建設アスベスト訴訟~東京、大阪2、3陣和解成立/東京・大阪

国とアスベスト建材メーカーを相手取って闘われてきている建設アスベスト訴訟。全国弁護団によれば現在、全国各地で訴訟31件、被災者総数1218名が係争中だ。
国については2021年5月17日最高裁判決が言い渡され損害賠償責任が確定し、その結果に基づく建設アスベスト給付金法が2021年6月9日成立、2022年1月19日から同法が施行された。
一方、建材メーカーは最高裁判決後も法廷での係争を続けてきたが、今回、はじめての大規模和解に至った。
8月7日、首都圏建設アスベスト訴訟東京1陣訴訟(2008年5月16日提訴、被災者数285名中253名)、同2陣訴訟(2014年5月15日提訴、被災者数112名中98名)につき東京高裁において、被告建材メーカー(1陣7社:ニチアス・A&AM・MMK・ノザワ・太平洋セメント・日東紡績・ナイガイ、2陣5社:ニチアス・A&AM・MMK・ノザワ・太平洋セメント)が謝罪し、和解金を支払う大規模和解が成立した。和解金総額は1陣約40億円、2陣約11億円。和解金が支払われたのは1陣234名、2陣82名であり、謝罪、和解対象はこの方々に限定される。
損害賠償責任が認められなかった建材メーカー(1陣5社:神島化学・日本インシュレーション・バルカー・大建工業・日鉄ケミカル&マテリアル、2陣12社:ナイガイ・日東紡績・神島化学・日本インシュレーション・バルカー・AGC・大建工業・日鉄ケミカル&マテリアル・ウベボード・クボタ・ケイミュー・ニチハ)は、被災者に「弔意とお見舞いを表明」した。2陣被告の積水化学工業は弔意とお見舞いの意思表明を拒否し判決を選択した。
和解対象とならなかった1陣改修解体作業の32名、2陣改修解体作業及び屋外作業の14名については、和解ではなく判決が言い渡されることになった。
8月8日、関西建設アスベスト大阪2陣・3陣訴訟(被災者数73名中67名)につき大阪高裁において、被告建材メーカー(12社:ノザワ・エーアンドエーマテリアル・MMK・ニチアス・太平洋セメント・日本インシュレーション・パナソニック・日東紡績・大建工業・神島化学工業・日鉄ケミカル&マテリアル・積水化学工業)が和解金支払い対象原告に「深くお詫びし」、和解金を支払う和解が成立した。和解金総額は約12億5千万円。大阪地裁判決で賠償が認められなかった被災者3名についてこれを認め、7名については建材メーカーの責任割合を引き上げるなど地裁判決を上回る内容の和解となった。
免責された9社を含む全ての被告建材メーカーが一審原告に対して「石綿関連疾患を原因とする死亡や甚大な身体的・精神的苦痛に対し、心より哀悼とお見舞いの意を表」した。
しかし、前日の東京高裁和解と同様に、外装材取扱い職種被災者や改修・解体作業関係被災者計6名について建材メーカーの責任が否定された。
屋外作業、改修・解体作業者の未救済、裁判を経ることない救済制度の実現という大きく困難な課題にむけて今後も建設アスベスト訴訟の闘いは続くとしても、2つの大規模和解が実現させた被災者数は全国関連訴訟のそれの3割強にのぼっており、今後の早期解決への大きな弾みになることは間違いない。

(参照)
●東京1陣訴訟、東京2陣訴訟、東京高裁で和解成立!-建設アスベスト訴訟全国弁護団HP(https://kenasu.jp/news/20250807-1808/
●メーカーが謝罪と解決金、関西建設アスベスト訴訟で大規模和解 – 大阪アスベスト弁護団HP(https://asbestos-osaka.jp/all/kensetsu/4758/

関西労災職業病2025年8月568号