名村造船所マンガン中毒労災認定闘いの記録ー参考資料(2)マンガン中毒関係法令ー年表・条文ー

マンガン中毒認定要件問題経過年表

◆1956(S・31)年5月

基発308号(特殊健康診断の指導)
健診項目
①振せん、小書症、突進症等
②握力、背筋力の障害

◆1963(S・38)年5月6日

基発522号(マンガン中毒の認定について)
〈後掲資料1〉

◆1971(S・46)年4月

特定化学物質(特化則)制定される

◆1976(S・51)年11月

京都労基局、元マンガン鉱山労働者163名の一斉検診実施

◆1977(S・52)年9月

京都労基局、上記調査の結果発表

◆1978(S・53)年4月1日

労働基準法施行規則(労基則)35条一部改正し施行。施行通達(基発186号)出される。
〈後掲資料2〉

同年6月1~3日

第51回産業衛生学会、クロムとマンガンの問題を中心にとりくむ。

同年9月7日

大阪労基局にあてて、関西研究者交流会意見書提出。
〈後掲資料3〉

◆1981(S・56)年8月

Y氏に対し、溶接関連作業者としてはじめて、マンガン中毒労災認定される。

マンガン中毒病認定基準(要件)関係資料

〈資料1〉労働基準法施行規則第35条第16号に掲げる「マンガン又はその化合物に因る中毒」の認定について

基発第522号 昭和38年5月6日

各都道府県労働基準局長 殿

労働省労働基準局長

労働基準法施行規則第35条第16号に掲げる「マンガン又はその化合物に因る中毒」の認定について

標記について、下記に該当する労働者については、労働基準法施行規則第35条第16号に該当するものとして取扱われたい。

なお個々の事案について本通ちょうの基準により難いかもしくは判断が著しく困難な場合には、具体的な資料を添えて本省へ稟伺されたい。

マンガン又はその化合物を取り扱い、あるいはそれらの蒸気もしくは粉じん等にさらされる業務に従事するか、または当該業務を離れて後おおむね3カ年未満の労働者がつぎの1または2のいずれかに該当する症状を呈し医学上療養が必要であると認められるものであること。

1. パーキンソン症候群が認められ、かつそれらがマンガン以外(脳血管障害、多発性硬化症、脳梅毒、ウィルソン症、脳炎後遺症、一酸化炭素中毒後遺症等)により発症したものでないと判断されるものであること。
2. 発汗異常、睡眠障害、記憶障害、性欲減退または性的不能等のマンガン中毒を疑わしめる症状が持続しているものであって、握力の減退、基礎代謝充進、書字拙劣、細字症等のいずれかが認められるものであること。

〈資料2〉労働基準法施行規則(労基則)35条一部改正。施行通達(基発186号)抄

労働省告示第36号(抜粋) 昭和53年3月30日
〈労基法施行規則別表第一の二第四号関係〉

化学物質とそれによる症状・障害

次表は労働省告示第36号で、労基則別表第一の二第四号の規定に基づき定められたもの(化学物質と症状又は、障害)。上欄「化学物質」は同号1の“労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む)”、下欄の「症状又は障害」は同号1の“労働大臣が定める疾病”で、化学物質に応じて主たる症状と障害が定められている。また、「過去発生の症状・障害」は基発186号(昭・53・3・30)通達の別添1で、上記告示に掲げた化学物質にさらされる業務に従事した労働者に発生したことのある症状または障害である。

基発第186号(抜粋)昭和53年3月30日

各都道府県労働基準局長殿

労働省労働基準局長

労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について

労働基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和53年労働省令第11号。以下「改正省令」という。)及び昭和53年労働省告示第36号(労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第1の2第4号の規定に基づき、労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む)並びに労働大臣が定ある疾病を定める告示。以下「告示」という。)が昭和53年3月30日に公布され、同年4月1日から施行されることとなったので、下記事項に留意のうえ、事務処理に遺憾なきを期されたい。

(4)「化学物質等による次に掲げる疾病」(第4号)

イ 「労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む)にさらされる業務による疾病であって、労働大臣が定あるもの」(第4号1)

〔解説〕

(イ)列挙疾病の選定・分類等について

告示に掲げられている化学物質による疾病(がんを除く。以下この(イ)の項において同じ)の選定、表記等に関する基方的な考え方は、以下に掲げるとおりである。

a 列挙疾病の選定

原則として、次の(a)及び(b)に該当する疾病のうち、通常労働の場において発生しうると医学経験則上評価できるものを列挙疾病として規定した。

したがって、症例の報告があるものでも、それが事故的な原因による疾病や総取扱量が極めて少ない化学物質による疾病のように、一般的には業務上疾病として発生することが極めて少ないものは除かれている。

(a) わが国において症例があったもの

(b) わが国において症例がなくとも、諸外国において症例が報告されているもの

(a)症状又は障害の例示

疾病の内容ないし病像にっいては、労働の場で起こった症例のうち、文献において共通的に現れた症状又は障害を「主たる症状又は障害」として掲げたものである。したがって、動物実験等により人体に対する有害作用が推測されるにとどまっているような症状・障害あるいは化学物質への高濃度ばく露を受けて急性中毒死した場合等の際にみられる一般的でない障害や二次的な障害が原則として記載されていないのは、前記第1の2(3)に述べたとおりである。

次に、告示の表中下欄に掲げられている症状又は障害が「主たる症状又は障害」である旨記載されているのは、これらの症状又は障害以外の症状又は障害の現れた疾病であっても業務との因果関係の認められるものについては本規定が適用される場合のある趣旨を明らかにしたものである。

なお、告示の表中上欄に掲げる化学物質にさらされる業務に従事した労働者に発生したことのある症状又は障害例を別添1に掲げる。これらの症状又は障害はいずれも症例報告の中にみられるものであるが、これらの中には特異的なばく露条件でのみしか起こりにくいと思われるもの、同時にばく露を受けた他の化学物質による影響が否定できないものなど医学的には必ずしも当該物質との関連性が明らかにされていないと考えられるものが含まれているので留意する必要がある(これらの認定については、第3の1参照)。

別添1に記載した症状又は障害の現れた疾病であって療養を要する疾病のうち同別添の表の上欄に掲げる化学物質に起因したと認められる疾病に対しては、原則として本規定が適用される。しかし、これらの疾病に続発して、ないしは後遺症として生じた疾病又は同表上欄に掲げる化学物質以外の化学物質によって発生したと認められる疾病については、第4号8の規定が適用される。

(b)症状又は障害の記載の順序

主として急性症状として疾病の初期に現れる自覚症状たる「中枢神経性急性刺激症状」を最初に掲げ、次いで、他覚所見について、原則としてそれぞれの因子に特徴的なものから順次掲げている。このうち、特に皮膚障害は、直接皮膚に受けたばく露の影響によるものが多いので他覚所見の中では第一番目に掲げられている。

(ロ)告示中の用語について

a 告示の本文中の用語について

(a)「言語障害、歩行障害、振せん等の中枢性神経症候群」とは、錐体外路症候を主徴とする運動減少筋硬直症候群の一種で、パーキンソン症候群又はパーキンソニスムスとも呼ばれる。マンガン及びその化合物による中枢性神経症候群は慢性障害の一つであって、言語障害、歩行障害及び振せんのほかに仮面状顔貌、小字障害、突進症状(前方、側方又は後方)等がみられる。