「まあ、これでしばらくは生きれるなあ」-胸膜中皮腫患者の前向き一辺倒-闘病記~死ぬまで元気です/44 右田孝雄
皆さん、ご機嫌いかがですか?私は至って元気です。というのも、いいことがあったんです。
1月下旬なんですが、PETCT撮影の検査を一年ぶりに行いました。数日後の診察日に主治医からその結果の話がありました。どんな結果になってもこういう時って聞く前はなかなかの緊張感がありますよね。私も診察室に呼ばれるまでは平静を装ってはいたものの頭の中はその日の血液検査や抗がん剤治療のことよりもPETCT検査結果のことでいっぱいでした。
診察室に呼ばれて、主治医と対面に向かい合って検査結果を言ってくれるのかと思ったら、先に血液検査とレントゲン検査の結果を見て、「うん、変わらんなあ」と言うんです。
「PETCTの結果はどうなんですか?」と聞くと、
「まあ、待てや」
と。なんか意味ありげな対応するなあと思っていたら、徐にPETCT画像を画面に映し出して、映像診断センターの所見のコピーを手渡してくれました。
私には、もともと胸部の4か所に目立った腫瘍があるのですが、所見ではそのうち右第9肋骨外側に増大が認められますと書かれていました。その下にも一年前と変わらない腫瘍が集積している可能性があると書かれていました。でもこの二つは画像で見る限りそんなに成長しているようには見えませんでした。それよりも、特記したいのは残りの2か所で、右腸骨、仙骨翼にあった腫瘍が良性変異かもしれませんと書かれていたのです。画像を見ても主治医もびっくりなほど消えているに近かったのでしょう。
「ここが消えてるんよ」
と首を傾げながら笑みを浮かべて話してくれました。
4か所中2か所が良性変異の可能性があると書かれて喜ばない患者はいないと思います。リンパ節や多臓器への転移も見られなかったとも書かれていたので私は主治医の前で小躍りしました。ただ第9肋骨の外側に出てきた腫瘍に痛みが出たら放射線治療も考えようと主治医は冷静に診断してくれました。
「まあ、これでしばらくは生きれるなあ」と主治医が言い、私はその言葉を受けて、
「じゃあ、先生はいつまで経っても辞められませんね」と返しました。
主治医は、3年前に定年を迎え、現在は嘱託で外来患者だけを診ています。ただ3年前に主治医は私に、
「おまえの面倒は最後まで診てやる」
と、言っていたんです。おまけに、昨年初孫ができてその際もお祝いを言うと顔がにやけていました。その言葉に私は便乗して、
「私が長生きすれば先生も退職できないし、いつまで経っても孫とゆっくり遊べませんね」と、言ったら主治医から、
「お前のせいじゃ」と、笑って返されました。
私にとってこんなに嬉しい「お前のせいじゃ」はなかったですね。
ということで、私はまだまだ頑張ってやれることやりながら、前に進んでいきますので、皆さんどうかこれからも元気だけが取り柄の中皮腫患者とのおつきあいよろしくお願いいたします。
関西労災職業病2022年2月529号