2023年連合大阪「外国人労働者なんでも電話相談」実施●大阪
多言語相談対応できる機関は行政も含めて増えてきた。現在はインターネット翻訳も発達し、また誰でも端末を持っているだろうから、どんなことでも検索して翻訳すれば一定の情報は手に入るに違いない。
それでも、問題に直面して、解決を目指す、とまでなると、インターネット検索で回答を探すことはかなり困難だろう。問題の整理や相談者本人のバックグラウンドも含めて考えなくてはならず、そのような外国人労働者のために連合大阪が毎年実施している「外国人労働者なんでも電話相談」は、10か国語で対応が可能であり、相談を受け付けてから解決までの道筋を具体的に示すことまでできるたいへん貴重な催しである。
今年の「外国人労働者なんでも電話相談」は3月24日~26日に実施され、RINK(外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)の協力のもと、タイ語、ベトナム語、ネパール語など10カ国語で相談に応じた。
期間中、80人から116件、10か国語すべての言語で相談が寄せられた。労働問題は約4分の1の31件、労災相談は5件でいずれも重傷事案である。骨折、失明、切断など長期におよぶ療養期間を要し、さらに確実に障害が残るケースばかりであった。
事業主が労災請求をしていないと考えられるものはうち2件で、残り3件は自分の置かれた状態を把握できていないことによる不安であった。自分の療養が労災保険で処理されているか否かの確認は、日本語の不自由な外国人労働者であってもそれほど難しくはない。病院の窓口で「労災ですか?」と尋ねればよいだけである。病院からの回答もYESかNOしかないのだから簡単に理解できるだろう。
問題はそれからで、健康保険で処理されているとか、療養補償給付・療養給付の手続きはされていても、休業補償給付・休業給付の請求はまだされていないとか、あるいは障害が残っているのに障害補償給付・障害給付請求がまだされていないというとき、適切にアドバイスができるのが直接相談の利点である。
そのほかに多かった相談は退職相談であり、2019年に新設された特定技能労働者からの相談が印象に残った。
来日し、ある会社で就労していたが、より良い条件を提示する会社が見つかったため転職を決めたところ妨害された、というのである。
具体的には、退職の意思を伝えた際にひどく怒られた、というレベルのものだが、人手不足の解消のために設けられた制度なだけに、労働者を縛り付けておきたい事業所と、労働条件の良い会社に転職したい労働者間の軋轢は今後も絶えないだろう。
外国人技能実習生と異なり、転職が自由に認められる特定技能外国人労働者について言えば、かれらの転職を制限する施策を積極的に展開していかないと、必要な労働力を確保できない事業所が増えていくばかりである。
すでに大阪府や愛知県は、「いつまで働くか会社と約束している人はさいごの日までやめることができません」とか、「原則として期間の途中でやめることはできません」と記載したパンフレットを外国人労働者に頒布している。
大阪府にいたっては、外国語版には途中で辞めた場合に事業主から損害賠償請求を受けるおそれがある旨まで記載している。なりふり構わない労働力確保を追求する政府と外国人受入事業所だが、このような事業所の労働条件や労働安全衛生対策が十分なものであるとは到底考えられない。
今後もますます外国人労働問題は増えていき、労働団体の役割はますます重要になっていくはずである。
関西労災職業病2023年4月542号