時効寸前の労災遺族補償請求、中皮腫死亡の電気工/●大阪

本年3月下旬、事務局の片岡から電話が掛かってきた。4月5日に石綿被害の相談者が安全センター事務所に来られるので、一緒に相談内容を伺って、対応策を検討したいという電話であった。片岡はすでにその段階で相談に乗っていたもの。
4月5日当日、事務所に被災者の奥さんと長女さんが来られた。

相談を伺うと、平成30年9月にご主人は中皮腫でお亡くなっており、当時は救済法の申請・支給はされたものの、労災保険は全く手続きしていなかった。相談に来られた時点で休業補償の時効が成立しており、本年9月には遺族補償年金が時効を迎えようとしていた。

まずは労災保険が適用できるか職歴を伺うと、A商会に2年、B電栄に4年、T電設株式会社に42年(社名変更しN電設株式会社)以降は独立して自営で電気工事全般を行っていたとのことであった。奥さんは自営業での経理を行っており、労災保険の特別加入制度には加入していないとのことだった。労災保険の対象の会社はN電設株式会社と特定、業務内容を伺ったが、亡くなったご主人は仕事の内容等はあまり話さなかったようで、内容は不明とのこと。会社の社長も若いので現場には出ていなかったようで、業務内容が全くわからず、同僚もいないとのことであった。一般的な電気工の業務内容を調べることと、今後の予定について検討を行った。①遺族補償請求書(様式12号)への事業主証明の依頼、②戸籍謄本、住民票、死亡診断書、厚生年金の職歴表の入手、③CT及びレントゲンフィルムの入手、④石綿救済法認定通知等の資料等の準備することとした。

後日、N電設株式会社に電話を入れ、用件を説明した上で、4月14日午前11時に社長とお会いすることになり、長女さんと会社前で待ち合わせ社長と面会した。

やはり予想どおり、社長はあまり現場に出ていないとの事で、詳しい業務内容について全く知らず、私が作成した資料を参考の上、一般的な電気工の業務内容をまとめて資料を社長に手渡し、理解を求める一方、事業所証明の記載・押印をいただいた。

監督署へ提出する全ての書類の点検を行い、4月20日大阪南労働基準監督署へ遺族補償年金の申請を行い、同時に経緯の説明を行った。本年10月には結果が出されるであろう。その結果をもとに、建設アスベスト給付金の手続きを行う予定である。

以下は、N電設株式会社に提出した資料である。

一般的な電気工の業務内容

  1. 電気工が行う天井内の配管、配線作業においては、鉄骨造り及び鉄筋コンクリート造りのいずれかの場合であっても石綿吹付材や吹付石綿建材が使用されており、電気工は、これらの吹付作業後、吹付材が乾燥するのを待ってから、石綿含有吹付材がむき出しの状態のまま、天井内の配線、配管作業を行う。
  2. 配管作業においては、吹付材に覆われたデッキプレートに取り付けられたインサートを露出させたり、アンカーボルトを取り付けるために、手やドライバーで吹付材をこそげ落とす必要があり、また、H鋼の梁にパイラックを取り付ける際には該当部分の吹付材を取り除く作業が必要となった。電気工が乾燥した吹付材を手やドライバーでこそげ落としたり取り除いたりする際には、吹付材が粉じんや小さな塊となって顔 や身体の上に降りかかってくるため、否応なしに、石綿粉じんを大量に浴びることを余儀なくされていた。
  3. 配線作業においては、吹付材が吹き付けられたH鋼の梁にセンターを固定するため、 必要な部分の吹付材をはがす作業を行うが、その際にも大量の石綿粉じんに曝された。
  4. 電気工は、上下階段又は梁や壁を貫通させた電気ケーブルを通すためにスリーブ入れを行うが、当該貫通部分には、石綿が含有された耐火仕切版や充填材を用いた耐火被覆作業を行う必要があった。そのため、電気工は、耐火仕切版の切断時や充填材を詰める際に大量に発生する粉じんに曝されながら作業していた。
  5. 照明器具を取り付ける際には、埋込型の照明器具の場合、本天井のボードに穴を開ける必要があった。そのため、電気工は開口作業の際、ボードを切断することによって発生する粉じんに曝されていた。
  6. 電気工は建造物の内装工事等では、内装工・左官・大工・鉄筋工などと共同する作業のなかで、機密性の高い室内でテーリング(100%石綿含有)や内装材の切断等で石綿粉じんに曝されていた。

(事務局 林繁行)

関西労災職業病2023年7月545号