「MOCAを原因とする膀胱がん」が、健康管理手帳の交付対象に/膀胱がんの労災も新たに6人認定

「職業病リスト」「健康管理手帳交付対象」に追加

厚生労働省は、2023年1月18日、「職業病リスト」を改正し、「MOCAにさらされる業務による尿路系腫瘍など」を新たに加えた

職業病リストとは、労働基準法施行規則35条が定めた業務上疾病のリスト、別表第1の2のことである。別表第1の2の第7号、「がん原性物質若しくはがん原性因子又は原性工程における業務による次に掲げる疾病」の「11 三,三’-ジクロロ-四,四’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)にさらされる業務による尿路系腫瘍」が追加された。

それにともないMOCAの製造・取扱業務は健康管理手帳の交付対象となった。

交付条件は、MOCAを製造し、または取り扱う業務に2年以上従事した経験を有する労働者である。

対象となる労働者は、離職の際や離職後に、労働局に交付申請手続きを行えば、手帳交付後、無償で健康診断を受けることができる。MOCAによる膀胱がんは遅発性の疾病であり、離職から何年も経って発症するので、離職時に速やかに健康管理手帳を取得していれば、将来、がんを発症した場合も、業務と関連付けるのが容易であるし、疾病の早期発見にもつながる。

東京1人、静岡5人労災認定

静岡県のイハラケミカル(現在のクミアイ化学工業)でMOCAを取り扱った労働者に膀胱がんが多発していたことが発覚してから、全国労働安全衛生センター連絡会議では、労働者への周知や健康管理手帳の対象とすることなどを要請するなど、厚生労働省と交渉を続けてきた(本誌2021年1月号、2021年6月号参照)。

2021年4月の時点で、MOCAによる膀胱がんの労災認定は合計4件、埼玉県でMOCAを含有する原材料から製品を製造する作業に従事した男性2人と静岡県でMOCAの製造作業に従事した男性2人だった。

その後、2022年7月までに6件が労災認定されていたことが分かった。

MOCA認定件数202207

東京でMOCAを含有する原材料から製品を製造する作業に従事した男性1人、残り5人は全員静岡県でMOCAの製造作業に従事した男性となっている。

厚生労働省は2018年10月の時点で、全国の7事業所で17人のMOCAによる膀胱がん患者を把握し、2019年1月までに7人が労災請求したということだった。17人のうち少なくとも9人はイハラケミカルの労働者と考えられた。

2021年6月に静岡労働局と話した内容から、それまでに静岡県で労災請求したのは2021年1月に労災認定された2件を含めて4件、多くて5件と推測された。労災審査中は2~3件ということになる。

2022年7月までに認定された6件のうち静岡県でMOCAの製造作業に従事した5人については、イハラケミカルの労働者と考えてほぼ間違いないだろう。2021年6月以降にさらに2件ないし3件の請求があったことになる。

残念ながら、以前に厚労省が調査で把握していたうちの半分くらい、その後に発症した人もいるかもしれないので、さらに少ない割合の人数しか労災請求していないと思われる。

厚労省は、健康管理手帳の交付手続きを含め、MOCAによる膀胱がんが労災補償の対象になることをしっかりと周知してほしい。

関西労災職業病2023年4月542号