建材メーカーを相手取り一斉提訴、全国10地裁2022年6月7日。建設アスベスト訴訟、新たな段階へ/建設アスベスト給付金認定件数800超 

大阪地方裁判所 2022年6月7日

建材メーカーだけを相手に一斉提訴

国と建材メーカーを被告とする建設アスベスト訴訟。

昨年5月の最高裁判決を契機として、(最高裁判決の範囲で)国は建設アスベスト被害の責任を一定認め、原告団・弁護団などと国との合意にもとづいて建設アスベスト給付金制度が創設され、今年1月より給付金申請受付が開始された。

申請事案の審査を行う「特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会」(以下、審査会)は1月から毎月1回開かれ、7月13日現在ですでに847件が認定されている。(審査会議事要旨より作成)

一方、最高裁判決において敗訴が確定した建材メーカーは、その後の法廷において、最高裁から地方裁判所のどの段階においても和解を拒否し、各原告の損害賠償請求について争い続けている。

そのため、そうした不当な建材メーカーの姿勢を転換させるべく、さらに、建材メーカーだけを相手とする訴訟を全国的に新たに起こすことを原告団・弁護団などが決め、その第1段の全国一斉提訴が6月7日に行われた。

当センターはこれまでアスベスト被害の法廷闘争にアスベスト訴訟弁護団、大阪アスベスト弁護団に協力しており、建設アスベスト被害、建材メーカーの責任追及に積極的に取り組むこととしている。

原告191人(対象被害者136人)提訴皮切りに

提訴にあたっての建設アスベスト訴訟全国連絡会声明を以下に引用する。

建材メーカー訴訟提訴に当たっての声明

建材メーカー訴訟提訴に当たっての声明

2022年6月7日、原告191人(被害者数136人)が、全国10地裁(札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、京都、大阪、岡山、高松、福岡)において、アスベスト建材製造メーカーに対して一斉提訴した。
しかし、建材メーカーらは、最高裁判決・決定によって責任が確定した11 社も含めてすべての建材メーカーが、被害者の早期救済に踏み出そうとしていないどころか、様々な口実で裁判の長期化を策し、被害者の多くが泣き寝入りすることを狙っているとしか言いようのない不当な対応を取り続けている。こうした建材メーカーの対応は、菅首相(当時)が最高裁判決の翌日に、原告団及び全国連絡会の代表に深々と謝罪した態度と比較してもその悪質さは明らかである。そうした対応は、各建材メーカーらのCSR(企業の社会的責任)を持ち出すまでもなく、人道上も決して許されない態度である。
最高裁判決で裁かれた建材メーカーらの責任は、遅くとも国と同じ時期にアスベストの危険性を認識しながらも、その危険性を現場の建設作業者に警告することが容易であったにもかかわらず、自らの利潤追求を最優先して警告表示を怠り、そのために、建設現場で多くのアスベスト被害を発生させたというものであり、その責任は国以上に重いと言わざるを得ない。建材メーカーらには、司法判断と自らの責任の重さを正面から受け止め、早期に深刻な建設アスベスト被害の救済に踏み出すことが求められている。
本日の全国一斉の建材メーカー訴訟は、建材メーカーらに対する原告被害者の強い怒りを示すものであり、建材メーカーらに、被害者への真摯な謝罪と訴訟の一日も早い解決、そしてすべての建設アスベスト被害者を全面的に救済する制度への参加を決断させ、建設アスベスト被害の全面救済を広く世論に訴える意義を有している。
本日の建材メーカー訴訟の提訴に当たり、原告被害者、弁護団、支援団体は、より一層の団結を固め、建設アスベスト被害の全面解決に向け奮闘する決意である。
以上

https://kenasu.jp/news/20220607-847/

大阪地裁提訴3弁護団共同記者会見

一斉提訴前、建設アスベスト訴訟を推進してきた全国建設アスベスト訴訟連絡会関係の原告は被害者数ベースで1200名弱、これに今回の191名が加わった。

大阪地裁では、この日関西で提訴した原告の代理人を務める大阪アスベスト弁護団(6/7提訴原告数27【被害者数15】)、京都アスベスト弁護団(12【9】)、アスベスト訴訟関西弁護団(7【2】)が提訴後、共同記者会見を行った。

弁護団は「国が最高裁判決を受けて速やかに救済制度創設に向けて動いたのに対し、建材メーカーは、最高裁判決を受けても真摯に反省せず、今なお争う姿勢を見せ、基金制度への参加はおろか、現在継続している裁判においても話し合いの席につくことさえ拒否し続けています。今後も、被害者が病身をおして引き続き裁判を続けなければならないという事態は極めて異常であり理不尽。今回の全国一斉提訴は、全国各地に全面救済を求める多くの被害者が存在していることを明らかにし、最高裁判決が出ても自らの責任を認めようとせず、なお争い続ける建材メーカーらの不当な姿勢を厳しく問うものです」とし、建材メーカーを解決のテーブルに引きずり出すまで徹底的に闘うと訴えた。

立ち上がる新たな原告団・弁護団

最高裁判決に前後して、新たに建設アスベスト訴訟に取り組む原告団・弁護団がでてきた。

東日本アスベスト被害救済弁護団(以下、東日本弁護団)もその一つだ。

東日本弁護団は先発訴訟に学び、昨年10月15日、横浜地裁に建設アスベスト訴訟を集団提訴した(原告17名(被害者15名)。アスベストユニオンや神奈川労災職業病センターなどの相談活動、患者支援活動にともなう建設被害者掘り起こしをベースにしているので原告居住地は北海道、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、静岡と多彩。支援する会も結成、6月7日一斉提訴には第3陣原告14名(被害者12名)が加わった。そのほかの地域でも同様の動きが伝えられている。

建設アスベスト訴訟は、明確に、建材メーカーを追い詰めることを目標とする新たな段階に入った。

関西労災職業病2022年7月534号