近鉄高架下商店街のうどん店元店主(女性)が中皮腫死亡、3人目。建物吹付けアスベストで:近鉄に賠償請求。
近鉄高架下の同一商店街、建物吹付けアスベストで3人目の中皮腫死亡
近畿日本鉄道株式会社(近鉄)所有のA駅高架下商店街 において、1970(昭和45)年から2015(平成27年 9月)までうどん店を経営していた女性が、建物の内壁に施工されていた吹付けアスベストから飛散したアスベスト粉じん(主成分:青石綿=クロシドライト)に曝露し、胸膜中皮腫に罹患し、死亡した。
同じA駅高架下商店街では、 これまでに2名が悪性胸膜中皮腫に罹患し死亡しており、この方で3人目となる。
このような事例は公表されている情報では例がない。この商店街では、過去、多数の方が事業を経営し、労働者として働いており、所有者の近鉄は、過去の関係者への周知と検診を広く呼び掛ける責任が最低限のものとしてあるが、いまだに行われていない。
2020年10月16日に本件について、アスベスト訴訟弁護団の記者会見が関西労働者安全センターにおいて行われた。
1例目発症は2002年の文具店店主、2例目は2014年の喫茶店従業員
最初の被害者男性は2002(平成14)年に発病。この男性は長年、同商店街で文具店を経営し、2階の倉庫の壁面に吹き付けられていたアスベストが露出していたために、飛散したアスベストを吸い込んだ。
近鉄に対して損害賠償を求めたが、近鉄の不誠実な対応を認めず損害賠償裁判を大阪地裁に提訴、最終的に、大阪高等裁判所は2014(平成26)年2月27日 、 高架下建物の所有者兼占有者である旧近鉄不動産株式会社の管理に問題があったことを認め 、同社の責任を承継した近鉄に対し、損害賠償を命じる判決を下した (確定 )。
2件目 は、喫茶店の従業員(店長)として雇用されていた男性が2014(平成26)年に発症し、翌年労災認定を受け、死後、遺族は上記文具店裁判の判例を根拠に近鉄に損害賠償を求めて、和解金を近鉄が支払うことで和解が成立している。
今回は2019(令和元)年12月に胸膜中皮腫と診断された後、2020(令和2)年6月に死亡されたため、遺族が前2例の代理人を務めたアスベスト訴訟弁護団(関西)に相談し、今回、近鉄に損害賠償を求めることとし、2020年10月15日に関西労働者安全センター事務所において記者会見が行われた。
1つの商店街で 、 3名もの建物の吹付けアスベストによる被害者(中皮腫)が出るなどということは聞いたことがなく、きわめて深刻な事態である。
さらに被害の拡大が強く懸念されており、近鉄は、早急に真剣に対策、対応を決め、公表するべきである。
(詳しくは下記、参考資料)
被害者女性のご長男のコメント
私は、悪性胸膜中皮腫にかかり、亡くなった母の長男です。
母は、商店街ができてからうどん屋を営み、多くの時間をそこで過ごしてきました。
アスベストの問題がはじめて発生したあとも、自分の店の封じ込め工事をしたあとも、2015年の閉店まで何の問題もなく元気に働いていました。
しかし、アスベストとは関係なく店を閉め、穏やかな老後を過ごしていたのにもかかわらず、突然、中皮腫にかかってしまいました。病気のことを聞いたときは、まさか、という気持ちでした。中皮腫の疑い、という最初の診断を受けても、まだ「そうであってほしくない」という気持ちが強かったのです。たしかに、他の店舗で中皮腫になった方がいることは知っていますが、それからこんなに時間がたっていて、今さら家族の身に影響を及ぼすなどと考えたこともなかったからです。
文具店で発生したときから、すでに15年以上たっていて、また80歳を過ぎているにもかかわらず、このような病気で苦しまなくてはならないというのは、あまりに理不尽だと感じています。
また、忘れたころに病気を引き起こすアスベストにも恐怖を感じます。私も、おなじうどん店で働いていた時期があり、同じようにリスクを抱えているのです。そして、同時期に商店街で働いていた方々も、同じ環境で働いていたのですから、彼らのことも心配です。
近鉄には、責任を取っていただくことはもちろんですが、当時商店街で働いていた人たちに積極的に働きかけ、アスベストに関連する病気の目を少しでも早く取り除けるような環境を整えてほしいと思います。
建物吹付けアスベストが原因とみられる被害者はじめアスベストによる相談先
アスベスト訴訟弁護団(関西):06-6363-1053
関西労働者安全センター(当センター):06-6476-8220
参考資料
1 近畿日本鉄道駅高架下建物吹付けアスベスト事件(これまで3例)の概要
(1)文具店の店長:Aさん
1970年~2002年
:近畿日本鉄道駅高架下の商店街で文具店を営んでいたAさんが建物内の吹付けアスベストから発生・飛散するアスベスト粉じんに曝露
2002年7月:胸膜中皮腫の確定診断
2004年7月:Aさん死亡
2005年8月:近畿日本鉄道(株)に謝罪と賠償を求めるものの、同社は拒否
2006年6月:Aさんご遺族、近畿日本鉄道(株)らを大阪地裁に提訴
2009年8月:一審大阪地裁で勝訴(双方控訴)
2010年3月:控訴審大阪高裁で勝訴(近鉄ら上告)
2013年7月:最高裁で破棄差し戻し判決
2014年2月:大阪高裁で勝訴(判決確定)
(2)喫茶店の店長:Bさん
1977年7月~2000年3月
:近畿日本鉄道駅高架下商店街の喫茶店で店長として就労し、吹付けアスベストから発生・飛散するアスベスト粉じんに曝露
2014年5月:胸膜中皮腫の確定診断
2014年11月:Bさん労災請求
2015年1月:Bさん死亡
2015年5月:Bさん労災認定
2016年4月:近鉄へ損害賠償の申し入れ
(3)うどん店の店長:Cさん
1970年7月~2015年9月
:近畿日本鉄道駅高架下商店街のうどん店経営者として営業し、吹付けアスベストから発生・飛散するアスベスト粉じんに曝露
2005年ころ:石綿除去・封じ込め工事
2015年9月:駅高架下商店街から退去
2019年12月:胸膜中皮腫の確定診断
2020年6月:Cさん死亡
2020年10月:近鉄へ損害賠償の申し入れ
2 建物占有者(建物を管理・支配すべき地位にある者)としての近鉄の責任
(1)Aさん損害賠償裁判最高裁差戻し後の大阪高裁判決の判断
ア 吹付けアスベストが施工された建築物がが通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時期
1988(昭和63)年2月、環境庁・厚生省が都道府県に対し、吹付けアスベストの危険性を公式に認め、建築物に吹き付けられたアスベスト繊維が飛散する状態にある場合には、適切な処置をする必要があること等を建物所有者に指導するよう求める通知を発したことからすれば、遅くとも同時期頃には、建築物の吹付けアスベストの曝露による健康被害の危険性及びアスベスト除去等の対策の必要性が広く世間一般に認識されるようになり、同時点で、本件建物は通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになったと認めるのが相当である。
イ 駅高架下建物について責任を負うべき責任主体
民法717条1項によれば、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときに、被害者に対して第一次的に責任を負担するのは「占有者」とされているが、同項は、危険な工作物を管理支配する者が当該危険が具体化したことによる責任を負うべきであるという危険責任の考え方に基づくものであると解され、そのことからすれば、同項にいう工作物の占有者とは、被害者に対する関係で同工作物を管理支配すべき地位にある者をいうと解するのが相当である。
したがって、認定事実によれば、旧近鉄不動産(株)が、被害者に対する関係で近畿日本鉄道高架下建物を管理支配すべき地位にある者として、民法717条1項にいう占有者に当たる。
3 本件における請求額本件における請求額
慰謝料・逸失利益等約3600万円
本件関連報道
近鉄高架下の83歳店主が中皮腫で死亡 04、15年に続き石綿被害3人目(毎日新聞)
近鉄高架下の83歳店主が中皮腫で死亡 04、15年に続き石綿被害3人目 大阪
毎日新聞2020年10月15日 19時29分(最終更新 10月15日 20時37分)
大阪府内の近畿日本鉄道(大阪市)の高架下貸店舗でうどん店を経営していた女性(当時83歳)が、2020年6月にがんの一種「中皮腫」で死亡していたことが分かった。女性の長男(62)が15日、大阪市内で記者会見した。同じ高架下で中皮腫にかかり死亡したのは、女性で3人目。長男は近鉄などに対し、慰謝料など約3600万円の賠償を求めている。
長男によると、女性は1970~15年に高架下の貸店舗でうどん店を経営していた。2階建ての1階を店舗、2階を倉庫や休憩所として使っていたが、2階の壁には有害性が強い「青石綿」が吹き付けられ、むき出しだったという。女性は19年12月に胸膜中皮腫と診断され、20年6月に死亡した。
長男は「忘れた頃に病気を引き起こすアスベストに恐怖を感じる。同時期に高架下で働いていた方々も同じ環境だった」とし、近鉄側に注意喚起するよう訴えた。
記者会見で、中皮腫で亡くなったうどん店店主の女性について説明し、防止策の必要性を訴える長男(左手前)ら=大阪市中央区内本町1の関西労働者安全センターで2020年10月15日午後2時51分、近藤諭撮影
この高架下では、文具店長の男性(当時70歳)が胸膜中皮腫にかかり、04年に死亡。大阪高裁は近鉄の責任を認め、約6000万円の賠償を命じた。15年には喫茶店長だった男性(同66歳)が胸膜中皮腫で亡くなった。遺族は近鉄に損害賠償を申し入れ、金銭的な解決に至っている。
中皮腫・じん肺・アスベストセンターの名取雄司所長は「同じ建物で被害が続くことは世界的にも異例。近鉄は貸店舗に関与した人たち全員の健康診断を、すぐに実施すべきだ」と話している。
近鉄は「心から哀悼の意を表します。ご遺族からの申し出については、今後誠意を持って話し合いたい」とコメントした。【近藤諭】
使用中の建物に法規制なし
鉄道高架下に耐火のため吹き付けられたアスベスト(石綿)は、その飛散により、多くの中皮腫被害を引き起こしてきた。しかし、今回亡くなった女性店主が使用していた店舗2階のように、使用中の建築物の石綿には法による規制がなく、対策を求める声が強まっている。
建物などの改修・解体時には、労働安全衛生法の関連法規などで石綿を調査する義務が規定されている。建築物石綿含有建材調査者協会(東京)の外山尚紀副代表理事は「使用中の建物などには石綿含有調査や対策を義務付けた法律はなく、今回の近鉄高架下店舗のような建物の利用者を守る方策が十分ではない」と指摘する。
法規制の有無には、飛散の危険度の違いが反映されている。しかし実際は、鉄道高架下のように振動が多い状況や、壁面処理の劣化などにより、改修・解体時でなくても飛散の可能性はある。
英国では「アスベスト管理規則」を定め、人が出入りする建物の所有者や管理者に、石綿存否の調査と適正な管理を義務付け、罰則規定もある。外山副代表理事は「発がん物質の石綿を含む建材の把握が困難だからこそ、英国並みの厳しい法律を早急に設けるべきだ」と訴えている。【大島秀利】
病床で語った無念「今にして『爆発的』に危険と気付いた」
大阪府内某所にある近鉄高架下には、約200メートルの間に約40店舗が並んでいた。アスベスト(石綿)が使われていたこの一角から、2020年6月、店舗経営者としては文具店、喫茶店に続き3人目となる中皮腫の犠牲者が出た。うどん店主の女性(当時83歳)は生前、病床で毎日新聞の取材に「石綿はあったけど、うちは関係ないと思っていた。今にして『爆発的』に危険なものと気付いた」と語り、その約4カ月後、無念の思いを抱えたまま、この世を去った。毎日新聞 2020年10月15日
大阪府内の近鉄高架下の文具店2階の壁に吹き付けられていた石綿。同じ高架下でうどん店を経営していた女性も中皮腫にかかり、2020年6月に亡くなった=2005年11月24日、三村政司撮影
女性は1970年、この高架下でうどん店を開き、やがて脱サラした夫も加わった。安くておいしいと評判で、常連客から「ママ」「おばちゃん」と親しみを込めて呼ばれていた。
05年ごろ、同じ高架下にあった文具店長の男性が、中皮腫にかかり死亡したことを知った。その頃、各店舗2階に吹き付けられていた石綿の除去など対策が取られ、「心配な人は検査を」と呼び掛けられた。うどん店の2階は米や調味料の保管のほか、女性が仮眠や着替えに使うなど頻繁に出入りしていたが「大変なことと思わず、検査は受けなかった」。15年、工事に伴う一斉退去で、45年間愛着のある店を閉めた。
19年5月、肺に水がたまり、やがて呼吸も異常に。その年の暮れ、中皮腫と診断された。「それまで石綿のことは何も分からなかった。(2人目となる)喫茶店長が中皮腫で亡くなったのを知ったのも、発病後でした」。うどん店主としての「誇り」を失いたくなかったのか、闘病中は「味が分からなくなるので」と抗がん剤の投与を避けていたという。
建物の改修・解体時には、石綿の調査などが法的に義務付けられているが、使用中の建物には法の規定がない。10年以上、店を手伝った長男(62)は「生活を支えた店が原因でがんになるなんて、複雑な気持ちで言葉が出なかった。新型コロナウイルス対策で病院での面会が満足にできず、つらかった」。女性の夫は05年に肺炎で亡くなった。長男の脳裏には「もしかして父も……」との疑念が消えない。「まだ多くの石綿が残っていると思う。みんな身近な建物に気を付けてほしい」と切実に訴えた。【大島秀利】
高架下の石綿 近鉄に賠償求める(NHKニュース)
鉄道の高架下の飲食店で働いていた女性が中皮腫で死亡し、遺族は、アスベストが原因だとして、建物を管理していた鉄道会社などに3600万円余りの賠償を求める申し入れを行いました。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20201016/2000036168.html
アスベストによる健康被害を受けた人を支援する「関西労働者安全センター」によりますと、大阪府内の近鉄の高架下にあった商店街で、45年にわたってうどん店を経営していた83歳の女性が、ことし6月、中皮腫で死亡しました。
女性が休憩室として使っていた店の2階の壁には、より発がん性の高い青石綿と呼ばれるアスベストが吹きつけられたということで、遺族は、建物を管理していた近鉄などに対して「管理責任を怠った」などとして、慰謝料など3600万円余りの賠償を求め申し入れを行いました。
同じ高架下では、これまで、2つの店舗でそれぞれ男性1人が中皮腫で死亡していて、このうち1人については6年前、大阪高等裁判所が近鉄の責任を認めおよそ6000万円の賠償を命じたほか、もう1人についても近鉄側と金銭面で一定の解決に至ったということです。
女性の長男は、「ほかの店で中皮腫になった人がいると知っていましたが、家族に影響が出ると思ってもいませんでした。穏やかな老後を過ごしていたにもかかわらず、理不尽さを感じています」とコメントしています。
【近鉄“誠意もって話す”】。
女性の遺族が賠償を求めていることに対し、近鉄・近畿日本鉄道は、「亡くなられた方とご遺族には心から哀悼の意を表します。ご遺族様からのお申し出については、今後、誠意をもってお話をしてまいります」とコメントしています。
2020年10月16日 18:09 NHK関西News Web
高架下で45年うどん店経営の女性「アスベストで死亡」 遺族が近鉄相手に損害賠償求める(ABCニュース)
高架下でうどん店を経営していた女性が死亡したのは、アスベストが原因だとして、遺族が近畿日本鉄道に損害賠償を求めています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9e2d1e83ce84df849728e200f55d06c60700e719
遺族によりますと、大阪府内の近鉄の高架下で1970年から45年にわたり、うどん店を営んでいた女性(当時83)は、店をたたんだ後、悪性胸膜中皮腫を発症し、今年6月に死亡しました。うどん店の壁にはアスベストがむき出しになっていて、同じ高架下の別の店でも、店長が中皮腫で死亡していることから、遺族は女性が中皮腫を患ったのはアスベストが原因だとして、12日付けで、近鉄に3600万円あまりの損害賠償を求める書面を送りました。
近鉄は「ご遺族には心から哀悼の意を表します。お申し出については今後、誠意をもってお話をして参ります」とコメントしています。
2020年10月16日(金) 19:09 ABCニュース
コメントを投稿するにはログインしてください。