熱中症対策の強化で省令改正~3年連続30人超死亡、懸念される気候変動影響
仕事中の熱中症による死亡者数は、ここ数十年の毎年10~20人台で推移してきたが、2022年、23年と30人が続き、昨年も30人を超えたという。
死亡者の7割は屋外作業であり、気候変動の影響で更なる増加も懸念されている。死亡に至った直接の原因について厚生労働省の分析によると、初期症状の放置・対応の遅れがほとんどだったという。重篤化してからの発見や、異常時に医療機関に搬送することをためらい手遅れになったなどという具合だ。

熱中症を予防するためには、客観的な指標である暑さ指数(WBGT)にもとづき、作業の可否を判断するなど対策は必須だ。しかし実際に症状が現れた労働者に適切に対応することは、命を守るためには更に大切なことだ。
必須となる手遅れ防止の瀬戸際対策
これまで屋外作業の熱中症対策について、法令上の明確な規定はなかったが、労働安全衛生規則に新たな条文が追加され、事業者に具体的な措置が義務付けられる。この新たな省令の施行日は6月1日とされている。したがって同日以降、次のような措置を講じることは事業者の義務となる。
労働安全衛生規則新設条文
(6月1日施行)
第612条の2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。
2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。
労働安全衛生法
第22条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
二 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
まず対象となる作業は、暑さ指数(WBGT)28度又は気温31度以上の環境下で、連続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれる作業となる。そうした作業において、①熱中症の自覚症状がある作業者、②熱中症のおそれがある作業者を見つけた者が、その旨を報告するための体制を定め、関係作業者に周知することが事業者の義務となる。
そして熱中症を生ずるおそれのある作業を行う際には、あらかじめ作業ごとに、作業から離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察等を受けさせるなど、症状の悪化を防止するために必要な措置内容や実施手順を定め周知することも義務となる。
これらは労働安全衛生規則の第612条の2(熱中症を生ずるおそれのある作業)として追加された。根拠となる労働安全衛生法第22条第2号では、高温による健康霜害を防止するため必要な措置を講じることを義務付けているが、違反した者に対する罰則は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(第119条)となっている。
決して死亡に至らせない、瀬戸際の熱中症対策はしっかり取り組まねばならない。
関西労災職業病2025年5月565号
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