労基署訪問し熱中症問題で意見交換~全港湾大阪支部安全衛生委員会/大阪
2025年9月29、30日、全港湾大阪支部安全衛生委員会は分会事業所を管轄する大阪府下の労働基準監督署を訪問し、全港湾として取り組む熱中症問題をはじめとする労働安全衛生上の問題について意見交換を行った。
前年同時期での死傷災害発生状況を比較すると、建設業や貨物取扱業で目立って減少が見られる。その理由や背景を分析していくことで今後の労働安全衛生対策につなげていくことが肝要で、引き続き情報提供を求めていくことになった。
熱中症に関しては、昨年(2024年)大阪府下では、95名の休業4日以上の死傷者数を出し、9名もの死亡者が確認された。全国の死亡者数が31名の中で、約三割にあたる9名は突出している。

本年は、いずれの訪問先監督署でも、本紙565号(2025年5月号)で紹介した労働安全衛生規則の改正と、従前から取り組んでいる「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を積極的に周知していることがわかった。熱中症死亡災害の主たる原因である「初期症状の放置・対応の遅れ」を防ごうと、パンフレット送付にとどまらず、ハローワークにおける事業場向け説明会などの機会を利用して広報に努めている。事業主にとっても熱中症は重大関心事であるため、行政から指導や助言を受ける前から対策をとっている事業所も多い。しかし、このような官民の取り組みがあっても、今年も大阪府下で1名の熱中症死亡事件が確認されていることから、今後も続く夏の酷暑対策として更なる工夫が必要である。
全港湾大阪支部でも、夏期の炎天下で作業を行っているため、熱中症対策は喫緊の課題である。特に船内作業は危険なうえ暑さから逃れようもなく、コンテナ等に引っかかってしまう危険性から、空調服も適切な服装とは言えない現場もある。船倉内壁に大型扇風機を設置するという方法で通風を改善することもできるが、それが可能な事業場は常に同じ船舶で作業を行うという前提であるため、導入できる事業所は限られている。基本的には、どの事業所でもこまめな休憩や補給物資(飲料水、スポーツドリンク、塩飴等)などでカバーしている。デバニング作業を行う事業所では、コンテナ内外にスポットクーラーや大型扇風機を設置して熱中症予防に努めているが、これも快適な作業環境を形成するに不十分である。
港湾だけではなく、運輸事業場も熱中症のリスクは高く、車両で荷主先の入場待ちの際にアイドリングストップを求められた場合、休憩場所や待機場所を車外で確保できるかどうか問題となる。エンジンを切ったあとでも使える冷房機器を車内に導入している事業所はまだ少ない。
調査と労基署訪問を通じて資料を収集したが、実際には共通の決定的な熱中症対策があるわけではなく、職場ごと、作業ごと、作業者それぞれに適した対策があるというのが現実ではないだろうか。また、「熱中症のおそれ」が確認された時点、つまり同僚によってふらつき、生あくび、大量の発汗などが確認された時点で、その作業者を作業から離脱させて身体の冷却を図るという最初の一歩が職場の常識として定着していくことを今後も進めていかなくてはならない。
関西労災職業病2025年10月570号


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