ブラジル人損賠裁判で証人尋問 大阪

(2003年10月機関誌より)

10月23日大阪地裁において、労働災害で右腕を失ったブラジル人労働者Yさんの損害賠償裁判で証人尋問が行なわれた。原告側証人は原告のYさん、被告側は株式会社永井半の社長、ブラジル人担当者、当時同じ機械を担当していた同僚の3人だった。
大きな争点は、原告本人の過失問題で、原告がなぜカッターの刃の回転を止めずに、機械に近づいたのか、という点であった。Yさんは大事故のショックで事故と事故から3日間の記憶が欠落しており、どのように事故が起こったのかは、普段の作業方法や習慣から推測することしかできない。

Yさんの話では、永井半ではいつも作業能率が重視され、社長自身が工場内に頻繁に出入りし、たまったおがくずを掃除しても加工作業に戻るように注意され、ちょっと機械を止めてもその分「金を失っている」と口やかましく言われるという状況があった。そのために、どうもYさんは危険を承知しながらも、木材を送るテーブルの動きだけを停止させて、カッターは回転させたまま機械に近づいたと考えられる。その際に転倒するか何らかの原因で、右腕がカッターに触れることになったのであろう。以前に永井半に労災の損害賠償を請求したCさんも同様に社長が作業の中断についてうるさく言っていたことなど証言していた。証言台に立った社長は、すぐに興奮する性格を押さえきれず、裁判官にもうすうすYさんの主張が本当であることが推測されたと思われる。しかし、被告側は事故はYさんの自殺行為でその原因は夫婦げんかにあるという根拠のない主張を重ねた。

一方、カッターの刃のカバーが外れていた点について、被告側はYさんから取り付けてほしいという要請がなかったとか、カバーは基本的に安全のためではなく木くずの飛散を防ぐためのものと主張し、責任を否定している。
裁判を提訴してからすでに2年が経過しており、一刻も早い解決が望まれる。しかしながら、被告が許容できると考えている補償額と実際の判決とは大きな開きがでることが予想され、Cさんの裁判同様、被告が控訴する可能性も考えられ、証人尋問は終わっても決着の見通しが立たない状況である。