歳歳年々人同じからず 泉南石綿の碑記念式開催 ●泉南

さる4月22日、大阪府泉南市の泉南石綿の碑前にて、泉南アスベストの碑第9回記念式が開催された。

当日は、雲一つない快晴だったが、爽やかというには少し肌寒い風が吹いていた。しかし、そんな風にも負けず、式典には50人程度の人たちが参加。石綿関連疾患の患者さんやその遺族の方を始め、支援団体や、おそらく一般参加だろうという人もいらっしゃった。

患者さんの中には、車椅子に乗って、酸素ボンベ付の人工呼吸器をつないで参加されている方もおり、石綿被害の凄惨さを改めて実感した。ただ、ご本人は陽気におしゃべりされており、悲壮感はなく、逆に疾病を跳ね返さんばかりのパワーが感じられた。

記念式は、去年から今年にかけて亡くなられた、3人の「泉南アスベストの会」メンバーの紹介と黙とうから始まった。各人、エピソードを交えながらの紹介があり、また、その後の来賓のあいさつでも何度も触れられて、皆から慕われていたことがひしひしと伝わってきた。

次に、泉南石綿の碑への献花が行われた。花は白いカーネーション。花言葉は「私の愛情は生きている」で、母親の葬儀などによく使われる花である。石綿被害と闘っていた方々は、家族同然の関係だったのだろう。

続いて来賓のあいさつ。泉南市長をはじめとし、色んな団体の代表者が各人の思いを語っておられたが、なかでも、個人的に印象に残った二人のあいさつを記す。

一人目は韓国環境保健市民センター所長のチェ・エヨン氏。一通りご自身の思いを話された後、会場の皆を巻き込んで、「No more Asbesto’s Victims !」の唱和の音頭を取った。会場の皆が、右手を掲げながら、エヨン氏に続けて大きな声で叫んでいた。

声を出すのは気分がスカッとするものだ。シリアスに思い詰めがちな状況では、内にこもるのではなく、おしゃべりでもなんでもいいので、声を出して発散するのがいい。

次に、中皮腫サポートキャラバン隊の右田孝雄氏。今年亡くなられた方との思い出を滔々と喋られた後、ご自身の活動について、ついに自分の病気がしんどくなってきたので、今後は縮小していくとの発言があった。

右田氏とは、一度、中皮腫サポートキャラバン隊の、zoomでのオンラインサロンに同席させていただいたことがある。氏は、病院からの参加ではあったものの、病気のことを感じさせない、闊達なイケイケのおっちゃんというイメージだった。そういう人が、少し悔しそうに、活動縮小の話をしているのを聞いて、やはり中皮腫は難病なのだと再認識するとともに、体調が悪くなる中、それを感じさせないように飄々と過ごされ、活動されている胆力に驚かされた。

その後、集まった皆で集合写真を撮り、式典はお開きとなった。

「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」。毎年変わらずに、きれいな藤の花が咲くころに行われるこの式典だが、亡くなった人を始め、様々な事情で参加できなくなった人たち、逆に私のように新しく参加した人たちなど、とりまく人は変わっていっている。そんな変わっていく人の作る世界が、石綿被害者のみならず、みなに優しいものになるよう、活動を続けていかなければならない。式典に参加し、改めてそのように認識した。(事務局 種盛真也)

黙祷
泉南石綿の碑第9回祈念式 2023年4月22日
チェ・エヨン氏と右田孝雄氏

関西労災職業病2023年5月543号