2トン以上で昇降設備設置と保護帽の着用義務~強化された貨物自動車積み卸し作業の安全対策~

トラック(貨物自動車)の荷台への積み込みと荷卸し作業などというのは、まあ、ありふれた仕事だ。陸上貨物運送事業に従事する労働者はもちろんのことだが、あらゆる業種で日常的にやっている仕事の一つだろう。昨年の労働安全衛生規則の改正は、そういう相当数の事業場に関係がある、言いかえると相当数の事業者に新たな義務が課せられるものだった。以下、紹介しておく。

まず、昇降設備の設置義務の対象となる貨物自動車の範囲が拡大された。

これまでは最大積載量5トン以上だったのが2トン以上となった(安衛則第151条の67)。昇降設備とは踏み台などの可搬式のもののほか、貨物自動車に設置されている昇降用ステップなども含まれる。テールゲートリフターを昇降設備として利用する場合は、中間位置で停止させてステップとして使用するものとされている。なお、高さ1.5mを超える箇所での作業では、もともと原則として昇降設備の設置が義務付けられている(安衛則第526条第1項)。

荷を積み卸す作業を行うときに、労働者に保護帽を着用させる義務の対象となる貨物自動車について、最大積載量が5トン以上のものに加え、以下のものが追加された(安衛則第151条の74)(下図参照)。

  1. 最大積載量が2トン以上5トン未満の貨物自動車であって、荷台の側面が構造上開放されているもの又は構造上開閉できるもの(平ボディ車、ウイング車等)
  2. 最大積載量が2トン以上5トン未満の貨物自動車であって、テールゲートリフターが設置されているもの(テールゲートリフターを使用せずに荷を積み卸す作業を行う等の場合は適用されない)。

テールゲートリフターの操作は特別教育実施義務

荷を積み卸す作業におけるテールゲートリフターの操作の業務を行う労働者に対し、学科4時間、実技2時間の特別教育を実施することを義務付けた(安衛法第59条第3項)。特別教育を行ったときは、事業者において受講者、科目等の記録を作成し3年間保存する必要がある。

運転者が運転位置から離れる場合には貨物自動車の逸走を防ぐため、①荷役装置を最低降下位置に置くこと、②原動機(エンジン)を止めること、③ブレーキを確実にかけるなど逸走防止措置を講ずることが義務付けられている(安衛則第151条の11)。しかし、エンジンを止めると荷役装置が動かせない場合、運転手一人だけで荷役作業ができないこと、テールゲートリフターは、収納位置が必ずしも最低降下位置ではないという実態があることから、①と②は適用除外となった。

どうだろうか。

2トン車で荷物を積み卸しする作業は、様々な業種で見かける作業だ。昇降設備設置に保護帽(墜落時保護用)の着用は当然の義務となり、便利なテールゲートリフターの操作をする人にも計6時間の特別教育の実施が必要となった。最低限の労働安全衛生対策として着実な取り組みを進めたい。

関西労災職業病2024年6月555号