2022年石綿健康被害ホットラインを実施/中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会

2022年12月も石綿ばく露作業による労災認定事業場名の公表にあわせて、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会による全国アスベスト健康被害ホットラインが15日・16日に実施された。

石綿労災被害の公表直後に各地でマスコミに報道してもらえたおかげで、全国で約300件、近畿圏と沖縄県からの相談を受ける大阪については120件を超える相談を受けた。

今年の特徴は、建設アスベスト給付金制度が始まって、対象となる可能性のある方やご遺族に個別周知を行っているため、厚生労働省や環境省から案内を受け取った方からの相談が寄せられる一方、石綿作業に従事した経歴がありながら健康管理手帳を取得していない事例など、いずれも今後継続して対応する必要のある事案ばかりであった。個別周知は私たちも強く希望したことではあるが、正しい情報を伝えるべく行政も努力した結果、大量の資料を送らざるをえず、受けとった方も「これはどうしたらよいのか」と相談する先として今回のホットラインも活用してもらえたのではないかと思う。

また、近年は建設アスベスト訴訟の進展に伴い、建設業の元労働者からの相談が多い傾向がみられるものの、工場や造船で石綿粉じんにばく露した方やご家族からの相談も絶えず寄せられている。

一例を挙げると、河内長野で長らく就労してきた方が、74歳にして中皮腫に罹患したというケースがある。15歳で中学校を卒業したのち、さまざまな職種で仕事をしてきたが、長年当地で石綿工場を営んでいた東洋をはじめ、石綿関連事業所で働いたことはない。年金記録も細かく記載されており、約20もの会社で55年にわたってほとんど漏れがなく働いてきたことを示していることから、「ここはどんな会社ですか?」「ここではどんな作業をされていましたか?」と一つずつお伺いしても、事業内容や作業内容からは石綿にばく露するような環境にはなかった。年金記録にはときどき国民年金になっている箇所があるが、それらの時期の勤め先についても本人の記憶は明確で、いずれの事業内容も石綿ばく露をするようなものではなかった。認定事業場リストから検索しても一致するものはまったくない。病院で勤めていた時期があったので、その時期の業務を尋ねると介護福祉士だったという。しかし、作業内容を詳しく聞いてみると、介護福祉士とはいえ看護助手のように働いていて、手術用の手袋の再利用処理をしたり、石綿吹付が施されているため表向きは入場禁止になっているカルテ保管庫に頻繁に出入りしていたということであった。さらに、当時の同僚も肺がんで亡くなっているという情報もあり、規模の大きな被害に発展する可能性もある。

今回は中皮腫サポートキャラバン隊の右田代表の参加が叶わず、療養中の方に対して同じ立場で相談に乗ることができなかった。本号で自ら報告しているとおり、現在右田代表は懸命に中皮腫と闘っているところである。1月中には現場に復帰して再び最前線に赴く予定なので、その活躍に期待したい。

関西労災職業病2023年1月539号