関西糖尿者安全センターだより vol.3 危険性② 事務局/種盛真也
みなさん、おやつは食べていますか。私は栄養士の先生から、食べ足りなかったら、キノコと海藻と野菜は無限に食べていいと言われているので、家でのおやつは基本的にエリンギとキャベツです。
前回は、糖尿病が簡単に言えば高血糖になる病気だということと、高血糖の短期的な危険性について説明しました。今回は続きで、高血糖の長期的な危険性と、さらにもう一つの危険性についてです。
2.糖尿病の危険性
(2) 高血糖の短期的な危険性
高血糖が長期間続くと、主に、血管と神経に異常が現れます。すると必然的に、細い血管や神経が集まっている器官に影響がでて、糖尿病の3大合併症と呼ばれるものが発生します。以下で簡単に説明します。
- 網膜症:目のスクリーンに当たる網膜の異常。視野が狭くなったり、視力が落ちる、暗く見える、重くなると失明に至る。
- 神経症:様々な神経に異常が出る。主には、細い神経の集まる手や足の感覚がなくなったり動かなくなったりということが起こるが、自律神経が壊れて心停止に至ることもある。また、手足の毛細血管の詰まりと重なると、手足の先が壊死して、切断しないといけなくなることもある。
- 腎症:腎臓の異常。血液中の老廃物(尿毒素)をろ過する能力が下がり、強烈な食事制限や、最悪、人工透析することになる。
これらの症状で怖いのは、上で説明した症状の重さ自体に加えて、一度悪くなったらよくならないという点と、重症化するまでは自覚症状がないという点です。なので、健康診断等で、医師は血糖値のことをうるさく言ってくれるのですが、本人は、「このまま唾液も甘くなったりすると幸せだな」などと思って特に気にせず、気が付いたら悪化しているわけです(私の実体験)。気を付けましょう。
(3) 低血糖の危険性
糖尿病で瞬間的に危険なのは、高血糖ではなく低血糖です。糖尿病患者は、自分で下げられない血糖値を、薬やインシュリン注射で下げています。しかし、薬等の量が多かったり、食前にインシュリンを打ったのに満足に食事をしなかったりすると、血糖値が下がりすぎることがあります。
血糖は、細胞を動かすエネルギーの元になりますので、血糖値が下がってくると、まず、体がしびれてきます。そして、脳も血糖不足で働かなくなり、意識を失い、最悪そのまま死にます。最初に体がしびれてくるのがミソで、やばいと思った時には体が動かなくて、自分では何もできないということになりかねません。
ここからは糖尿病患者が周りにいる人にも読んでおいてほしいのですが、低血糖は瞬間的に悪化するので、治すのも瞬間的な対応が重要です。もし、糖尿病患者が倒れたら、本人が喋れるなら何を持ってきたらいいか聞いて、喋れなさそうなら自販機やコンビニに突撃して、できるだけ砂糖が入ってそうな飲み物(ダイエットでないコーラ、カルピス、ファンタ、飲むヨーグルトなど)を買い、飲ませてあげてください。もし200mlでも飲めたら、それで数十分ぐらいで治ります。
摂取させる物ですが、糖分は水に溶けている状態が一番吸収されやすく、また、体がしびれた状態でも取りやすいので、上記のような飲み物がベストです。次点で粒ラムネやブドウ糖の粉末(医者が薬と一緒にくれたりする)ですが、これは比較的吸収がよく、携帯に便利だからです。なので、本人が準備しておくならこれでもいいのですが、もし周りの人が応急処置をするなら、甘い飲み物を買いましょう。
前回と今回で、糖尿病の危険性について説明しました。危ないことはケガのうちと言いますが、生活に気を付けようというモチベーションになったなら幸いです。次回は、私の入院生活と、その時の教育の成果、最近の治療で驚いたことなどを紹介する予定です。
(つづく)
関西労災職業病2024年11・12月560号
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