石綿小体・石綿繊維の検査を民間総合病院「ベルランド総合病院」が開始~アスベスト肺がん掘り起こし目指す 岡部和倫・呼吸器腫瘍外科部長
石綿小体・石綿繊維検査を手軽に
民間の総合病院「ベルランド総合病院」(大阪府堺市)で石綿小体と石綿繊維検査がはじまる。
石綿小体や石綿繊維はアスベストばく露の指標のひとつとされ、アスベスト(石綿)による肺がんの労災認定や救済認定(労災補償に該当しない事業主や石綿公害被害者)の際の要件の一つとされている。
しかしながらこれまでこの分析検査は、一部の労災病院など国内ではごく限られた医療機関でしか行うことができない状況だった。
労災や救済認定を申請したのちであれば、認定審査機関である労働基準監督署や環境再生保全機構による検査が実施される場合があるが、そうでない場合は特殊なツテがないと検査を受けることが困難だった。
今回のベルランド総合病院では、院内の肺切除患者の検査は無料、院外についても33000円で受け入れるとしており、アスベスト被害者、家族にとっては朗報である。詳細は、ベルランド総合病院に問い合わせていただきたい。
胸膜中皮腫手術の第一人者・岡部和倫医師
ベルランド総合病院がこの取組をはじめることとなったのは、4月から呼吸器腫瘍外科部長として岡部和倫医師が赴任したことが理由だ。
岡部医師は、アスベストがんといわれる胸膜中皮腫の外科手術において、国内ではもっとも経験豊富な医師として知られている。アメリカでの研鑽ののち、前任の国立病院機構宇部医療センターにおいて(出張しての手術も含めて)多数の胸膜中皮腫手術を行ってきており、むろん肺がん手術についても同様である。
そして外科手術という医療面にとどまらず、認定面においてアスベスト被害者救済に尽力されてきた。今回の取組はその延長線上にある。
アスベストには種類があり、主なものに蛇紋岩系のクリソタイル(白石綿)、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)がある。
注意が必要なのは、クリソタイルは体内での残存割合が極端に低いため、石綿小体や石綿繊維の数で石綿ばく露の有無と程度を判断することが困難なことが多いということである。
そのために、労災認定や救済認定にあたっては、クリソタイル主体のばく露が想定される患者については、石綿ばく露歴を重視して認定が行われるべきであるとの観点から、現行の認定基準における石綿小体数、石綿繊維数の取扱については問題があることは事実であり、裁判上の争いでは被害者側の勝訴数が圧倒的である(稿末の関連記事参照)。
ただし、こうした点を踏まえた上で、石綿小体数とともに石綿繊維の種類と数についての情報を得ることは、認定要件をクリアしているかどうかだけではなく、その方のアスベストばく露と肺がんとの関連性を分析する上では重要な意味をもつことがあり(この点で認定につながるケースがある)、いずれにしても、アスベストばく露の関与が疑われる肺がん患者にとっては意義のある検査であるといえる。
ベルランド総合病院の取組が、今後のアスベスト肺がん掘り起こしにつながっていくことが期待される。
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