労災保険特別加入制度における特別加入団体の意味、役割がわかっていない?/兵庫
2024年12月に開催したアスベストホットラインに寄せられた相談で、被災者は16歳から兵庫県尼崎市で大工見習として就労、以後1982年から1991年まで工務店に勤務、以降は独立して工務店を設立、一人親方として就労した。ところが、2023年9月に乾いた咳がでて胸痛が起こり、近隣の病院で診察してもらうも、その病院では対応できないことから、兵庫中央病院を紹介され受診した。結果、左下葉進行肺がんと診断され、入院のため宝塚市立病院に転院、投薬治療と放射線治療を行うが、進行があまりに早く、ホスピスである岡本病院に転院し、同年11月に死亡したということだった。
家族からの相談を受けて翌年の2025年から石綿救済法、労災、建設アスベスト給付金の申請に当たっての調査を始めた。その調査の中で、1982年から1991年の工務店に勤務した期間は純粋に労働者であり、独立した以降の期間について、特別加入していたかどうか調べたところ、特別加入していたことが判明、5月2日伊丹労基署に労災申請を行った。
「特別加入団体(某土建組合)の証明と事業内容の証明を貰ってくれ」と労基署の担当官より言われ、アポイントを取って同年5月7日に某土建組合を訪問した。某土建組合の事務員に趣旨の説明と署名・押印する資料を預けて相談者の自宅へ向かった。相談者には、土建組合への一声お礼と協力のお願いと、葬儀会社に葬儀の執行証明書作成を依頼するよう頼んで帰った。
ところが相談者から電話が入り、某土建組合の組合長から証明できないとの説明があったと言うが、不明な点があるため、再度某土建組合に向かった。事務員は当センターについて「なぜ第三者が介入するのか」と言い、「うちでは建設国保・労働保険関係の委託を受けているだけで、個々の労働者がどんな業務内容か分からないので証明できない」との返事だったので、預けた書類を回収し、伊丹労働基準監督署へ土建組合が事業主証明を拒否した旨を報告した。
担当官は、「証明できない理由を記載してもらってほしい」とのことで、私は少し腹立たしく、「証明を拒否されているのに、証明できない理由など書くはずが無い、監督署の職権で行え」と言って電話を切った。
一地方の土建組合とはいえ、なんと視野の狭いことで、組合員のおかげで運営が成り立っていることを理解しているのか、あるいは、労災保険の特別加入についての基本的な知識がないのか、いったいどうなっているのかと大いに疑問に思った。
それに、「第三者の介入」と中傷めいたことを言われたが、関西労働者安全センターの存在をどう思ったのだろうか?労災保険における特別加入団体の役割をきちんと果たしてほしいものだ。(事務局:林繁行)
関西労災職業病2025年6月566号