ユニオンセミナー参加レポート~コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク/全国

2024年7月27日から28日にかけて開催された、コミュニティ・ユニオン全国ネットワークのユニオンセミナーに参加してきたので、リポートする。

先行き不安

私がこのセミナーのことを知ったのは、2024年5月のことだ。ある人に誘われて、私は興味本位で参加を決めた。
若手中心のセミナーと聞いていたが、私の働いている関西労働者安全センターでも、一番若いのが私(39才)で、若手ともてはやされており、次がもう50代なので、少なくとも私より若い人は集まるまいと思っていた。
6月18日、セミナーで使うということで、A4用紙1枚分の質問用紙がメールで配られた。回答の締め切りは7月18日。私は、あまり締め切りを守れる方ではないが、珍しくこの時はスパッと書いて、6月20日に提出した。そして、7月18日、セミナーの運営から新たなメールが届いた。参加者21人中、9人からしか回答が返ってきてない、はよ送れという旨のメールだった。最初の、参加者は多分年かさの人ばかりだろうという予想も相まって、このセミナー大丈夫かしらとちょっと不安になった。

若者たち

当日、クマゼミがシャンシャン鳴く快晴の中、「うぃる愛知」という公民館に着いた。セミナーの部屋に入ると、20代の女性がいた。となりのホールでバレエのオーディションみたいなことをやっていたので、部屋を間違えたかと思ったが、入り口で配っていた資料にユニオンセミナーと書いていたので、合っていたようだ。周りを見回してみると、私(39才)より若そうな人が先ほどの女性含めて3人ほどおり、残りのメンバーも、いきなり50代ということは全然なく、40代の人が主流なようで、思っていた以上に若い集まりで驚いた。以前、韓国に行った時、大学新卒で労働組合の事務局になる人がいたりと、若い活動家に驚いたものだが、日本もやる気のある若人がいると考えを改めた。

ケーススタディ

ようやくセミナーの内容に入る。セミナーではまず、具体的な事案によるケーススタディが行われた。ケーススタディは、4つある項目から2つ選んで参加する形で進行した。
私がまず参加したのは、名古屋ふれあいユニオンの鶴丸氏が語る、コロナ禍を契機とした集団解雇の案件だ。

簡単に事情を説明すると、コロナ禍で契約を切られた大勢の契約社員で組合を作って、会社と交渉し、5年以上勤務実績のある人は無期契約の社員として、5年未満の人は、新たに契約期間を設けて雇い直しという形で一旦和解したというものである。
そして今、問題が発生している。

組合ではさらに、契約社員達の賃上げと、有期契約になっている社員の契約期間延長を要求しているが、その2つのことが、相反する構造になっているのである。賃上げを要求しすぎると、原資がないので有期契約の人は契約止めますとなるし、契約延長を強く要求すると、同じ理屈で賃上げは見送りとなる。

それで、今後どう進めればいいだろうかという話し合いになった。色々な意見が出る中で、実は、この無期契約になっていない人たちは、別にずっとここで働くことに積極的なわけではないということがわかった。だったら、無期契約になってない人たち向けには、契約を止める代わりに当座の生活保障を要求して、そして残った社員の賃上げを要求するという方針でいこうかという結論になった。私は普段、個人相手の相談しかやっていないので、集団の要求をまとめるための考え方を少しでも学べてよかった。

たまたまなのか、それともこういうことが頻発するのか、私が次に参加したケースでも、組織の意見をまとめる上での問題が発生していた。東京管理職ユニオンの神部氏と、ある外資系企業の支部の委員長であるH氏が語る、その企業の労働組合についてである。

内容は、企業のグループ内で始まった集団レイオフに対して、ユニオンを結成した経緯と、その後やっている活動やその問題についてだった。
結成するまでも大変そうだったが、その後の活動がまた大変そうだった。親会社が外資系なので、社員も外国の人が多くいる。当然、組合員も外国人が多い。そうすると、日本の労働法や労働組合のことをよくわかっていない人もいる(日本人の私だってわかってないのだからなおさらだ)。そして、組合の一番声が大きかった幹部もそういう人だったそうで、「その考えは日本の法律上違う」「その作戦は活動上得策ではない」と言っても聞かずに自分の考えをしゃべり続ける。結局、その人は自分の考えが無視されるからと、何人かの組合員と一緒に脱退していったそうである。また、もともと解雇に対抗するために生まれた組合なのに、解雇を受け入れるつもりだけどその条件をよくするために入ってこようとする人もいたり、組合員に何をやっているかわからないと文句を言われ、会社が作った第2組合に入ってしまったり、そんなことがあると、H氏はなんのためにやっているんだと思うこともあったそうだ。

そういうことに対してというわけではないそうだが、最近、主に自分でやっていた運営や事務の仕事を、だいぶ組合員にやってもらうようにしているとのことである。そうすることで、業務的にも楽になり、組合のやっていること、やりたいことも共有できて気持ちも多少楽になったそうだ。一人が指導して、皆がそれに従うのではなく、皆が主導で動く。これが団結の理想的な形なのかもと思った。

自由討論

1日目はその後自己紹介、懇親会などがあった。そして最終日である2日目は、事前に提出したワークシートを見ながらの自由討論が行われた。ワークシートは参加者全員分が印刷されて配られたが、半分以上が締め切りに間に合わなかったと思えないぐらいどれもびっしり書かれており、やはり日本の未来は明るいと思った。
自由討論では、組織の代替わりや教育の話など面白い話がなされたが、中でも興味深かったのが資金難の話だった。ほとんどのユニオンで資金繰りに苦労しているようで、組合員を増やすには、などと話がなされる中、サポートユニオンの堀切氏が、物販でお金を稼いでいるという話をした。もともと教職員のユニオンということもあって、年を取った会員の人が、ちょこちょこ蔵書を寄贈してくれるらしいのだが、スペース的に事務所に置いておくこともできないので、事務所の玄関前で路上販売したり、メルカリで売っているとのことだった。どれぐらい売れたのかもざっと言ってくださって、それがどれぐらいか忘れてしまったが、総合で結構驚くぐらい実用的な金額になっていたのを覚えている。うちのセンターでもやろうかしら。センターのみなさん、「あれ、あの本があったはずなのに」ということが発生したら、まず私を疑ってください。

未来

今回セミナーに参加して一番良かったと思うことは、セミナーの内容でなくて申し訳ないが、やはり若い人が意外と精力的に活動しているという認識を得たことだ。まだまだ相談はひっきりなしだ。同年代やそれより若い仲間もいることだし、必要とされるうちは、頑張っていこうと思う。(事務局 種盛真也)

関西労災職業病2024年9月558号