ウーバーイーツユニオンが厚労省に要望書提出~配達員事故調査から提言

ウーバーイーツユニオン(以下、「UEユニオン」)のホームページトップには、「ウーバーイーツをはじめ、全てのプラットフォームで働く人が安心して働ける社会を目指して!」と書かれている。2020年2月号でもUEユニオンの活動について紹介したが、その後、UEユニオンは配達員の事故調査について報告書を出し、政府に要請行動を行った。

ウーバーイーツ事業はアメリカ合衆国で設立されたウーバーテクノロジーズ株式会社のフードデリバリー事業で、日本では2016年9月に東京都で開始されたという。その後、事業は全国10都市以上に拡大しており、現在ネットによる宣伝広告もよく目につくし、実際町中でウーバーイーツのロゴを見かけることも増えた。また、新型コロナウィルスの感染拡大による外出制限なども影響し、運送業者は業務に忙殺される状態であり、ウーバーイーツの配送も注文が増加しているのは当然だろう。

昨年度からフリーランスや請負、個人事業主にあたる人々が声を上げ、労災保険の特別加入の対象にすることなどを厚生労働省に求める動きがある。厚労省も新型コロナ感染拡大以降中断している「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(2018年10月~2020年2月)で個人事業主、フリーランスの保護や安全衛生について議論し、また首相主催の全世代型社会保障検討会議(2019年9月~)でもフリーランスの保護についてガイドラインの作成を検討している。

UEユニオンは、ネットで仕事を受注し配達を行うプラットフォームワーカーであるウーバーイーツの配達員が配達中に交通事故にあっても、労災保険による補償が適用されず、働き方の保護について何の整備もされていないことを懸念し、まず、実態を把握することにした。2020年1月~3月にかけてウーバーイーツ配達員に関する「事故調査プロジェクト」を実施し、インターネット上のアンケートとその後の聞き取りなどで、31件28人の事故のデータを得た。その調査結果をまとめ、報告書を7月に公表した。
アンケートで「事故による治療のために仕事を休んだ期間」について、最も多かったのは1~2週間で回答の40%ほどだったが、1か月以上との回答も約20%あった。治療費などについては、相手方や自分の車両保険、本人の健康保険などで対応していた。

報告書では調査で明らかになった様々な問題点をまとめている。配達員のマニュアルでは、事故やトラブルがあればサポートセンターに連絡することになっているが、電話しても応答がなかったり、事故のやりとりは配達員任せで、サポートの役割を果たしていないことも見受けられる。

2019年10月以降、ウーバーイーツは見舞金制度を設けているが、その制度についても、保険対象の内容が非常に限定されている。例えば、注文品を受け取って届けるまでの「配達中」の事故に限っており、注文品を受け取りに行くまでや届けた後の帰路などの事故は対象外、治療についても入院を要する負傷に限られ、しかも上限25万円だという。また事故の報告後、「アカウントの停止」という実質解雇の扱いを受けたり、「停止の警告」を受けることがある。アカウントを停止されると、配達の注文を受けることができず、働くことはできなくなる。

報告書の最後には、日本政府とウーバーイーツに対して、それぞれ提言・要請が示されている。

UEユニオンは、8月13日、「労災保険制度の見直しに関する要望書~プラットフォームワーカーのためのセーフティネットの保障を求めます」(次ページ)を厚生労働省に提出した。

rousai_yobo20200813

また、ウーバーイーツに対しての要請は以下の通り。

  • 傷害見舞金制度の対象範囲について、「配達中」(on-trip)に限定せず、アプリをオンラインにしている状態(off-trip)も(いつでも配達依頼を受けることができる)業務中の状態であるので、off-trip の際の事故も対象とすること。
  • 医療見舞金や入院見舞金の拡充(金額や期間の改善)を行うこと。
  • 対象となる「傷病」について、「業務に起因するあらゆる傷病」に拡大すること。
  • 事故の報告後になされることがあるアカウント停止について、停止になる根拠・条件・期間などを明示すること。
  • 配達員に事故対応を丸投げする現在の対応を改め、配達員との事故に遭った一般の方からの問い合わせに対応する窓口を設置すること。
  • 対人・対物賠償保険について、示談交渉特約を追加すること。

複雑に多様化する働き方に応じて、労働者の安全を保障するのは益々難しくる中、プラットフォームワーカーという新しい働き方を、受け入れる受け入れないはともかくとして、現実に働く人たち自ら、ユニオンを結成し、問題に取り組み、このような調査を実施していることは、厳しい現実の中でも希望である。今後もUEユニオンの活動に期待し、応援したい。

関西労災職業病2020年9月514号