2023年度石綿(アスベスト)労災認定事業場、労災認定状況を公表~厚生労働省~
1233事業場について公表
12月11日厚生労働省は2023年度にに石綿疾患により労災認定された労働者が所属した事業場を公表した。全認定事業場1318事業場のうち1233事業場(93.6%)の名前、所在地、認定疾病と件数などを公表した。
同時に2023年度に石綿疾患として労災認定された事案に関する認定状況を発表した。合計で1391件が認定された。そのうち159件(11.4%)が石綿救済法による労災時効救済(特別遺族給付金、すべて死亡事案)だった。
これまで事業場情報の公表は、2005(平成17)年7月、8月、2008年3月、6月、10月、12月、2009年12月、2010年11月、2011年11月、2012年11月、2013年以降毎年12月に行われてきて、今回が12回目になる。2005年クボタショック直後にはじまり、一時、国・厚労省の情報公開姿勢が後退したが運動の力で押し戻し、2009年12月からは事業場情報公表が今の形で定着した。
職業がんを主体とする職業性疾病で、毎年1000件以上が労災認定されているのは石綿疾患だけであり、石綿被害は労働者だけでなく使用者・事業主、家族、周辺住民にまで拡がっており、さらに、長期の潜伏期間を有する職業がん(肺がん、中皮腫)を主体とすることから多数の未救済事案が生じるという被害構造を有しており、被害者の人権確保の観点から不断の社会的注意喚起が必要である。
そのためには、どこでどれだけの被害が発生しているのかの詳細を社会に知らせることが必須であって、そのための最重要中核情報が「石綿労災認定事業場情報」である。
12月に恒例となったこの労災認定事業場情報公表にあわせるかたちで、毎年、全国一斉アスベスト被害ホットラインが行われ、当センターもこれに協力している。ここには、毎年二百数十件の相談が寄せられる。事業場情報公表翌日から二日間、厚生労働省が行っている相談電話件数も毎年200件を超えているといい、「事業場情報公開」の重要性を示しているといえよう。
いまのところ国・厚生労働省は事業場情報公表を後退させる動きをみせてはいないが、これを半永久的に続けさせていくためには、アスベスト被害、病気についての情報発信を継続強化することが大切である。
アスベストやこれによる健康被害に対する社会的認識を低下させないために、被害者団体や支援団体の情報発信力を強化して、社会やマスメディアへの注意喚起に努めなければならない。
増える建設業における労災認定
2023年度まで過去5年度分の労災保険と特別遺族給付金(労災時効救済)認定状況の内訳を表1-1、1-2、2に示した(厚生労働省資料から引用)。
特徴的なのは、特別遺族給付金の請求件数が2021年度から3年平均で300件を超え、支給決定件数が2022、2023年度と150件を超えたことである。
石綿健康被害救済法では2022年3月当時、3月をもって労災以外の救済給付や労災時効救済が請求期限切れとなるため当センターを含む全国的なホットラインをおこなったところ非常に大きな反響があり、その後の法改正による請求期限の10年延長が実現したという経緯があった。その過程で厚労省、環境省も「期限が切れますよ」とのPRをしたことが2021年度以降の請求件数、支給決定件数の増加をもたらした。その影響が2023年度も続いているのである。
しかしながら、表1-1と表2を比べると特別遺族給付金の認定率の低さが目立つ。時間経過による医療記録などの消失、証言しうる同僚の死亡、会社の消滅などが主な原因とみられるところで、時効救済制度の存続とともに時効にならないための官民の努力が求められていることを銘記したい。
もう一つの特徴は、全体の請求件数、決定件数のゆるやかな増加傾向だ。この原因は、建設業における件数が増加していて、この増加分が製造業等のゆるやかな減少傾向を上回っているためである(下のグラフ参照)。
公表労災認定事業数の推移を建設業とそれ以外でみても、その傾向が明確にわかる(表3)。
認定事業場の全体数に対する公表事業場数の割合は、2023年度では94%でほとんど変化していない。公表事業場については、建設業以外と建設業にわけて、新規公表の事業場数が示されている。建設業以外では、公表事業数は低下傾向にある一方、建設業では増加傾向が明確である。また、建設業ではごく小規模な事業場が多いことで毎年度の新規公表事業数の割合は90%前後で推移している。
労災認定事業場検索サイトの活用
厚生労働省の公表データは、エクセルファイルでかつ全国を7地域に分けた分割ファイルで厚労省サイトの決まった場所に公開されている。
見たい人はどうぞ、ということであるが、一般人が気軽に検索出来るシステムを提供するべきだろう。
そこで、全国安全センターでは検索が容易にできるサイトを作成し、提供しているので関心のある方は是非使ってみていただきたい。簡易な検索しかできないが、十分な実用性を有している。
↓↓↓「石綿労災認定事業場検索サイトby全国安全センター」↓↓↓
(事務局 片岡明彦)
関西労災職業病2025年1月561号
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