労災保険制度の見直しなるか~労災保険制度の在り方に関する研究会開催中

2024年12月24日から厚生労働省の労災保険制度の在り方に関する研究会が開かれている。
(厚生労働省HPのURL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46695.html
開催の趣旨・目的には「労災保険制度は、業務上の災害発生に際し、事業主の補償負担の緩和を図り、労働者に対する迅速かつ公正な保護を確保するために昭和22年に制定され、近年は、二次健康診断等給付の創設(平成12年改正)、複数就業者の増加等を踏まえた通勤災害保護制度の拡充(平成17年改正)、船員保険の被保険者を適用対象とする改正(平成19年改正)、複数業務要因災害に関する保険給付の創設(令和2年改正)等、それぞれの時期における社会的ニーズに対応した改正を重ねてきた。一方、女性の労働参加の進展や更なる就労形態の多様化等、労災保険制度を取り巻く環境は常に変化を続けている。このような状況を踏まえ、労災保険制度の現代的課題を包括的に検討することを目的に、『労災保険制度の在り方に関する研究会』を設置する。」とある。
社会の変化に合わせて、労災保険制度を見直すのが目的である。

第1回に「議論の視点」として示されたのは、
○社会・経済の動きに適合しなくなりつつあるものはないか。(例;制度創設時の前提に変化が生じている 等)
○社会・経済の動きに応じ、新たに講ずべきものはないか。
○制度の趣旨を踏まえて改めて効果を検証等、改善を検討すべきものはないか。
の3点である。

現在まで第2回が2025年2月4日、第3回2月21日、第4回3月12日、第5回4月4日とおよそ月1回のペースで開催された。
論点については、初日にフリーディスカッションとして、構成員から意見を出してもらい、その時に出た論点を事務局が整理して、順次議論を行っている。
これまでに議論された主な論点は、遺族年金については男女格差、生計維持関係、消滅時効、給付基礎日額、特別支給一時金などの社会復帰事業、フリーランスなどの特別加入制度、メリット制の見直しについてなど。
現在、ホームページでは、第4回までの議事録が公開されている。
研究会の構成員は、

  • 小畑史子 京都大学大学院人間・環境学研究科教授
  • 笠木映里 東京大学大学院法学政治学研究科教授
  • 小西康之 明治大学法学部教授
  • 坂井岳夫 同志社大学法学部教授
  • 酒井正 法政大学経済学部教授
  • 地神亮佑 大阪大学大学院高等司法研究科准教授
  • 中野妙子 名古屋大学大学院法学研究科教授
  • 中益陽子 亜細亜大学法学部教授
  • 水島郁子 大阪大学理事・副学長

となっている。

全国労働安全衛生センター連絡会議としては、日ごろの活動から認識している制度の問題点について、3月5日付で申入書を作成し研究会へ提出した。

申立書は残念ながら研究会のホームページには公開されなかったが、構成する委員たちには配布された模様である。

申し入れ項目は、傷病補償年金を本人請求制度にすること、消滅時効期間を5年とすること、遺族補償の男女格差是正、メリット制の廃止、休業補償100%へ引き上げ、平均賃金の算定方法改定、休業補償の最低限度額引き上げ、そのほか労災認定基準の見直しや労働時間の事実認定などの運用方法まで多岐に渡った。
また中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会からも3月27日付で要望書が提出された。
遅発性疾病では休業補償が時効で消滅する事例が多いこと、労災補償されない期間についての傷病手当金返還問題、給付基礎日額の算定問題などを要望した。
我々が日々、被災者の救済に取り組む中、現行の労災保険制度にともなって生じている問題は多く、今回の制度の見直しは、それらを改善する機会であり、今後も働きかけていく。

関西労災職業病2025年4月564号