アスベスト被害全国無料ホットライン<2022年12月15-16日>の相談から~ ●全国
2022年12月15日、16日の両日にかけて、東京、名古屋、大阪、兵庫、福岡でアスベスト被害全国ホットラインが開催された。大阪拠点では両日で約130件の相談があった。2023年1月に相談内容の整理と担当者の分担を行い、各々が相談者に対応することとなった。
<12・15-16>全国一斉アスベスト被害ホットラインの実施について(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会HP)
私は、11件の相談者を担当することになり、各々に電話を入れ、より詳細な相談内容の聞き取りを行い、早急に対応しなければならない事案以外は、病院の紹介やアドバイスを行った。早急な対応を要する相談は5件だった。
まず1件目の相談者と面談するために連絡を入れ、1月15日に京都府久世郡の自宅でお会いすることになった。この方はホットラインの際の話では、20歳から大工の職についており、令和元年に胸膜中皮腫、令和3年には肺がんを発症し、またパーキンソン病も煩っており、早急な対応が必要と思っていたが、お会いする一週間前に奥さんから電話がかかってきて、主人は全く会話もできない完全介護状態で、奥さんも体調が悪いことなどを理由に面談を断られた。
2件目の方に急遽電話を入れ、空いた1月15日に京都府福知山市の自宅でお会いすることになった。この方は、鉄工所に32年勤務し、主にボイラーなどの製造と設置を行っていた。また、石綿健康管理手帳を取得済みでありながら、手帳交付以降に全く健診等を受けていなかったが、最近になり息切れや咳がでるようになったという相談だった。当時のレントゲンフィルムをお預かりして、水嶋内科クリニックで読影してもらったところ、石綿健康管理手帳とおりの診断で、特に休業なり診察が必要と判断はできないとの事であった。電話で、近隣の病院で診察を受け、続発性気管支炎などがあれば労災申請ができることを伝え、一端電話を切った。その2、3日後、本人から電話が入り、病院には行っていない、体調も悪くないので、お断りしたいとの旨で、こちらの方としても強制することでもないことから本人の意思を尊重し相談を終了した。
3件目の相談者は、兵庫県丹波篠山在住の方で管理区分3の(イ)でじん肺健康管理手帳を交付されていた。現在健康上の問題は特に無いが、病状が進行していないか水嶋内科クリニックに肺のCT画像の読影を依頼したところ、特に病状的には進行はないとのことだった。特に現在必要な手続きもないので、この方も後日に電話で話して、終了となった。
4件目の方は、河内長野在住で、約7年前に肺がんを発症、手術を経て、現在は経過観察として1年に1回程度通院しているとのことだったが、最近、息切れがしたり少し歩くと息苦しく感じていた。作業歴を伺うと、T化成という会社でゴム製品の加工をしていて、その際に石綿やタルクを大量に扱ったということだった。昭和58年から平成22年まで26年間勤めていた。しかし、休業補償も療養補償も時効が成立してしまっているので、現在通院している近大病院で肺機能検査を行い、じん肺および石綿健康管理手帳の申請を行うこととし2月16日に近大病院で待ち合わせを行い、主治医に現在の病状を含め相談することとした。医師の診察の結果を伺う一方で、じん肺及び石綿健康管理手帳の申請の診断書の記載について協力してもらう確約を取り付け、現在は診断書待ちである。
5件目の相談は、岸和田市在住の女性で、昨年の健康診断で中皮腫の疑いありで、再検査を受けたが病名もつかず、不明という結果となっていた。今年の健康診断を受診したところ、昨年と同様に中皮腫の疑いと言われたという内容で、2月に再検査するので、そのケントゲンフィルム若しくはCTの画像を送ってほしいと依頼した。3月に入って、CDで画像が送られてきたので水嶋内科クリニックへ読影を依頼した。
読影結果は、中皮腫ではなく、結核の自然治癒後であり、特に心配することはないとの診断で、その結果を相談者に文書で知らせた。
石綿の被害が世間を騒がせたクボタショックから18年になるが、未だに患者や被害が拡大しているのには、唯々驚くばかりだ。(事務局 林繁行)
関西労災職業病2023年5月543号