石綿健康被害救済法の改正を!-胸膜中皮腫患者の前向き一辺倒-闘病記~死ぬまで元気です/42 右田孝雄
皆さん、ご機嫌いかがですか?私は至って元気と言いたいのですが、この11月から特に仲良くさせていただいていた5人の患者さんが旅立たれました。
もう心が折れるを通り越して、感情のコントロールができません。本当に悔しくて悲しくてなりません。これ以上、患者さんの旅立ちを見たくはありません。
そのためにも今のアスベスト被害者の救済制度を見直さなければなりません。
私たちは今、「石綿健康被害救済法」の改正に向けて、勉強会や各地の国会議員への陳情を積極的に行っています。
私も中皮腫患者ですからいつ倒れるか、急変するか分からないという不安もありますが、私は表題にもあるとおり「死ぬまで元気です」。できることをできるうちにやるつもりです。
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会では「石綿健康被害救済法改正への3つの緊急要求」を提言致しました。提言の中身は次の通りです(参照記事はこちら)。
①「格差」のない療養手当の見直しと「すきま」をなくす認定基準の見直し
現在、労災認定者と石綿健康被害救済制度(以下、救済制度)認定者の社会保障は平均的に見ても明らかに「格差」が生じています。
特に働き世代や子育て世代の40、50代の患者は石綿ばく露してからの潜伏期間が短いためどうしても幼少期のばく露と位置付けられ救済制度の認定となってしまいます。一方、最近では建設アスベスト訴訟で多くの被害者が救われています。「建設アスベスト給付金制度」もできて、今後も多くの建設被害者が救われます。しかし、建設被害者や泉南型被害者以外は国すら責任を認めていない状況で、益々補償の「格差」は広がる一方です。
私たちの目標は全てのアスベスト被害者が平等に公平な社会保障を受けることです。そうするためには、まずは施行以来全く見直されない救済給付金の引き上げを要求し、全てのアスベスト被害者が救済されるように認定基準の緩和を求めます。
②治療研究促進のための「石綿健康被害救済基金」の活用
現在、胸膜中皮腫の標準治療はシスプラチン+アリムタ、オプジーボ、オプジーボ+ヤーボイがそれぞれ条件付きで承認されていますが、他のがんに比べても少ない方です。ましてや腹膜や心膜、精巣鞘膜中皮腫については未だ標準治療はありません。
中皮腫は難治性希少がんと言われるだけに、完治が難しく患者の少ない病気です。製薬会社はどうしても患者の多い病気から臨床研究を行ないます。ただ、中には率先して中皮腫の治療研究をされている医師や病院もあります。このような医師主導型治験は資金の調達が問題として大きくあり、なかなか実現も難しい現状です。
現在、石綿健康被害救済基金は約800億のストックがあるとされています。もしその一部が治療研究に使用することができたら、新しい治療法や新薬が少しでも早く開発されるのではないかと思います。もし、中皮腫の特効薬ができたら、それが少しでも早く処方できたら、中皮腫患者の余命は延びますし、完治する患者も出てくるのではと期待します。
これから罹患する患者のために、未来の子や孫のために、治療研究促進のために基金の一部活用できるための法改正を求めます。
③待ったなしの時効救済制度の延長
現在、約3割の中皮腫患者、半数以上の石綿肺がん患者の社会保障の認定がされていません。なのに、2022年3月28日には、5年以上前に患者が亡くなられ、労災請求権が時効となったご遺族を対象とした特別遺族給付金制度が終了し、石綿救済制度でも特別遺族弔慰金・特別葬祭料にかかる法施行前に中皮腫及び肺がんで亡くなられた患者のご遺族の請求権も同日以降、一切なくなってしまうんです。もうすでに、それは目の前に来ています。
このままでいいのでしょうか。未だに年間10件からの請求があると聞きます。まずは全てのアスベスト関連疾患患者が救済される権利があることを隙間なく周知してから考えるべきではないでしょうか。
直ちに延長または撤廃を求めます。
これら3つの緊急要求を実現するために、セミナーや陳情などできることをやっています。法改正ができるまではこのまま元気に活動できたらと思います。皆さん、どうかご支援のほどよろしくお願い致します。
筆者ミギえもんのブログ「悪性胸膜中皮腫と言われてどこまで生きれるかやってみよう!」
中皮腫サポートキャラバン隊HP みぎくりハウス
関西労災職業病2021年11・12月527号