ローラー巻き込まれ事故/ 技能実習生重傷労災事例2<大阪>
食品製造工場で働く外国人技能実習生が機械に腕を巻き込まれて負傷した。 新たな部署に異動した約3ヶ月後の事故である。左手首の用を廃する重傷で、 手首だけではなく手指の機能にも重い障害を残すことになった。
シー ト生地を製造する機械において、 ローラーを清掃する際に電源を切らず、ローラーを回転させたままヘラで生地のカスをこそぎ落としていたところ、ヘラだけではなくヘラを持っていた左手が巻き込まれてしまったというのが事故の詳細である。
事業所において定められていた作業手順によると、電源を落としてから清掃作業をすることになっていたが、現場では効率を優先して機械を止めずに清掃するよう指導していた。 また、本人によると、 その指導をしたのはアルバイ ト社員だったという。これまで機械を停止しないまま清掃作業をしてきて一度も事故が発生しなかったこと、 ローラー間の幅も3cm程度であり、外から見ると「こんなところに大人の手が入るかな?」 という幅だったということもあり、 こんな機械でケガをすることはないだろう、 という慢心が今回の事故につながったようである。
外国人技能実習生を受け入れる企業としては事業所規模も大きく、機械の改善にもすぐに取り組み、 再発防止策も徹底している。 しかし規模が大きいことにより、 細かい指導が行き届かず、 作業について現場での判断に頼っていたのではないだろうか。
被災者としては残り1 年残す技能実習期間について、 重い障害を残したまま就労するか、実習を中止して帰国するか悩んでいるところだが、残るにしても技能実習を継続する要件を満たさないおそれがある。職種ごとに求められる必須の実習内容が、 手が不自由であることで実施できないためである。
事業所も発生した事故には責任を痛感していて、 被災者の雇用を継続して可能な作業に従事してもらうつもりでいるが、平成29年施行の技能実習法において外国人技能実習制度の趣旨を徹底する方向に舵が切られたことにより、求められる実習が実施できないという理由で在留の更新が認められないことがありうる。事業所からも協力を得て解決していかなくてはならない問題である。
『関西労災職業病』2019年3月(297)