大阪府立金岡高校またアスベスト汚染 アスベスト浮遊確認40箇所以上~除去工事が原因か
あれから4年
4年前、2012年12月。
堺市の大阪府立金岡高校で、毒性の強い青石綿=クロシドライトによるアスベスト汚染がみつかり大きな問題になった。
その結果、専門家を入れた協議会が設置され、「アスベスト飛散の原因となった工事・作業の内容、アスベストの飛散状況及び健康への影響並びに大阪府教育委員会の今後の対応及び再発防止策等について協議」してきた。
ところが、昨年12月になってまたしても校内のアスベスト汚染が発覚、吹き付けアスベストとみられる小片がみつかった。23,25日には、校内100箇所以上で空気中の石綿濃度を測定することに発展し40箇所以上でアスベスト検出し(府教委発表)、改めて2012年以来の取り組みが「いったい何であったのか?」との疑問を抱かざるを得ない事態になっている。
関西労働者安全センターは「金岡高校で問題がおこっている」という情報が寄せられたため、12月21日午後、急きょ大阪府教育委員会を訪問し事情をきいた。
音楽室などで青石綿
12月21日、関西労働者安全センター事務局(片岡、酒井)が大阪府教委担当者(宮崎、井谷、黒田)から聞いた内容は次のとおり。
安全センター「金岡高校においてアスベストに関連した不適切とみられる事態が起こっているということを聞いたが、事実関係があれば説明を聞きたい」
<宮崎氏の説明(途中から井谷氏、終わり頃黒田氏が同席)>
12月6日に実施した空気中石綿測定(年1回定期)において、特別教室棟(北棟)4階西側の音楽室で「0.11本/リットル」(青石綿=クロシドライト)、視聴覚室と廊下では0.056本/リットル(検出限界)未満だったが観察した数百視野の中に青石綿を確認した、との報告が、測定業者からあった。
その報告は測定業者から速報としてファックスで金岡高校に12月6日夜にあったようで、12月7日に金岡高校から府教委に連絡があった。
12月8日朝、府教委など数名でぬれタオル、モップによって、音楽室、廊下を清掃した。音楽室は使用停止にした。
12月10日測定業者による再測定を行った。その際、測定業者が校内を見て回ったところ、東側廊下の渡り廊下(2,3F)の水飲み場周辺にアスベストのカケラがみつかった。また、水飲み場のところにあるパイプスペース内にも同様のものが見られ、北棟東側2Fの進路指導室前廊下のサッシの溝にも同様のものが見られた。以上の状況は、学校職員(担当事務職員:椎葉(女性、主査)、ほかに教員)、府教委職員(宮崎ほか1名)も現認し、一部を写真撮影している。府教委職員が学校に行ったとき、2,3F渡り廊下のパイプスペース前で空気中測定を行っていた。
同様の年1回の定期測定は、今回と同じ測定業者が、平成26年度、平成27年度にも行っているが、石綿は検出されていない。 金岡高校では、平成27年度夏休み期間中に、北棟の1~3階、4階の音楽室と視聴覚室を除く部分について、石綿除去工事を実施している。 本年平成28年度夏休み期間中に、南棟(普通教室棟)の1~4階、渡り廊下(1~3階)について石綿除去工事を実施している。
12月11日に、一斉清掃を実施した。清掃にあたったのは、平成28年度の工事業者である「株式会社ケイテック」、平成27年度の工事業者である「株式会社鴻友建設」、府教委などの職員、総勢約40名程度である。2社は真空掃除機を持ち込んでいた。一斉作業前、後の現場写真は撮影していない。(なお、工事業者2社については、府HPにおける入札結果で確認できる。)
12月23、25日に、校内の一斉石綿測定を実施することにしている。
現在までに、生徒、保護者への説明は行っていない。
概略、以上のようなことであった。
安全センターから府教委担当者に対して、「生徒、保護者への説明をするべきである。前回の事件(平成24年~)を踏まえれば、一段落してから報告するのではなく、プロセスをすべてオープンにすることが大切である」と進言して辞去した。
「音楽室空気に青石綿」の報道(毎日新聞)
毎日新聞大阪本社が2016年12月23日付朝刊で今回の事態を報道した。
音楽室空気に青石綿
金岡高 定期測定で検出2012年秋の校舎改修工事の際にアスベスト(石綿)が飛散した府立金岡高校(堺市北区)で、6日に音楽室の空気などから毒性の高い青石綿が検出されていたことが分かった。学校側は22日、生徒や保護者に概要を伝えた。【大島秀利】
府教委によると、測定業者が6日、年1回の定期測定をした。通常、青石綿は検出されないが、特別教室棟の音楽室から空気1リットル当たり0.11本の青石綿の繊維が見つかった。また、渡り廊下の水飲み場付近など6カ所から最大直径2センチの石綿らしいかけらが見つかり、うちーつは青石綿と既に確認した。
府教委などは音楽室の水ぶきなど校内を清掃した。
金岡高では保護者らからの要望を受け昨年と今年の夏、校舎の石綿除去工事を業者に依頼。音楽室では工事をしなかったが、室内の建材に青石綿はなく、別の場所から入ってきた可能性がある。除去は18年度までの計画。府教委は専門家から学校生活にただちに支障をきたすものではないと聞いているが、あってはならないこと」と話し、改めて測定調査をする。
府教委の「金岡高アスベスト飛散事故に関する協議会」(座長、東賢一・近畿大学医学部准教授)は、生徒や教員が12年秋に石綿を吸った量について「環境基準の設定の際に考慮される発がんリスクより十分小さい」と10日に評価を出していた。東准教授は今月の石綿検出について「原因究明と再発防止が大切」と話している。
毎日新聞社大阪本社大阪市内面 2016年12月23日
石綿問題に詳しい閲西労働者安全センターは「工事が不適切だった疑いがある。石綿除去工事が免許制でないことが問題で、自治体が質向上のため独自の取り組みをするべきだ」と提言している。
徹底した情報公開・究明を
問題を学校・府教委が知ってから、とにかくすみやかに、情報をこねくり回さずに、オープンにしながら、処理をすすめるべきだ。ここまでに記者会見や報道がされているが、大阪府はHPなどでの情報公開を実施している形跡がない。
今回の事態は、今年度、昨年度のアスベスト除去工事が不適切に実施されたことによって石綿飛散状況が発生したのではないかという疑いがある。
今後、当該工事業者の不適切な工事が原因ではないと立証されない限り、これらの工事業者はアスベスト除去工事の入札に加わらせないことが求められよう。
今後の金岡高校除去工事の実施について、適切な工事が実施されることを担保するための検証と対策立案作業に早急に着手するべきだ。
こうした事件が起こる原因が、除去工事業の免許制が未実施であることなど、除去工事が適切に実施される法的仕組みが我が国にないことにあるという指摘が各方面からかねてからなされている。国が動かないことに手をこまねいているのではなく、今や、自治体独自の取り組みを積極的に先行させるべきだ。
12月23、25日の測定では、さらに広範囲に青石綿が検出されたということであるから、「微量だから問題ない」「国の基準値以下」という安易な認識を排除して、原因究明と再発防止に手を尽くす必要がある(教室の「基準値」はないし、「猛毒」の青石綿はそもそも想定されていない。校内空気中に青石綿が存在すること自体が問題)。また、他の学校などでもアスベスト除去工事を実施しており、可能な限りの総点検が求められる。
12月29日、「新たに40ヵ所青石綿検出 堺の金岡高 堺市の府立金岡高校で毒性の強い「青石綿」が検出された問題で、府教育庁は28日、同校舎の40ヵ所以上で新たに青石綿を検出したと発表した。国の基準値を下回っており、『ただちに学校生活に支障はでない』と説明した。年明けに検出ヵ所を清掃し、再測定する方針。府教育庁によると、今月上旬の定期調査で音楽室から少量の青石綿を検出したため、教室棟や渡り廊下など109ヵ所を調べた。39ヵ所で測定可能値を下回り、30ヵ所は業者から数値の報告待ちという。同校では昨年度から石綿の除去工事を進め、今回検出された40ヵ所の大半は工事が済んでいた。工事後に検出された原因はわかっていないという。」(朝日新聞大阪本社朝刊大阪市内面)といった報道があった。
安全センターとしては、今後とも、この「第二次金岡高校アスベスト事件」をフォローしていくことにしている。
現在(2020年10月24日)アクセス可能な大阪府、金岡高校サイトの関連ページ
金岡高校石綿問題が発生して以降の動きや資料について、次の、大阪府教育委員会や金岡高校のサイトにそれぞれの関係資料が掲載されている。
関西労災職業病2017年1月473号
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