きわどい労災認定、バス運転・整備士のアスベスト肺がん事案/京都

2023年12月、石綿被害全国ホットラインを開催し、関西では2日間で約120件の相談があった。後日、担当者で任務分担を行い、私は10件を担当することになった。現在はそのほとんどが解決したが、つい最近労災認定された1件を紹介する。

ホットラインが終了してすぐに相談者に電話を入れ、被災者本人と妻らと同年12月26日にお会いするになった。
お会いして、まず最初に本人の病状を聞くと、2020年4月、市町村の実施している市民健康診断で肺に異常陰影が発見され、南京都病院を受診、胸部の検査をしながら通院することになった。2022年5月には「肺がん」の疑いが判明、手術を前提として同年6月に京都府立医科大学付属病院を紹介され転院、7月に「肺がん」の確定診断を受けた。その後手術を行い、投薬と経過観察を続けていたが2024年初旬に肺がんが再発し治療を続け現在に至っているとのことであった。

次に、仕事内容について伺うと、京阪沿線を中心とする大手バス会社で、バスの整備を行いながらドライバーとして35年間勤務したとのことであった。整備士でもあったことから石綿ばく露の可能性が十分に考えられる。

その日は、厚生年金の履歴とレントゲンとCT画像のCD―ROMを預かり帰阪した。
数日後、バス会社に電話を入れたが、たらい回しされた挙句、退職して約24年が経過し、資料等は何も残っておらず就労していた事が立証できないと断られた。また、念のため預かったCDを水嶋内科クリニックで読影してもらい、「胸膜プラークは少しあるが石綿肺は確認できない。」との結果であった。

相談者に電話を入れ、京都府立医科大学付属病院の主治医に「石綿ばく露と肺がん発症の関係について意見を聞きたい」との内容でアポイントを取ってもらうよう依頼し、2024年2月21日に主治医と面会することになった。

主治医の意見では「石綿を過去に扱っていたと聞いていましたが、過去のレントゲン及びCTからは胸膜プラーク及び石綿肺の所見はありません。」との回答であった。

私は、相談者と話し合い、労災認定はむずかしいかもしれないが、申請するだけでもと確認を得て、病院から直ちに京都南労働基準監督署へ仮申請することにした。なぜなら、一部既に時効にかかっており、早急な対応が必要であったからだった。
京都南労基署で担当者に事情説明し、労災保険の休業補償請求書様式8号を記載不十分のまま取り急ぎ受理して貰い、帰阪した。また、同時に石綿救済法の申請も行った。

後日、京都南労基署より記載不備で8号様式が郵送返却され、相談者に、医師の証明欄および未記入部分についての記載を医療機関に依頼し、その後に請求書の必要部分をすべて記載した上で、京都南労基署へ郵送するように指示を行った。

申請を行ってからは、相談者と京都南労基署に進捗状況を伺ったりしていた。私自身は水嶋医師の判断や主治医の意見を聞いて、不支給扱いされるかもと不安を感じていた。ところが、8月16日相談者より電話が入り、京都南労基署の担当者より電話で「労災認定」と知らされたとの報告があった。私からも京都南労基署に電話を入れ、担当者に確認をとった。

担当者はまだ口頭報告で数日後には封書が届くので確認してほしいとのこと、また胸膜プラークが確認されたことが認定の理由であるとの説明だった。8月22日、相談者とお会いし、今後の進め方等の説明等を行い、不明な点があれば連絡するように伝えた。労災認定の内容を確認したいため、開示請求を行い、今後の事例等に役立てるものとし、この相談について終了した。まだ少し書類上の手続きは残っている。(事務局 林繁行)

関西労災職業病2024年9月558号