脊髄損傷者の諸問題について学習会を開催/福岡

9月2日、福岡県総合福祉センターで脊髄損傷者の学習会が開かれた。
当センターでは昨年度、脊髄損傷者による当事者団体「全国脊髄損傷者連合会(以下、脊損者連合会)」を通してKWさんの労災遺族請求(本誌2013年5月号)の相談が寄せられたことから、関わる機会に恵まれた。特に福岡県脊髄損傷者連合会の織田晋平さんが、脊損者の労災問題に詳しいということで、いろいろ教えていただいた。その過程で脊髄損傷者の死亡について、KWさんのケースのように労災遺族請求が不支給となることが少なからずあるということを知り、センターとしても取り組みを強化する必要性を感じた。

そんな中、全国労働安全衛生センター連絡会議が呼びかけ、脊椎損傷者問題に理解を深めるため、今回の学習会を開催することとなったのだ。
織田晋平さんに講師をお願いし、織田さんの地元の福岡で開催した。全国センター関係で各地から約10人、脊損者連合会の福岡、大分、熊本、佐賀からも10人、計20人ほどの参加者があった。

織田晋平氏(左手前)

やはり、大きな問題の一つは労災の脊損患者が亡くなったとき、病名によって遺族年金が不支給となるケースが多くあるということだった。脊髄損傷については厚生労働省は1993年10月28日に「せき髄損傷に併発した疾病の取り扱いについて」(基発616号)という通達を出しており、脊髄損傷と因果関係が認められるものとして25の併発疾病を定めている。その中に含まれている肺炎や明らかに敗血症が疑われるケースでも、不支給とされた事例があった。脊髄損傷の場合、労災で療養しても最近は医学の進歩もあり一定の治療後、治癒とされ障害年金に移行する方が多い。するとその後に症状の悪化でおこった褥瘡や尿路感染症などの併発疾病を、労災に請求していない場合が多い。

一度固定としたものを、再度労災に療養補償や休業補償を請求しなければならず、多くの方が手続きを怠ってしまう。すると死亡するまでにおこった多くの併発疾病が労災で処理ざれずにきたため、病状の経緯が死亡と関係があっても労災で全く把握されないこととなり、その上、死亡時につけられた病名が併発疾病のリストになければ、見過ごされることになってしまう。織田ざんは、脊損の場合、障害年金ではなく、傷病補償年金に移行することが望ましいと言う。また患者や家族には、常に傷病の記録をつけておくよう呼びかけている。
脊損者連合会の中では労災問題への取り組みの強化や、脊損者のメンタルケアの問題などが今後の課題だ。ほかの支部の方からも事例報告をしてもらい、有意義な会だった。

関西労災職業病2014年12月450号