全国安全センターが地公災基金へ要請書/請求を阻害する所属長の証明欄

全国労働安全衛生センター連絡会議では、この2月5日に地方公務員災害補償基金に要請を行い、基金事務局との話し合いを行った。
労災保険にくらべて公務災害の認定請求という手続きがあることにより、所属長や任命権者を通すという間接請求になってしまう問題がかねてより指摘されてきたところだ。たとえば上司である所属長のパワーハラスメントにより精神疾患を発症したという公務災害認定請求であっても、「公務災害認定請求書」の様式には、「3所属部局の長の証明」欄や「5任命権者の意見」欄があり、両方とも押印して証明することになっている。
もちろん地方公務員災害補償法の規定は、所属長や任命権者が公務上災害であると認めなくても被災者には請求する権利があることは明確なのだが、請求書はそうした請求を阻むかのような様式となっている。
この点について、地公災基金は一昨年11月に様式の欄外にある「注意事項」で、「『3所属部局の長の証明』の欄の証明が困難である場合の取り扱いは、地方公務員災害補償基金に相談すること。」という新たな記述を加える改正を行っている。
あまりよく意図が伝わらない注意書きだが、基金はずっと前の平成23年11月25日に各支部事務長あての事務連絡で次のように説明している。
「2 公務災害認定請求書等の取扱いについて
公務災害等の認定請求に当たっては、被災職員に対し、災害の発生状況等の内容について当該職員の所属部局の長の証明を受けた証明書の提出を求めているところです。
しかし、所属部局の長において災害の発生状況等についての把握が困難であり、公務災害認定請求書等の記載内容について証明ができない箇所がある場合も見受けられるようです。このような場合については、当該箇所が証明困難である旨を公務災害認定請求書等の所属部局の証明欄等に記載のうえ、被災職員が速やかに任命権者を経由して基金に当該公務災害認定請求書等を提出できるよう、任命権者を通じて所属部局の長に対し周知いただきますようお願いします。
また、被災職員が証明を受けようとして、公務災害等の認定請求書を所属部局の長に提出したにもかかわらず、長期間証明がなされない等、やむを得ない事情により証明がなされないまま被災職員等から基金に対して公務災害等の認定請求がなされる場合も想定されます。このような場合には、基金支部において所属部局の長等に状況を確認するなどして、迅速かつ公正な事務処理に努めていただきますようお願いします。」
この事務連絡の徹底を図る趣旨で様式の改正を行ったという。さらに一昨年の事務連絡では、所属部局の長が証明できない場合の記入方法や添付する申立書の例なども示されている。いずれも基金の支部事務長あてのものだ。
相当改善できたということもできるだろう。ただしかし、これらの事務取扱についての連絡はあくまで基金支部あてのものとなっているわけで、肝心の被災労働者に届くものとまでなっていないというところが問題ではないだろうか。あくまで基金は請求手続きが任命権者を通じることを前提としていることに変わりはなく、被災者が直接請求できるとダイレクトに伝えることはしないのである。
地公災法の法律の趣旨自体の問題として、今後も改善を求めていく必要があるだろう。
『関西労災職業病』2019年3月(497号)