フォークリフトの腰痛予防対策~その1/大阪
今から約25年程前、全日本港湾労働組合の定期大会の際、参加組合員からフォークリフトの乗り心地改善の取り組みを行ってほしいとの意見が出された。この意見が出された理由は、過去のトラックの乗り心地改善の取り組みの成果からである。
当時のトラックのクッションは板バネと呼ばれるもので、いわゆるクッションが悪い、運転席のイスの構造上の問題や道路状況など多くの問題があり、トラック運転手には腰痛を訴える人が多くあった。組合の要請を受けて滋賀医大予防医学講座が、トラックの助手席に振動計測機材を設置し、大阪市内、神戸市内の公道で、各メーカーごとに数十台を調査し、トラックに25分以上乗務すると振動が非常に大きいため、健康上に問題が生ずるとの研究結果を発表した。
組合はその結果を受け、各トラックメーカーに振動による健康問題や対策、今後発売するトラックにエアーサスペンションを標準装備する考え方等について意見交換会を行った。しかしメーカー側は組合の依頼に対して否定的な対応で、トラックが売れればよい、これ以上高価になれば販売促進の足かせになるとの回答だった。
現実には、観光バス等は既にエアーサスペンションが装備されており、お客様を乗務させる人たちには配慮しながら、荷物を運搬するトラック運転手には配慮せず全く装備されていなかった。
また、メーカー側もオプション設定での装備はあったが、1台あたり100万円と非常に高価なもので、企業側は少しでもコストを押さえるため、ほとんどのトラックには装備させていなかった。メーカー側の回答を受け、一時はトラックの不買運動を展開するなどしてきたが、運動の広がりと時代変化により除々にではあるが、エアーサスペンションが装備されたトラックが販売され、現在ではトラックのほぼ100%に装着されている。
この成果を基にフォークリフトの乗り心地改善を希望する意見がだされた。
組合員の意見を一端持ち帰り、安全衛生委員会で吟味し、フォークリフトの乗り心地を改善する取り組みを行うことが決定された。それまで港湾の職場では、腰痛症は港湾病とも言われるほどに多発していたため、救済の方に目が向けられ、予防対策が講じられてこなかったのも事実である。そういった反省を踏まえ、早速、滋賀医大予防医学講座に港湾の荷役状況の調査依頼を行い、具体的な内容を含め数回議論を行った。具体的に港湾ではどの様なフォークリフトが使用されているのか、現場への立ち入り調査から実施することとなった。(つづく)
事務局:林 繁行