教員中皮腫不支給処分取消訴訟、逆転勝訴<名古屋>
愛知淑徳学園中高校の国語教員が2001年11月に中皮腫で死亡した。
クボタショックの翌年2006年に名古屋東労基署に労災請求するも, 2008年に不支給となり,審査・再審査請求とも棄却されたため,遺族は2011年7月に不支給処分の取消を求めて名古屋地裁に提訴した(原告:宇田川かほる氏(被災者:夫・暁氏))。
2016年11月に不当敗訴し名古屋高裁(民事第四部:藤山雅行裁判長) に控訴,2018年4月11日についに原判決取り消し=勝訴となり、 国は控訴せず確定した。
裁判は「宇田川さんの学校アスベスト裁判を支援する会」(代表・墨総一郎氏<元公立高校教諭>,事務局長:成田博厚氏<名古屋労災職業病研究会事務局長>) を中心に学校アスベスト問題を取り組む仲間,中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の支援のもと闘われた。
地裁敗訴に際して, 弁護活動の不十分性と判決内容が厳しく総括され,中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会は、 弁護団の強化と支援のさらなる強化が必須であると判断し, 会の相談役である位田浩弁護士に協力を要請, 控訴審では位田弁護士に村川昌弘・竹藪豊弁護士が加わったアスベスト訴訟関西弁護団で巻き返しが図られることになった。 支援活動も強化され回を追うごとに傍聴者も増えた。
控訴審判決は、中皮腫認定基準がばく露期間「原則1年」としていることは、他国にもみられない「長期間」であり根拠がないとし、愛知淑徳学園での度重なる工事や吹き付けアスベストからくるアスベストばく露をばく露と認めず「原因不明だ」 と言い張ってっきた国(厚労省)や国側の専門家(森永謙二医師ら)に対して、 労災原因と認めるだけのばく露があったことは明らかだとした。
これまで「原因不明だ」「こういう事案こそ環境再生保全機構に申請をどうぞ」 という不当な行為を続けてきた国とその専門家への強烈なダメだしを意味する。
優れた判決を勝ち得たのは、 控訴審弁護団のアイデアと力量, それに応える意見書を作成された専門家(名取雄司・久永直見・酒井潔医師)の協力による。
判決を契機として労災認定基準の抜本的改善を求めて行くことはもちろんだ。
しかし、すでに多くの中皮腫被害者が,学校アスベスト被害に限らず, 労災ではない,原因不明だとされ,中途半端で低水準の環境再生保全機構による救済で済まされてきた。 そして裁判に訴えられるだけの条件のある方はごく限られている。
したがって、 労災であっても労災でなくても, アスベスト被害は同等に十分に救済・補償されるべきだという観点から被害者が一致協力した運動を進めることもまた急務であることを痛感した、 今回の控訴審判決であった。
『関西労災職業病』2018年5月(488号)
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