建材メーカー12社に9億4千万円余の賠償命じる/建設アスベスト訴訟大阪2陣、3陣大阪地裁判決【2023/6/30】
被告・建材メーカーに賠償命じるも控訴、闘いは大阪高裁へ
関西訴訟大阪2陣と3陣において(被害者73名、原告129名)、6月30日、大阪地方裁判所第16民事部(石丸将利裁判長)は、被害者64・原告104名に対する建材メーカー12社(被告21社中)の損害賠償責任を認めて、総額9億4297万7827円の支払いを命じた。
本判決は、1)新たに2社の責任を認定し、2)死亡慰謝料額を最高レベルの2950万円とし、3)建材メーカーの注意義務始期を1971年4月1日(吹付作業従事者)、又は1974年1月1日(屋内作業者)として他判決より広げた、意義深いものとなった。
原告側は関西に拠点をもつ6社に対して判決後、社前行動を連日行ったが、被告各社は不誠実な対応に終始し、被告、原告双方が控訴期限の7月14日までに大阪高裁に控訴した。
ごく一部の限られた和解を除きメーカー各社は解決に応じる姿勢をみせていないため、全国的な闘いは今後も続くことになる。
2社に賠償責任初認定
12社はこれまで有責とされた建材メーカー10社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、ノザワ、エム・エム・ケイ、日鉄ケミカル&マテリアル、太平洋セメント、大建工業、日東紡績、神島化学、積水化学)に加えて、初めて、パナソニック(吸音天井板)、日本インシュレーション(保温材)の2社の賠償責任が認められた。原告がおこなった作業と石綿ばく露実態についての立証の積み上げを裁判所が評価したものと考えられる。
各原告の証言では作業実態とともに、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚といった石綿疾患の発症経緯、闘病、死亡、普通の生活が奪われた心情、家族の心痛と苦労が詳細に語られた。
そうしたことの結果として裁判所は、被害が予見できながら、利潤追求を最優先して製造、販売を多年にわたって継続した建材メーカーの責任が極めて重大と判断して他の判決に比べて高い慰謝料を認め、(弁護団によると)被告建材メーカーの寄与度割合も高く認定した。
判決法廷で石丸裁判長が時間をかけて、原告らの被害について具体的に説明したのは特に印象的だった。裁判所による「判決の要旨」には次のように記されていた。
「就労が困難又は不可能になり、職の全部又は一部を奪われ、これによる経済的な影響を無視することはできないことはもとより、経済的な不安や、発症するまでに培ってきた職業上の経験や知識を生かして、就労を通じての社会への貢献ができなくなることによる精神的な無念さも計り知れない。」
「とりわけ、手術を受けた被災者における術前の不安、手術及び手術後の身体的・精神的負担や、抗がん剤治療を受けた被災者における副作用に伴う身体的・精神的負担、咳や痰、激しい息切れ、呼吸困難から逃れられないことによる肉体的精神的な苦痛には大きいものがあり、もがき苦しむといってもよい状態の者さえあった。」
連日の社前行動
判決後、原告団・弁護団のよびかけで7月3日から6日、ニチアス、エーアンドエー、大建工業、日東紡績、太平洋セメント(以上、大阪市)、ノザワ(神戸市)の社前デモンストレーションが行われ、関西労働者安全センターからも参加した。法廷外での被告企業に対する明確な意思表示は長期戦においては意味を持つとみている。
関西では京都2陣控訴審、大阪2陣・3陣控訴審と4陣一審、関西1陣が大阪地裁と高裁で係争中であり、当センターは引き続き積極的に支援をおこなっていく所存である。
関西労災職業病2023年7月545号
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