瀬戸大橋橋梁補修工事で労災隠し 外国人技能実習生 /岡山・瀬戸

瀬戸大橋の補修工事に従事していた外国人技能実習生が業務上の事故に被災した。 トラックに積まれていた足場材をクレーンで反転させる際に、 クレーンの操縦を誤ったのか、まだ荷台にいた被災者らをめがけて勢いよく回転させてしまったのである。 被災者らは荷台から飛び降りようとしたものの、 トラックの側アオリと機材の間に右足を挟まれてしまい、12針縫うとともに靱帯を損傷した。
骨折にはいたらなかったものの重傷である。問題は事業所の対応で、まずは本人を連れて自宅に帰り、 私服に着替えさせた上で近所のクリニックに向かった。近所のクリニックでは対応できないということで、 そのまま岡山労災病院に受診したが、本人には一切話をさせずに主治医に対して「冷蔵庫に挟まれた」 などと説明をし、健康保険で受診させたのである。
また、 2ヶ月の療養と休業ののち、療養を中止させて職場復帰させているが、足元が覚束ない状態で足場工と して作業させることは非常に危険である。
法違反についてはもとより、 身の危険も感じた被災者は然るべき機関に相談をして労災隠しが明るみに出たのである。
この事業所のホームページには、「私たちは、お客様の立場になって考えることで、ニーズの先読みタイミングを常に想像し、 実行していくことで、お客様に『感動』していただける仕事を心がけています」 と記載されている。 確かに、元請の立場になって考えると、労災事故が発生したことは望ましいことではないし、元請から何か言われる前に先読みして事故を隠し、間髪入れずに現場から被災者を搬送したことは社是に叶っている。 しかしその結果、 感動してもらえたのだろうか。
本件では、岡山労災病院で休業補償給付請求書の医療担当者証明を得た後に、所轄の技能実習機構と労働基準監督署に通報し、 さらにこの現場の元請本社に連絡してみた。東京にある元請本社に調査を求めたところ、翌日には来阪し、被災者の所属事業所代表者と一時下請の代表者を同席させて業務上の事故発生を確認するにいたった。 労災請求および企業補償についても「できるかぎりのことはさせていただく」 と回答し、ここまではスムーズに処理が進んだと言えるだろう。
もっとも、 今後は逆恨みをした被災者の所属事業所から意趣返しがあるかもしれないし、 監理団体によってこちらの知らないうちに帰国させられることも想定しておかなくてはならない。 いつまで日本に滞在できるのかという、 在留期限についても確認しておく必要があり、 労災隠しを暴いただけでは済まないのが技能実習生問題の難しいところである。 監理団体に対しては、技能実習機構から「こんな会社に技能実習生を置いておいたらいけんのぉ」と下知がくだっているらしく、他の企業への移転を目指して動き出したらしいが、新たな事業所を見つけることができなくてやむなく帰国、 ということも考えられる。継続してフォローが必要である。
(2019/07_501)