介護業務による股関節障害が本人の聴き取りもないまま労災不支給に●大阪

2024年3月末、ある女性(Aさんとする)から、関西労働者安全センターに相談の電話があった。彼女は、介護老人保健施設にケアマネージャーとして勤めていて(相談当時は就労中、2024年11月現在は辞めている)、その施設での業務で股関節を悪くして手術することになったから、労災を請求しようとしている、相談に乗ってほしいということだった。

事情を聞いてみると、2021年に施設にケアマネージャーとして就職し、現場での肉体労働はそこそこに、介護計画等の事務仕事や入居者の家族との対応を行っていた。しかし、2022年12月頃から、辞めるフロアスタッフが相次いだため、現場の人員が足りなくなり、現場仕事の割合が増加し、股関節を悪くしたということだった。具体的には、入居者を部屋からお風呂まで連れていく入浴誘導が、元々週1回程度だったのがほぼ毎日になり、担当する人数も1.5倍ぐらいに増えた、食事配膳も週2、3回だったのがほぼ毎日になった。さらに、人員が減っているにもかかわらず、コーヒー提供というサービスが2024年1月から始まり、その担当にされたことで、毎日決められた時間に、希望者を居室から大フロアまで連れてきて、コーヒー提供後、元の部屋に送り届けるという仕事もしていたとのことだ。
実は、Aさんは、もともと足が悪く、この施設への就職時点で、股関節に症状が出ており、1時間以上歩くと股関節が痛くなっていた。そのことを承知で雇ってもらっており、それで現場仕事を控えめにしていたのだが、今回、力仕事と歩き回る仕事が増えて、常時股関節が痛む状態になった。
なので、意見書を書く際、股関節の症状が悪化していることと、2022年12月以前と以後で業務量が変わっていることを強調して書き、2023年4月に労災の休業補償と療養補償を請求したのだが、2024年10月、不支給の決定が出てしまった。災害の事実と傷病、業務の間に相当因果関係が認められなかったとのことである。2024年11月現在、労災の調査に関する文書の開示請求をしている状態だ。

今回不支給になった理由は、詳細には開示文書が出てからだが、おそらく、業務としては重量物を運ぶ等の負荷が軽いと判断されたことと、股関節障害の既往症があったこと、周りの者は股関節障害を起こしていないこと(腰痛はいる)などだろう。それについては審査請求するならおいおい反論を考えていくとして、今回の請求でちょっと納得がいかないのは、Aさんへの聞き取り調査が無かったことだ。請求してから2ヶ月ぐらいたった2024年6月ごろ、Aさんが聞き取り調査されていないということだったので、労基署にやらないのか聞いた時、提出した書類がしっかりしているからやらないかもしれないと言われ、結局なしのままだった。それで認定になるのなら決定も早くなるし良いのだが、不認定になったわけである。災害にあった人を、少しでも救い上げようという気概をもって、不認定になりそうなら、業務の状況を本人から直接聞いてみようという風に考えてほしいものだ。

関西労災職業病2024年11・12月560号