関西糖尿者安全センターだより vol.6 栄養指導② 事務局/種盛真也

皆さん、初夏の風は感じていますか。この文章を書いているのが2025年4月1日なのですが、私が糖尿病で入院したのが2024年4月27日だったので、なんと1年弱の時間が経ってしまいました。汗をかきながら病院に向かったことを思い出して、今年の夏も暑くなるのかと嫌な気分になりますが、入院当時から8kg近く痩せているので、ちょっとましかもしれないとわくわくする気持ちもあります。
前回は、入院時にされた2回の栄養指導の内、1回目の内容を紹介しました。
今回は、2回目の本格的な栄養指導と、それがちゃんとできているかチェックの話です。
1.実は量自体は結構食べてもいい
指導2回目は、栄養士さんの部屋に呼ばれて、30分ほどみっちり受けました。内容は主に退院後の食事内容の指導でした。写真1は、その際に参考として配られた、何をどれだけ食べればよいか示した表です。この表では、食物はその主な栄養素で7種類に分けられて、それぞれ量が決められていますが、その中で特に守ってほしいものは炭水化物と脂質とのことでした。

炭水化物は、消化されるとブドウ糖になり、細胞の運動や成長のもとになるものです。その際、血中に放出され、血糖値を直接上げるので、糖尿病の人は1番気を付けないといけない栄養素です。
私の場合は、1食で、炊いた米なら200g(およそ0.6合)、うどんならゆで麵300g(1.5玉程度)と言われています。糖尿病なのに結構食べてもいいのだなと思いましたが、理由を聞けば当然で、細胞が必要な糖の量は、別に糖尿病かそうでないかで変わらないからです。つまり、この食事量は、健常なアラフォーのおっさんが食べるべき量と同じなので、病人食という考えでいると、多く感じるということです。
では糖尿病患者は何に気を付けないといけないかというと、その量を「きっちり」食べるということです。糖尿病患者は、体内の反応だけでブドウ糖を十分に分解できないので、その分を外部からのインシュリンや薬で補っています。なので、食べる量が多いと薬が足らなくて高血糖に、少ないと薬が効きすぎて低血糖になります。従って、薬の量が決まったら、それに伴って決められた量をきっちり食べないといけないというわけです。
脂質は、脂肪のもとになる栄養素です。これ自体は分解されても糖にはならないのですが、皮下脂肪が過剰についていると、インシュリンが効きにくくなり、血糖値を上げる原因になるそうです。糖尿病と肥満が度々結びつけられるのは、単純に糖類の食べすぎということもありますが、こういう理由もあったわけです。私は牛乳が大好きで、夏場なんかは1食で1ℓぐらい飲んだりしていたのですが、牛乳は乳脂肪が豊富なので、1日コップ一杯200mℓにせよと言われてしまいました。
逆に多く摂ってもよいものですが、野菜と海藻とキノコは無限に食べてよいと言われました。なので、Vol.3で書いた通り、おやつはキャベツやエリンギ、最近はもやしや海苔も食べています。
また、「甘いおかしは基本的にダメだが、どうしても甘いものを我慢できなくなったら、人工甘味料を使った、低糖質のものを探して食べなさい」と言われました。具体的に先生から、グリコのSUNAOというアイスや、ゼロカロリーコーラなどを挙げられました。4年前に糖尿で別の病院に入院した時は、甘いおかしやジュースは二度と摂るなと言われたので、今回こういうことを言われて驚きました。我慢が出来なさそうだと思われたのでしょうか。人を見る目がある。
間食に関してそういった指導をされつつ、しかし、最後に、「食べ足りないのを食べて解決するのは本当はよくない。食べれば、余計に食べたくなるだけ」と言われました。そして続けて、「空腹感への対策は、空腹を忘れるぐらい何かに夢中になるのが一番いい」と教わりました。僧の悟りのような言葉から、子供への言い聞かせみたいな精神論的な対策につながる教えですが、少し盲点の発想でした。確かに、必要な量の食事はしているのだから、空腹感さえごまかせればいい。ごまかしているうちに、体も慣れて、欲もなくなっていくのでしょう。こうやって健康に気を付けながら、ついでに高僧への道を歩ませてもらっています。
2.指導の効果のチェック方法
さて、何か指導があれば、その効果を確かめるテストが必要です。栄養指導に対するテストは、血糖値測定になるでしょう。
4年前は、食事直前と、食事の1時間後に、指に針を打って血を出して、それを測定器に当てて測定していました。これが、針と測定器を変な時間に都度準備しないといけなかったり、使った針やセンサーは医療ゴミなので適当に捨てられなかったりとなかなか面倒で、最終的には測定をサボるようになってしまいました。しかし、時代は進むもので、今回は、片腕に針のついた血糖値センサーを付けっぱなし(写真2)にして、それが1分ごとに勝手に血糖値を測定し、そこから測定値をスマホに飛ばし、24時間記録し続ける(写真3)という方法で行っています(入院時も退院後も)。ちなみに、その記録された情報は、スマホから病院に送られます。この方法には色々利点があり、①食後血糖値が本当に一番高い瞬間の値がわかる、②いちいち測定器を準備しなくてよい、③いちいち針を刺さなくてよい(2週間に1回センサー交換はする)、④スマホから病院に情報が行くので、心情的に暴飲暴食しにくいなどです。


ちなみに、私の付けているセンサーは、リブレという商品名のもので、2017年に開発され、2020年に24時間ずっと測定する機能が追加、2022年に保険適用の範囲が拡大され、重篤な糖尿病患者向けだけだったのが、インシュリン治療をしているすべての患者に適用されるようになったとのことです。つまり、かなり最近開発、認可されたものだということです。糖尿病ははるか昔からあるのに、停滞せず、治療方法や制度も日進月歩です。糖尿病以外の病気もそうなのでしょう。医療関係者には頭が上がりません。
今回の話は以上です。次回は、と言いたいところですが、このコラムは実はこれで最終回です。
私のしている食事制限は、上でも書いた通り、普通の人が食べるべき量を食べるだけなので、たいしたことのないものです。しかし、今まで量も種類も好き放題食べていたので、こんな程度の食事制限も割としんどく思ってます。みなさんも、このような高僧になるための修行を強制されたくなければ、面倒くさがらず、普段から定期的に健康診断を受けて、その結果を真摯に受け止め、その都度対策するようにしましょう。(おわり)
関西労災職業病2025年4月564号
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