ハラスメントホットラインを実施~全国から217件の相談

全国9ヶ所に二日間で217件

全国労働安全衛生センター連絡会議(全国安全センター)は、10月10日の世界メンタルヘルスデーにあわせ、2023年10月9日と10日の2日間、「職場のメンタル労災相談・ハラスメント対策ほっとライン」を開設した。コミュニティユニオン全国ネットワークとの共催で、札幌、東京、山梨、名古屋、大阪、神戸、岡山、広島、福岡の9か所で相談を受けた。

今回は、全国安全センターの持つフリーダイヤルを活用し、各拠点に担当地域を割り振って、相談に対応した。全国で合計217件の相談があった。当センターは大阪拠点で、兵庫県以外の近畿圏、四国、少し離れて沖縄県を担当した。217件のうち大阪は46件、相談者または会社の住所地は、大阪府9件、京都府6件、愛媛県・滋賀県3件、奈良県・香川県2件などだった。

男女別では、男性98人、女性104人とほぼ同数で、大阪では男性21人、女性15人でやや男性が多かった。年齢別では、60歳以上が44人、50代34人、40代21人、30代10人と年齢層が高かった。大阪拠点では50代が一番多く、次に60歳以上、40代の順だった。

電話してきた年齢層が高かったのは、テレビのニュース番組や新聞でホットラインの情報を得た人が多かったせいかもしれない。
雇用形態では、正社員が74人、非正規社員が48人だった。

ハラスメントの行為者については、やはり、一番多いのは上司で62人、同僚が32人、社長や理事長、校長などの組織代表者が20人、先輩が8人、委託先・顧客が4人、正社員からというのも2人あった。

あらゆる労働相談が

相談内容についてであるが、タイトル通りハラスメントについての相談が多かったが、それにまつわる様々な労働問題が寄せられることになった。

ある社員は職場で、定年再雇用の人の条件が劣悪で、タイムカード打刻後の残業の強要、無視や必要な連絡をしないなどのいじめ行為をされているのを見かねて、本社窓口に改善を求めたが話が進んでいない。自分ももうすぐ定年退職するが、会社に再雇用後の労働条件についての話し合いを拒まれている、という相談だった。行為者が会社で、会社が追い出すために労働条件を悪くしたり、ハラスメントをしている可能性が高い。これは単なるハラスメントではなく、会社の不当労働行為にもあたる。

また、残業代が出ない、残業時間が30分未満切り捨てである、休憩時間を取らせてくれない、病気休暇をなかなかとらせてくれない、休業中に不当に連絡などを強要される、早く職場に出るよう執拗に言われる、業務のやり方を教えてくれない、というものも多数あった。職場での労働条件にまつわる問題も、使用者側によるハラスメント行為と捉えて、相談が寄せられた。

ある看護師は、有給休暇について「うちにそんなシステムはない」と言われたが、休む必要があったので有給休暇を申請して取得したところ、看護師長からミーティングで嫌みを言われた、職場の問題点の改善を訴えたり不正を見つけて報告した後に、不当な扱いを受けるようになったという、あからさまなハラスメントの相談もあった。

深刻な暴力、カスハラも…

上司や同僚からの暴力というのも少なからずあった。

同僚からハンマーで殴られた。仕事を失敗すると、頭をたたかれたり、膝を蹴られたりする。食堂で突然、上司に首根っこを掴まれて食堂の壁にぶつけられた、というものもあった。

日常生活で、他人に暴力を振るう、暴力を振るわれるという場面は滅多にないこと、異常なことと感じる方の方が多いはずだが、それが日常に、職場で起こっているという事例がいくつも寄せられた。そのような非常識がまかり通る職場が少なからずあるということだ。

また、相手が委託元や顧客、という事案もあった。

損保会社から特別調査の仕事を請け負っているが、多くの仕事を回され、休みが取れない、3日で報告書を出せなどと言われる。報告書内容も保険会社の意向に沿うように強要される、言うとおりにしないと仕事はまわさないと脅されるという相談があった。
客から「ボケ」などと暴言を受けた外国籍の店員もいた。店側はその客の立ち入りを禁じたようだが、まだ店に来ているということだった。

工事現場の警備員であるが、工事作業員が「こんなとこに置くな」と矢印看板を蹴飛ばして行く、このようなことが度々あり、「すみません」と言ってやり過ごしているが、我慢しなければいけないのか、と電話口で不満を述べた。

何年も前の相談も

前の会社でのことだが、と10年前、20年前のハラスメントを訴える人も何人かいた。

そのために会社を辞めたり、メンタル不調になって、今でも働けていない、という訴えだった。こういった相談には、まずは現状を聞いてなにか支援を受けられるかどうか考えてアドバイスを行った。あのときの会社や上司のせいで、という悔しい気持ちを話したいというのは分かるが、現在では聞いてあげることしかできない。

当時は、どこに相談すればいいか分からなかった、ということだった。安全センターで労災相談のフリーダイヤルを設けていたが、ようやくホームページを開設し始めたような頃なので、宣伝も足りず、私たちのような労働安全衛生センターの存在は余り知られていなかった。今回は、テレビのニュースで報じてもらえたことが大きく、多く相談があったようだ。

相談の大半は、話を聞くだけで終わったのだが、いくつかは地方のユニオンなどにつないだり、今後の経過によっては当センターに再度連絡するように伝えている。

様々な相談が入り、職場の実態を垣間見ることになったホットラインだった。相談先があれば相談したいと思っている人は多数いることが分かり、今後もこのホットラインは続けることを考えている。

関西労災職業病2024年1月550号