フォークリフトの腰痛予防対策~その2/大阪
フォークリフトの振動調査に先立って、まず、現場での使用状況について立ち入り調査を実施することになった。
大阪港では、約10社の企業を調査し、1社あたりのフォークリフト保有台数は3台から10台程度で、メーカーは圧倒的にTCM(東洋運搬機)が多かったように思う。一方、 神戸港は、トヨタフォークリフトが大半を占めていた。約1年かかって、現場でのフォークリフトの使用状況の調査を終了し、その結果に基づいて、振動調査は、各メーカーごとに3.5tフォークリフトを中心に、ヨーロッパのCEN(欧州標準化委員会)の振動規格で行うことが確認され、大阪港・神戸港での調査対象会社を探すことになった。ここで、ヨーロッパのCENの振動規格の説明を簡単にしておく。
50mの直線距離に高さ1cmの障害物を3ケ所設置し、そこをフォークリフトが時速10kmで走行し、その間の振動を測定する。同時に映像にも納め記録する。当初は、大阪港を中心に1日約5台から6台程度調査を行い、同時にフォークリフトオペレーターに対して腰痛健康アンケートを実施した。平行して9月に開催された組合の中央本部大会で、関西を代表して私からフォークリフトの腰痛予防対策問題を提起し、全国に協力を呼びかけて各港で使用されているフォークリフト調査と腰痛健康アンケートを依頼した。
年が変わり、フォークリフトメーカー及び重機を扱っているメーカーが加盟している(社)日本産業車両協会へ今回の問題に対しての意見交換の機会を持つべく、中央本部を通じて申し入れを行った。数ヶ月後、東京での開催が決定され、各メーカー側及び組合からそれぞれ10数名、全体で約30名が参加して開催された。
まず、組合側から問題提起を行い、メーカー側のフォークリフトや重機おける腰痛予防対策等について聞いた。日本産業車両協会の会長は当時、トヨタの代表が就任しており、言葉じりは丁寧だが、協力には否定的であった。しかし、他のメーカーは組合の行っている調査・研究については興味津々であった。
後日、滋賀医大予防医学講座から連絡が入って、メーカー側から詳しい話を聞きたいとのことで、一応、組合の了解も取り付けた上で相談することとなった。
ここで一言、説明不足な点を報告しておくと、フォークリフトには当時も現在も車両本体にクッションと呼ばれる装備が全くない。強いて言うならばイスの下のスプリングクッションぐらいで、長時間乗務すると腰部に負担のかかる業務だ。(つづく 事務局:林繁行)
関西労災職業病2020年10月515号