建設アスベスト給付金制度が開始!まずは労災支給決定等情報提供サービスの利用を
厚労省相談電話は「カケホ」でも有料
2022年1月19日、建設アスベスト給付金法が施行された。国からの給付金制度がはじまり、建設労働者として石綿健康被害に遭った方やそのご家族が給付金の請求ができるよう、請求書式も用意されている。問い合わせ先として厚生労働省が「労災保険相談ダイヤル」(0570-006031<注意>フリーダイヤルではなく、また、「カケホ」であっても電話料金がかかる)で質問を受け付けているが、もっとも多い相談は「私は給付金を受け取ることができるのか」ではないだろうか。
現在もセンターには「ここに電話したんだけどね、言っていることがよく分からないのよ」という相談が頻繁に寄せられる。厚生労働省も相談者一人一人の状況を把握しているわけではないので、まずは自分で給付金の受給できるかどうか確かめてみよう。
労災支給決定等情報提供サービス
建設アスベスト給付金制度への関心は、はたして自分が給付金の対象になるかどうか、ということである。最初から対象外であればあちらこちらに相談するのは時間の無駄だし、煩雑な手続きをしたにも関わらず徒労に終わることは避けたい。
そのため活用するべき公的支援が、「労災支給決定等情報提供サービス」である。これは給付金の請求手続きの利便性向上を図るため、間違いなく受給できる方にはその旨を伝える仕組みになっている。
パンフレットには、「石綿関連疾患に関する労災保険給付の支給決定」や、「石綿救済法の特別遺族給付金の支給決定」をすでに受けた方や、そのご遺族に対し、これらの支給決定上方について情報提供サービスを実施します」と書かれており、 「たしかに労災は認められているが、支給金まで受給できるのか」という疑問がある方は、まず確認のためにこのサービスを利用することを奨めたい。ただし、遺族の範囲は労災保険の遺族補償給付の受給権者の範囲と同じで、配偶者(内縁を含む)、子、父母、祖父母、孫、兄弟姉妹までである。義弟や甥、姪などは請求しても情報を受け取ることはできない。
情報提供サービスの案内は、石綿関連疾患に罹患した方やそのご家族に順次送られており、パフレットと請求書式で、あわせて10枚程度の封書が自宅に送られてきている。「なんだかたくさん書類が入っていて…」と敬遠される方もいるかもしれないが、請求書式に健康保険証や運転免許証のコピーと住民票を添えて送るだけである。気を付けなくてはならないのは、健康保険証のコピーを用いる場合、被保険者番号など黒塗りにして送らなければならないことだろうか。何人かの方にこの情報を伝え忘れて送付していただいたので、当局からどのような指示があるのか確認しておきたい。また、住民票についてもマイナンバーが記載されていないものか、間違って記載されているものを入手したときは同番号をマスキングして送ることが求められている。
社労士などの代理人に任せても良いというが、この手続きは上記のとおり難しいものではなく、ご自身で積極的に利用されたい。
給付金の請求
労災支給決定等情報提供サービスの申請には必ず通知書という形で回答が送られてくる。その中に、「就労歴及び石綿ばく露作業従事期間等に関する情報」という項目が設けられており、昭和47年10月1日~昭和50年9月30日の期間内に石綿の吹付作業を行っているか、また、昭和50年10月1日~平成16年9月30日の期間内に屋内作業に従事しているか、の判断が「該当」、「非該当」で示される。ここに「該当」の文字があれば支給金の受給対象と国も認めていることになるので、実際の受給手続きは簡便なものとなる。「該当」と書かれた通知書に請求書式を添えて提出するだけである。
ただし、遺族による請求については、死亡届の記載事項証明書という面倒な要件がある。死亡診断書、死体検案書に対する市町村長の証明書が必要となっているが、市町村に提出された死亡診断書はわずかの期間しか市町村に保管されることはなく、比較的早期に法務局へ移送される。石綿救済法上の特別遺族給付でも同様のものが求められるものの、監督署からの依頼書がないと証明は発行されないものであるから、おそらく請求後追加で提出する書類になるのだろう。
さて、労災支給決定等情報提供サービスを利用したものの、「非該当」と判断された場合はどうすればよいのか。
この判断は各労働基準監督署に残されている労災資料から厚生労働省が判断したものであり、監督署によって調査が厳密になされたものと、職業からばく露が推認されたものと被災者によって調査方法が異なるものもある。
監督署も迅速な決定を目指してばく露歴をすべて調べないかもしれない。特に中皮腫など、石綿に特異的な疾病であれば、1年のばく露期間に初回ばく露から10年経っていることが認定要件であることから、上記の期間外で1年のばく露が認めて調査を終了し、その余の調査を徹底していない可能性がある。また、逆にばく露の客観性を追求する調査が行われた場合、造設大工であると本人が言っているにもかかわらず、残されていた仕入伝票からはサイディングボードしか記載されていなかった、と屋外作業しか認めていないかもしれない。このような場合、改めて自らのばく露実態を詳しく説明しなくてはならず、支給金の受給権者であることを認めてもらうために多くの資料を用意する必要が出てくる。
認定審査会
ところで誰が支給金の支給を決定するのかというと、「特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会」という機関である。支給金の請求書を厚生労働省の労災管理課という部署に送ると、ここで要件に該当するかどうか調査・確認が行われる。その後この審査会に回されて、審査を受けるという順番になっている。
2022年1月31日に第1回審査会が開催(議事録はこちら)されているので、資料を閲覧してみよう。
資料によると、認定審査会の委員は7名、医師が4名、社労士、弁護士、法学部の大学教授がそれぞれ1名からなる。この7名だけが資料を読み込み支給の是非を審査するのではなく、審査会の前に臨時委員や専門委員からなる専門委員会が開催され、ここで個別の案件が議論される。労災支給決定資料からは明らかではなかったばく露についても、できるだけ柔軟に対応するという方針が打ち立てられ、審査方針案によると建設アスベスト訴訟の判決を踏まえ、「原則として収集した資料等に基づき個別に判断を行うが、一般的に屋内作業があるとされている下表の職種に就いては、屋内作業に従事していたと判断できるものとする」として、大工、左官、鉄骨工、溶接工、ブロック工、軽天工、タイル工、内装工、塗装工、吹付工、はつり、解体工、配管設備工、ダクト工、空調設備工、空調設備撤去工、電工・電気保安工、保温工、エレベータ設置工、自動ドア工、畳工、ガラス工、冊子工、建具工、清掃・ハウスクリーニング、現場監督、機械工、防災設備工、築炉工が例示されている。もっとも、もっぱら屋外でしか作業をしていないという資料がある場合はこの限りではない。
とはいえはつり工や大工であれば屋内作業も行うだろうと判断されうるのであるから、仮に情報提供サービスで「不該当」となっても改めて支給金の請求は行うべきだろう。
なお、2月25日の第2回認定審査会では、制度開始からの審査結果が議事要旨として提出された。
審査件数86件のうち、すべて認定相当とし、疾病別内訳は、中皮腫58件、肺がん19件、びまん性胸膜肥厚2件、石綿肺7件、良性石綿胸水0件であった。
関西労災職業病2022年2月529号
パンフレットや請求書式一式は、次から入手出来る
コメントを投稿するにはログインしてください。