車いすの持ち上げ時の負担での急性腰痛 再審査で公務上裁決/ 地公災基金大阪府支部審査会

胸椎圧迫骨折・腰痛

中学校教諭(定年後の再任 用、女性)のNさんは、始業時間前に廊下を歩いていたと ころ、車いすの生徒の階段持ち上げ移動の場面に遭遇し た。人手が足りなかったので、Nさんは手伝うことにし、左 前部の持ち上げを担当したところ、瞬間的に腰部に痛みを感じうずくまってしまった。結局医師に受診したところ第 9 胸椎圧迫骨折との診断を受けたので、公務災害の認定請求を行った。2012年11月のことである。

60kg 割る 4 だから たった 15kg の負担?

しかし、認定請求を受けた地方公務員災害補償基金大阪府支部は公務外との処分を行うことになる。
理由は、要するに車いすの重さは 60kg 程度でそれを 4 人で持ったのだから重量物にはあたらず、本人も災害的な出来事はなかったというのだからということだった。

当然公務災害だと思っていたNさんは、安全セ ンターに相談、翌年 10 月に 審査請求を行った。基金大阪府支部審査会では、60kgを4人で均等に持ち上げることなど至難の業で、しかも車いすの重心の位置は高く、少し 傾いただけで一人の負担が瞬間的に大きくなるのであり、本件発症の経過からみて公務起因性は明らかと再現写真も添付して主張。審査会では、参与委員も車いす持ち上げ作業負担について、自らの経験も踏まえた見解を発言するなど、取り消し裁決の流れで審 査が行われたが結局は棄却裁決。

再審査は取消公務上裁決

さらに 2014 年 4 月に再審査請求を行ったところ同年11月末になって基金審査会が取り消し公務上の裁決を行った。理由としては、X線
写真によれば年齢以上に骨粗鬆症がひどいというわけでなく、被災部位以外に変化はないなどの理由も加え、本件災害が原因とみるのが妥当というものだった。
実に単純な取り消し裁決であったといえる。生徒の乗った車いすという不安定な重量物を4人で持ち上げるとき、不均等に負担がかかり腰痛症を発症したというのは、きわめて普通の災害性疾病といえるのに、ここまで長い審査を経なければならなかった公務災害認定プロセスの問題が目立った一件であった。

関西労災職業病2015年2月452号