アスベストユニオン定期大会開催~水嶋潔医師が講演/大阪

2026年2月1日、第20回全造船関東地協労働組合アスベストユニオンの定期大会が大阪で開催された。その前日にあたる1月31日、みずしま内科クリニック院長でNPO法人疫学リサーチセンター理事長である水嶋潔先生を招いて記念講演を行った。
胸膜プラーク問題
演題は「最近の石綿関連疾患」であり、臨床を通して確認できる石綿関連疾患と、その患者の救済について講演された。水嶋先生は講演を通じて、石綿ばく露歴が認められる労働者については、わずかであっても胸膜プラークの確認を怠らないことの必要性を訴えられた。
特に肺がんについては、他院で見逃されていた胸膜プラークの指摘から業務上疾病として認められるまでの解説が行われた。
70代左官工は他院で肺がんが確認され、その病院で治療を受けながらみずしま内科クリニックに通院している。クリニックで不整形陰影と胸膜プラークが確認されたため、その旨を肺がん治療中の病院に伝えたところ、「CT画像上で胸膜プラークが確認できず、手術時の胸腔内も検索したが明瞭な石綿の影響を疑わせるプラークはなかった。また病理診断においても石綿粒子は目立たなかった」という回答であった。それでも不整形陰影を根拠にじん肺管理区分申請を行う一方、肺がんについても労災請求を行ったところ、確定診断委員会で、手術時に摘出された組織から石綿小体が確認されたことでようやく業務上災害として認定された。
同じように60代の内装工の肺がんについても、手術を行った病院ではCTの画像所見からは胸膜プラークがないと判断している。しかし、水嶋先生からの指摘に対し、「胸腔鏡の術中所見に『プラークあり』との記載あり」と情報提供を行い、術中写真を添付している。この被災者ものちのち石綿ばく露による肺がんとして業務上認定を受けた。
胸膜プラークの有り・なしに関する議論は、「労災協力医や労災医員がないと判断したから、ない」という点に集約されてしまう。なぜ主治医らが指摘する箇所が胸膜プラークではないと言い切れるのか、ということは、全く読めない。確定診断委員会の報告書は文字通り「有り・なし」のいずれかにチェックを付けているだけで、なんら具体的な所見は記載されていないのである。これに対抗するべく、水嶋先生からのヒントは2つ出された。
一つ目はCT画像の濃淡を数値化したCT値である。白黒のCT画像で、黒い部分は空気、白い部分は組織である。骨やペースメーカーなどの金属類は白く写る。黒でも漆黒の部分もあれば、淡い黒もあり、その濃淡で異常を把握する。この濃淡差を用いて、胸膜プラークとその他の組織を区別することで客観的な評価ができるのではないだろうか。一部石灰化した胸膜プラークと脂肪は画像上明確に区別ができないが、脂肪の平均CT値が60HU(CT値の単位:Hounsfield Unit)であるのに対し、石灰化した胸膜プラークは500HU~1000HUにも及ぶ。目視だけではなく、数字で客観的に胸膜プラークを確認することができるのであれば、これほど便利なものはない。しかし、CT値を用いて確認作業できる程度の胸膜プラークであれば、画像の目視でも確認できそうなケースが多く、石灰化していないようなプラークや、小さくて分かりにくいプラークは見落とされてしまう点が難である。
そこで胸部エコー検査の導入である。エコーであれば、放射線被ばくがなく、繰り返し検査ができるほか、プラークは呼吸に合わせて胸郭が動いてもその内部に変化がないことから、他組織との鑑別を動的に行うことが可能である。まだ一般化されているわけではないが、水嶋先生は日本プライマリ・ケア学会や日本職業・災害医学会で報告し、関心を集めている。もっとも、CT画像から該当する箇所を適正に把握し、その部分にエコーを当てなくては見つけ出すことはできず、検査範囲も広範囲・長時間に及び、多大な忍耐と熟練度が求められる検査であることも指摘された。
石綿肺と間質性肺炎の問題
具体的なケースは、石綿肺についても紹介された。非特異性間質性肺炎と他院で診断されて療養を継続していた70代の大工について呼吸機能検査を行ったところ、%肺活量から「著しい肺機能障害」が認められる結果が得られたこと、また画像上も広く網状陰影が確認できたほか、石灰化胸膜プラークも認められることから、じん肺管理区分申請を行い、管理区分4相当の決定を受けた。その後業務上と認められ、現在もみずしま内科クリニックに通院中である。
間質性肺炎と診断された石綿ばく露歴のある労働者が相談機関から紹介を受けたり、自ら見つけ出してみずしま内科クリニックを訪ねるが、このうちの多くの患者から石綿肺が確認されてきた。また、間質性肺炎自体がじん肺の基本的な病態であるという議論は、故海老原勇先生も常日頃行っており、今回の記念講演でも17年前の産業衛生学会のポスターセッションで海老原先生が報告した際に用いた資料を用いて解説された。
この資料は、静岡県の久根鉱山で低濃度珪酸粉じんにばく露した労働者の肺野における粒状影と不整形陰影の出現状況と時期を調べたものである。この鉱山は1970年に閉山されるが、海老原先生は246名について離職後のじん肺検診や治療を通じて後追い研究を行っている。
最初に撮影された胸部レントゲン写真では、半分以上が珪酸粉じんのばく露を示す粒状影を映す者であった。しかし、1割に粒状影と不整形陰影の両方が確認され、離職後20年経過した元労働者ほど不整形陰影が確認される傾向は強かった。しかも閉山時に正常な肺だった者でも、離職後20年以上の22名中じん肺が確認された者は19名、さらに半数以上の11名に蜂窩肺が認められるようになっていく。じん肺は、粉じん作業を止めても進行し、さらに進行すると間質性肺炎に見られる蜂窩肺も引き起こす。つまりじん肺の一病態として間質性肺炎があると言える。
「粒状影は珪肺・不整形陰影は石綿肺」と単純に区別するのではなく、長期間の観察を経て珪肺症の患者でも不整形陰影が発生すること、久根鉱山は金属鉱山であるため、石綿にばく露していないが、不整形陰影の発生率は石綿ばく露作業者の石綿肺発症率よりも高率であるというデータを海老原医師は示す。病理的にもじん肺の初期変化は、珪肺であろうと石綿肺であろうと同じような肺病変を引き起こす。結晶質シリカと石綿では粉じん巣の線維化の進行度が異なるので、画像として粒状影が目立つか、線維化が目立つかの違いだと海老原先生は論じている。
先にも述べたように海老原先生の発表は17年前であり、ちょうど「石綿による疾病の認定基準について」が改正された時期でもある。認定基準を策定するための検討会では、「胸膜プラークが確認できた肺線維症」については石綿肺であると議論されている。それ以降、じん肺、特に石綿肺と間質性肺炎を鑑別し、別疾患として捉えるほど医学的な知見が深まっているわけではない。近年の行政は、じん肺審査ハンドブックの改訂を始め、十分な知見もないまま、石綿肺の対象を狭めて救済から被災者を遠ざけようとしているように思われる。水嶋先生も参加する「医師有志の会」からは、医学的見地から行政に積極的に意見を具申しているが、アスベストユニオンも積極的にかかわっていくことになるだろう。
関西労災職業病2026年2月573号


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