関西労働者安全センター第43回総会開催/記念講演は新設に政策転換した原発問題:末田一秀氏「原発回帰政策がもたらすものとは?」

関西労働者安全センターの第43回総会を開催した。2023年2月20日、今回も新型コロナウイルス感染症の対策のため、対面とオンラインの併用で行った。

多忙な中、多数の方に参加いただいた。

2022年も、労働安全衛生の面でも、社会的にもたくさんの出来事があった。

これまで本誌でもたびたび報告していたように、新型コロナ関連の労災請求はますます増加しており、今年1月末で請求件数は156,000件、労災認定件数は135,000件となっている。しかし、あきらかな職場感染であっても、労災請求していない場合も多く、この数字は実際の数字より少ないはずである。また、コロナウイルスの重篤な後遺症と思われる症状に苦しむ被災者も少なくないこともわかってきた。

最近は多くの企業がリモートワークから徐々に職場へ出勤するようになってきている。

ハラスメント防止対策が昨年4月より全事業場に義務づけられた。アスベストについては、建設アスベスト給付金がスタートし、当センターにも厚労省からの通知を受けた方などから多くの相談が寄せられた。

センターの運営協議会の委員については、全港湾大阪支部より参加いただいていた𠮷馴真一さんが関谷和人さんに交代となった。

今年2023年度の活動方針も承認され、新たな気持ちでこれからも精進する所存である。また、今年は当センターの設立、1973年9月から50年となる年でもあり、秋ごろ記念イベントも計画する予定である。

記念講演は、はんげんぱつ新聞編集長の末田一秀さんに「原発回帰政策がもたらすものとは?」と題して、岸田政権が打ち出した「次世代原発の新設・増設検討」とはどういうことか、政府の思惑や原子力発電所の現状について、解説いただいた。

末田一秀氏(はんげんぱつ新聞編集長)

原発新設の検討は、政府のGX基本方針にて打ち出された。GXは化石燃料に頼らず、二酸化炭素の排出量を減らす取り組みということだが、そこに「再エネの主力電源化」の次にこの「原子力の活用」を上げている。しかしながら、末田さんはこれが現実不可能なものであることを、次々と説明した。政府の言う2030年電源構成に占める原子力比率20%を達成するには、実際原子力発電所が27基必要であるが、現実は再稼働中の原子炉は10基、許可が下ながらまだ稼働していない7基は安全対策工事中だったり設備不備であったりとすぐには再稼働できない理由があり、原子炉の数が到底足りていない。また、原発の新設には、少なくとも1兆円かかり、また計画から稼働までにかかる時間は、太陽光では1年のところ、原子力は20年と長い時間がかかるため、この点でも現実的ではない。

しかしなぜ、原発を作りたいのかというと、国内の原子力発電のサプライチェーンが原発事故以来仕事がなくなり、企業が次々に撤退しており、このままでは技術を持つ企業がなくなりサプライチェーンがボロボロになっているということで、このサプライチェーンの維持・強化のため新たな原発を作ろうという流れだとか。

さらには、原発がなければ電力が足りないというのもウソ、電気代の値上がりも原発が足りないためと思われているが、まったく逆である。原発による電力はコストが高く、今後の建設費で値上がりする予定で、しかも福島原発の事故処理費は21兆円にも及ぶ見込みで、それらも原発の電気代に上乗せされ、他の発電よりも原子力が一番コストの高い電力となる。

他にもいろいろ興味深い話をしていただいたが、ご興味のある方は、末田さんのホームページ(「環境と原子力の話」)もご覧ください。

総会を終え、また新たな1年、みなさま、よろしくお願いいたします。

関西労災職業病2023年3月541号