辺野古からの通信ー9 /宮崎史朗(全港湾建設支部)
全国的に熱中症警戒情報がでている中、沖縄は32.3度とやや「涼しい」くらいかとも思えますが、日差しは流石に亜熱帯でしてゲート前で一日行動するとへばってしまいます。
そんな中、旧聞ですが、参議院沖縄選挙区で高良さちかさんが自公候補に3万3千票を超える差をつけて初当選されました。現職だった高良鉄美さん(元琉大教授)が再挑戦を辞退され擁立がぎりぎりとなり、沖縄大学人文学部教授ではありますが政治家としての知名度もなく厳しい状況でしたが、デニー知事が選対本部長に就任、高良前議員も二人三脚で地域を行脚されるなど「オール沖縄」一丸となった結果でしょう。地元紙などは「基地問題、辺野古新基地反対」は争点にならないと選挙前半で書いていましたが、候補者自ら、基地被害を訴え、辺野古反対を明言し争点化されたことも大きいと思っています。

ただ、3年前より投票総数は7万3千票ほど増えたにも係らず得票は9千票減となり、参政党候補が12万票を超えたことは今後を注目しなければなりません。
今年は台風の発生が遅く、1号は6月なってからでした。大浦湾は100mの櫓を備えたSCP船が6隻並び他の運搬船や作業船もひしめいていましたが、台風の発生情報がはいると、6月10日頃からSCP船が消え、順次他の作業船も退避を始めました。既に2か月以上経った現在も、SCP船は戻っていません。沖縄本島直撃はないのですが、8月上旬の11号までつぎつぎと台風が発生し、中城湾2隻、奄美の大島海峡4隻退避している船は今も戻っていません。今後も異常気象が想定されますので不安定なSCP船は大浦湾に帰ってくるのはなかなか難しいでしょう。
防衛局は作業を中断するまでに2900本の砂杭を打設したと発表しました。琉球新報の計算によると杭打ちだけで8年以上かかるとのこと、「いつまで経っても完成しない違法工事を断念せよ!」と叫ぶゲート前座込み者の声は、あながち大げさではないと思います。
防衛局は基地建設をどんどん進め、引き返しが出来ないと沖縄県民に思い込ませるため、適切な工程を無視して出来るところから着手してきました。10年前から今に至る彼らの基本的姿勢です。そう思いながら現場を見ると第2ゲート(弾薬庫ゲート)付近の美謝川切替などが進んできたと思います。辺野古ダムからの新しい水路(暗渠)の掘削が進みました。国道329号線の地下を横断するトンネル工事も掘削が進んでいると思います。
また、廃止になった名護市辺野古浄水場が5月、米軍への新しい提供用地になりました。この解体工事(名護市発注)が7月中旬から本格的に始まりました。
海(安和、塩川港、宮城島)や工事用ゲートから辺野古側への埋立用土砂の搬入が続いていますが、現在大浦湾の埋立は始っていません。ただ、先月、一部中仕切り護岸で囲われた区域が出来ましたので8月中にも土砂投入を始めるかもしれません。


こうした中、防衛局は環境監視等委員会に日曜、祝日にも工事を行うと報告し了承を得たと発表しました(8月5日)。海上工事(砂杭、A護岸、敷き砂工事など)と埋立土砂の仮置きが主な工事だといわれています。作業員の働き方改革はどうなったのか、安全・健康管理上問題はないのかなど突っ込み所は満載だと思いますが、明らかに工程上の問題が生じているのです。
一方、市民運動への弾圧の動きが顕著になってきました。
昨年6月、安和桟橋でダンプに巻き込まれ瀕死の重傷を負い今もリハビリをつづける被害者Oさん(同事故でアルソック警備員1名が死亡)に対し、沖縄県警は「重過失致死罪の被疑者として調べる」として呼び出しました。辺野古弁護団は直ちに支援体制を組み、県警豊見城署に呼び出し中、署内で待機し適宜接見するなど支援しました。8月6日、8日両日の聴取に対して、Oさんは黙秘を貫きました。一年もかけ周到に準備をしてきたであろう県警・防衛局を甘く見ることは出来ませんが、ゲート前はOさんを真ん中に包み込んで守り抜く決意を固めています。被害者である市民を加害者にするなどというデタラメを絶対許しません。
さらに、8月7日、海上カヌー行動や陸上の監視活動を続ける目取真俊さん(芥川賞作家)宅に家宅捜索があり、スマホやパソコンが押収されました。容疑は、昨年10月から今年5月までの間に第2ゲート付近のフェンスを損壊させたというものです。防衛局の告発によるものです。スマホやパソコンという日常生活に欠かせない道具を、事件化すら難しいと思われる案件で押収するのはやり過ぎです。情報によれば、8月14日の事情聴取後と押収物件は返却されたとのことです。
宮古島に駐屯する自衛隊(陸自第15旅団)による市街地での訓練に関し、監視活動中の市民に自衛官が暴言を吐き恫喝的に詰め寄る不当な行為がありました。8月5日早朝、場所は「いらぶ大橋海の駅駐車場」です。「われわれは許可を取っている。やるんだったら許可をとってこい」などと命令口調で現場からの退去を求めたと報じられています。市民の通常の行動では許可を取る必要はなく、現に自衛隊側も駐車場を管理している宮古市に使用許可申請はしていなかったというのです。事実関係を確認もせず、監視行動の市民を恫喝するなどもってのほかです。先島をはじめ自衛隊の増強が急速に進む中、彼らの意識も旧日本軍化しているのではないでしょうか。
弾圧事件が続く中、那覇地裁で注目すべき訴訟指揮がありました。8月7日のことです。沖縄県の「(防衛局からの辺野古新基地)設計変更申請不承認処分」を国が取消した裁決の「取消」を求める住民訴訟が提起されていますが、第13回弁論で、裁判所は18人の住民に「利益が侵害されるものがいる」として原告適格を認め、訴えの審理に入る判断を示しました。地裁で原告適格が認められたのは初めてです。沖縄県による「承認撤回」を取消した国の裁決の「取消」住民訴訟では、高裁が4人の原告適格を認めました(24年5月)が、国が上告しており最高裁の判断待ちです。沖縄県の国相手の抗告訴訟では、軟弱地盤の問題を含む多くの問題について全く司法判断をしないまま、県には訴えの資格がないと門前払いを続けました。やっと実質審理の入り口が見えてきました。原告は勿論、弁護団も盛り上がっているとのことです。
沖縄県民にとって、またヤマトにいる私たちにとっても不当な新基地建設を、現場での闘いを含めたあらゆる手立てを活用し中断に追い込むことが肝要と思います。一緒に頑張りましょう。(8/17記)

みやざき・しろう:全港湾建設支部 辺野古基地反対闘争支援で沖縄滞在中
関西労災職業病2025年8月568号
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