを「労災かくし」と言ってる。ちなみに、なぜか、厚生労働省は「隠し」と漢字を使わず「かくし」としているようだ。

どうも、厚生労働省も新型コロナウィルス感染症について、労働者死傷病報告が提出されていないのか、わざわざ、新型コロナウィルス感染症にかかる労働者死傷病報告を提出を求めるリーフレットを作成し配布している。コロナ労災請求やコロナ公務災害申請が、全然伸びないことと、いわば、表裏一体にあるわけで、「コロナ労災隠しは犯罪です」という線からの指導強化もしておかないと、何を言われるかわからないというわけだろう。しかしながら、リーフレットを作りました、ホームページにあげました、ではダメだ。リーフレットを持って、感染が発生していることがわかっている事業場に直接監督に出向いて、労働者死傷病報告提出を求め、同時に、労災請求や公災申請を指導する義務と責任が労働基準監督署、厚生労働省にはある。そのリーフレットがこちら。提出しないと、50万円以下の罰金です。

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労災申請・認定件数極小、地方公務員はゼロ、国家公務員は情報すらなし

とにかく、コロナ労災の申請数、認定数が少ないままだ。5/20現在、厚生労働省は、労災請求43件、うち認定3件だと公表している。詳細は次の通り。

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一方、公務員。そのうち、地方公務員の申請認定状況は、現在、申請・認定ともゼロだというから驚く。たとえば、救急隊員の感染発症が相次いだが、彼らは地方公務員のはず。ほかにもいろいろな職種の地方公務員が感染、発症しているはずだが、ゼロ。

全国労働安全衛生センター連絡会議

さらに、国家公務員。こちらは、使用者の国側が(要するに勤務している役所・機関)が感染発症を知れば、災害補償をする義務がある。だが、こちらは国がまったく情報を出そうとしていない。

全国労働安全衛生センター連絡会議

新型コロナウィルス感染症での第一線労働者をどう守るのか、これが最重要課題。かれらが感染発症したとき安心して治療、休業できるために、労災、公災としてすみやかに対応しなければならない。

今後の新型コロナウィルス感染症の第2波、第3波、また、さらに強力な未知の感染症の到来を想定内として対策がしっかり立てられることになるだろう。労働者の安全衛生対策、権利確保・補償対策はそのなかで重要な位置を占めるという認識で、今日の労災をめぐる問題状況の改善にあたるべきだ。