メンタル労災・全国一斉ほっとラインを実施~ハラスメントを減らすために~
10月10日の世界メンタルデーにあわせて、2024年10月11、12日の2日間、精神障害の労災についての電話相談が行われた。全国労働安全衛生センター連絡会議の呼びかけで、全国の安全センターやユニオン、市民団体に協力いただき、全国12箇所(札幌・東京・山梨・神奈川・名古屋・京都・大阪・兵庫・岡山・広島・徳島・福岡)に相談ポイントを設けた。相談件数は全国で217件(昨年は9箇所217件、一昨年は11箇所97 件)であった。
私たち関西労働者安全センターでは、近畿(兵庫以外)、四国(徳島以外)、沖縄からの相談を受けた。相談件数は、10日にフライングで1件、11日に18件、12日に10件の合計29件。内容の内訳は、ハラスメントが20件、長時間労働が7件、法に触れかねない仕事をさせられているが2件だった。
相談を受けての返答は、基本的に、すでに医者にかかっていたり休業している人に対しては労災請求や障害者年金などについてアドバイスしたり、今も職場にいる人には、事情を聞いた上で、社内の労組やユニオンへの相談を促したり、症状や環境がひどそうな場合は、一旦休職して職場から離れることを勧めたりした。
関西労働者安全センターでの後のフォローが必要な案件は4件で、それぞれ保育士、大工、会社雇用の専属運転手、養護教諭の方からの相談だった。
「精神的な攻撃」最多
ハラスメントの相談20件に関してさらに分類すると、「精神的な攻撃を受けた」が16件、「過大な要求」が4件、「過小な要求」が2件だった(別項目の重複あり)。
「精神的な攻撃」の内容は、上司に怒鳴られた、無能呼ばわりされた、シフトを増やすのを断ったら怒られたなど、叱責に伴う攻撃が多かった。その他としては、自分だけずっとトイレ掃除を命じられた、上司と進めていたプロジェクトを社長に報告したら怒られたが、同席していた上司のフォローがなかった、適応障害で休職になって、復職しようとしたらまだ休んどけと言われて、出てくるなら別の部署にすると言われたなどがあった。私の個人的な感想だが、今回の「精神的な攻撃」の8割ぐらいは、大声と暴言と勘違いで起こっており、ハラスメントした側が、大声を出さずに、丁寧語で、じっくり伝えるだけで何もなかったのではないかと思えた。2022年4月から、職場でのパワハラ対策が全事業主の義務になったが、どの人も、部下や同僚に対して、くれぐれも冷静に丁寧に話をしていただきたいところだ。
「過大な要求」については、過大な要求をされること自体のストレスに加えて、それで失敗して怒られたり懲罰があったり、長時間勤務になったりするのが心理的な負担になっているようだ。根本的に解決するには、別に失敗しても、次頑張ろうで許される世の中を作っていかないといけない。
「過小な要求」については、仕事を外されて雑用に回されて、いつ解雇されるか不安という人と、8時間のはずの派遣仕事が、2時間で帰っていいと言われてバカにされているように思った(給料は8時間分出た)という人がおり、前者の方はまだしも、後者の方は、楽できてハッピーとはならないあたりに、人は生きるためだけに生きているわけではないのだと実感する。事実、私も、以前勤めていた会社では、自分のこだわりで勝手に変な仕事を増やしていたし、やらない人をなんでやらないんだと思っていた。答えは簡単で、やる必要なかったからなのだが、当時の私にそれを言って聞くかと言われると何とも言えない。
長時間労働事案あれこれ
長時間労働については、2つ事案を取り上げてみる。
1つは、知り合いからある飲食店の店長をまかされたが、忙しすぎて適応障害を起こした。しかし、知り合いに迷惑がかかるかもしれないから、労災の請求を迷っているというケースである。気にせずに請求してくださいとアドバイスしたが、この辺の意識改革は難しい。会社に迷惑かと考えて労災請求しない人はそれなりにいるが、それは迷惑かけるのではなくて、改善の機会を与えたのだと思って遠慮はしないでほしいものだ。
もう1つは、バスの運転手の方の相談だ。バスの運転記録が出勤記録になっており、その時間を元に勤務時間が計算されている。その勤務記録でもそこそこ時間外労働しているのだが、実はバス運転の前後に、バスの整備の時間があり、それで毎日1時間30分ぐらいかかるが、それは加味されていないというのである。これが難しいのは、整備を全部きちんとやると1時間30分ぐらいかかるらしいのだが、他の人は適当にやるので30分ぐらいで終わらせたり、そもそもやらない人もいるということだ。社内の労組に訴えても、人によってまちまちな状況なので、非常に消極的な態度を取られるとのことだった。業務時間に関する状況をどこかに告発して是正したいということだったので、自分が業務していた証拠を集めて、労働基準監督署の監督課に言うようにアドバイスした。ただ、個人的な感想として、こういった、会社が暗黙の内にやらなくてもいいとみなしている仕事に対しては、必要なことだと会社に認めさせるより、自分もサボってしまう方が楽だと思うし、自分で仕事を増やして病気になるぐらいなら、バカにされても手を抜いた方がいいと思うのだが、この辺は、「過小な要求」のところで書いたことにも関わってきてなかなか難しい。
全体に対する別の視点として、29件のうち、被災者本人以外からかかってきた相談が6件あった。私の実感として、精神疾患の相談は、本人以外からかかってくる割合が多いように思う。今回は、本人が相談できるような体調じゃなかったり、本人が異常(体調、環境)に気付いておらず、周りが心配してということだったりした。みなさまも、周りの人によく気を配っておきましょう。
以上が2024年のメンタル労災ほっとラインの報告である。フォローが必要な案件について支援していくと共に、業務による精神疾患が少しでも減るよう、活動を続けていかねばならない。(事務局 種盛真也)
関西労災職業病2024年11・12月560号