深刻な人手不足の大阪がねらう外国人労働者の活用

コロナ禍をこれ以上考えないようにすることになったこともあり、2019年4月に創設された新たな外国人の在留資格「特定技能」を活用し、今後多くの外国人労働者が流入してくることが見込まれる。私たちが暮らす大阪府では「外国人に選ばれるOSAKA」を目指してOSAKA外国人材受入促進・共生推進協議会を設置し、この9月8日に第一回協議会が開催された。

この協議会は大阪府および大阪出入国在留管理局(大阪入管)に事務局が置かれ、外国人労働者の受入と共生を進めていく。大阪入管は、「管理から共生へ」という標語を掲げ、多文化共生社会を築いていくための先兵になるという。また、国の218施策に及ぶ「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を積極的に活用し、大阪に外国人労働者が流れてくる枠組み作りのヒントを提供してくれる。

大阪府にとっては、なんと言ってもきたる大阪万博とその後の発展が最大の関心事である。万博に向けて莫大な費用を投入している以上、なんとか開催したもののそこで力尽きてしまってはいけない。万博後も発展していくビジョンがどうしても必要なのである。次ページ上の図は「外国人労働者があるとき」と「外国人労働者がないとき」を図解したもので、この絵のように、外国人労働者がないと、万博も盛り上がらないし、万博後はもはや立つこともできなくなってしまうおそれがある。大阪のために外国人労働者は不可欠と言っても過言ではない。

また、第1回協議会では、「どんな分野に外国人労働者を配置するか」という夢も議論された。下の図によると、大阪万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にあわせて、不老長寿の研究や空飛ぶ車の開発において、日本人にはない感性を持ち込んでほしいということと思われる。

図1

図2

ところで、両図で多用されている「多様な外国人材」とはどのような人材だろうか。

日本語では、意味のない修飾語を入れないと文章として落ち着きがなくなることがあるので、とりあえず入れているだけかもしれないが、下図では「成長をけん引する人材」、「現場を支える人材」、「専門性のある人材」、「得意分野を持つ人材」、「働く意欲のある人材」、「大阪に魅力を感じている人材」と例示している。

しかし、「現場を支える」ことで「成長がけん引」される。現場を支えるためには「専門性」が必須だろうし、「得意分野」とは「専門性」の言い換えでしかない。「働く意欲のある人材」については、そんなレベルでいいのかと不安になるし、「大阪に魅力を感じている」に至っては「何か大阪にまつわるようなことを入れておこう」と取って付けたように入れたように思える。

本来であれば、観光や文化紹介のために大阪府が多様な出身国からなる外国人スタッフを複数雇って、国立文楽劇場を外国人観光客でいっぱいにするくらいのアイディアを出せば良いのだが、そもそも大阪の現体制が金にならない文化は不要というスタンスだから、そんなことに思い至るはずもない。

次に準備会で抽出・共有した課題を見てみよう。

はじめに前提として、これまでは外国人労働者について東京に大きく後れを取っていた。ここ2年は来日者が少ないという側面もあるが、実は令和3年度の外国人労働者数は過去最多であるにもかかわらず、多くが東京で就労し、さらには愛知県にまで負けている。さすがに愛知を抜くポテンシャルはあると信じたいのが大阪の心情であろう。

愛知を追い抜くためには、大阪の状況を的確に把握しなければならない。国が外国人労働者が入国しやすい環境を整備するという前提で、大阪側で用意できることも準備会で検討されている。次の図は、外国人住民に対するアンケートと、外国人労働者を受け入れている事業所に対するアンケートの集計である。

図3

図4

いかにも複数回答可でもっともらしい選択肢を選んだような結果になっているが、結論には「受け入れた外国人が安心して働き暮らしていくには、相談体制や日本語教育の充実が必要」と書かれている。

しかし、相談体制が整備されることではなく、ストレスなく快適に生活ができる環境を整備してほしいと外国人住民は思っているのではないだろうか。相談窓口を設置しても、解決につながらなければストレスは増すだけである。また、日本語教育についてはこの回答からあまり必要とされているように思えない。外国に住んだことのある人であれば分かるが、滞在国の言語ができなければできないでなんとかなるので、生活するうえではそれほど重要ではないのである。

さて、このような施策をオール大阪で取り組むことによって、東京、愛知に行けなかった外国人労働者については大阪で引き受けることができるかもしれない。

実際は他府県でも同じような協議会は設置されていて、大阪は比較的後発県になるのだが、これからは和歌山県に来たものの労働条件が悪い、長崎県に来たもののもっと都会で暮らしたいという外国人を引きつけることも可能になる。

とはいえ、どのような外国人労働者が来るのか、ということには今のところ関心がなく、事業所が欲しがる労働者をどのように確保するか、ということにばかり着目しているように思える。

関西労災職業病2022年9月536号