建設アスベスト訴訟新たな提起 アスベスト訴訟関西弁護団

昨年12月から、建設アスベスト訴訟に関する最高裁判所の判断が示されており、いよいよ国と建材メーカーの責任が認められることが明らかになってきた。

建設アスベスト訴訟とは、わが国ではアスベストが建設資材に使用されてきたことを鑑み、それらアスベストが含有された建設資材を吹き付け、加工し、破砕してきた建設作業員が作業中に発生した粉じんにばく露したことで石綿関連疾患に罹患したことについて、国とアスベスト含有建材を販売してきた建材メーカーの責任を問う訴訟である。

全国で900名以上の被災者がかかわる訴訟となり、当センターで労災請求支援を行った方に4名についてもご本人やご家族が参加している。肺がんに罹患したある被災者は、平成27年9月に発症してすでに5年半が経つが、これまで転移が何度も認められ、そのたびに手術を行いながらも積極的に訴訟に参加し、本人尋問にも堂々と応じてきた。近いうちに何度目かの手術を控えているが、必ず判決の日を迎えようと気合も十分であり体力づくりにも余念がない。

アスベスト訴訟関西弁護団は、3人の被災者について昨年12月21日に大阪地方裁判所に提訴した。3名は、元は左官工、内装工、大工であり、それぞれ、昭和35年頃から平成20年頃までの約48年間、昭和44年頃から平成5年頃までの約25年間、昭和29年から平成9年までのうちの約43年間と、いずれも長期間石綿粉じんにばく露する作業に従事してきたことで石綿による健康被害を被った被災者である。いずれも病身を押しての訴訟である。

各原告は職人としての職歴が明確で、就労期間中は常に被用者としての立場であるため事業者としてのばく露期間はない。しかし、元左官工については最後に勤めていた事業所において労働者災害補償保険に特別加入をさせられていたことがあった。訴訟に特に影響はないが、元左官工については休業補償給付については給付基礎日額については特別加入の際に選択されていた金額になっているという問題もあり、その事案について現在は労働保険審査会において再審査請求中である。また、それぞれ石綿粉じんにばく露する作業内容、当時用いられていた建材の種類などからばく露実態を明らかにしている。

一方、被告は国のほか、ニチアス株式会社をはじめとする日本有数の石綿含有建材製造企業11社である。去る1月28日には、ニチアス株式会社ら8社の責任が最高裁判所において認められており、これからの訴訟の後押しとなると考えられる。

第1回期日は2月10日で、この日は原告弁護団から9名、被告も国から数名の担当者のほか、ニチアス株式会社他の被告企業からも代理人も出廷していた。傍聴席は、コロナウィルス感染症対策によって座ることができる座席数が限られているが、すべて埋まっている。ただ、原告は遠隔地に在住していることもあり、重篤な肺疾患を抱える身である3名とも欠席するのもやむを得なかった。

当センターからの呼びかけと、昨年来の報道も相まって、ようやく他の石綿関連疾患被災者の関心も集まりつつある。感染症予防のために法廷で弁論をする機会が限定されてしまうが、追加提訴をすることで再びみんなで傍聴ができるようになるだろう。これからも元建設作業員の被災者に声をかけ続けていきたい

関西労災職業病2021年2月518号