筋骨格系健康セミナー開催、腰痛2事例を検討●大阪・兵庫
関西労働者安全センターは、ひょうご労働安全衛生センターなどと一緒に筋骨格系の業務上のケガや負傷に関する事例検討会を毎月参加している。田島診療所の三橋医師にご協力いただき、実際の相談事例、症例をもとに、治療方法や経過、残存障害について医学的解説を加えながら議論をしていく検討会である。
この検討会にさらに多くの方の参加を促し、活動を活発に進めるべく、昨年12月5日には腰痛に関する学習会、「筋骨格系健康セミナー」を開催した。テーマは腰痛で、これまでの腰痛相談の中から、実際に労災請求を行ったケースを2例あげて詳細に検討した。
1件目は全港湾大阪支部安全衛生委員会からの相談事例で、2018年に発生した腰痛症である。このケースは、業務で運転する産業重機であるログローダーの運転席シートのエアサスペンションが故障したことにより作業中の振動ばく露が増大して負傷したものであった。
また、本来であれば振動を吸収するべき座席部分が、エアが抜けた状態、例えるとペシャンコになったボールの上に座った状態になり、視線も畢竟通常よりも低く、姿勢も不安定なまま運転したことにより段差を越える際に強い衝撃を受けたことでさらに悪化したと思われる。事件発生当日は、被災者は「何か腰の調子がおかしい」くらいの感覚であったが翌朝には立てない状態になり、搬送された医療機関でヘルニアの手術を受けることになった。
当然、業務上災害として認められるだろうと労災請求をしたものの、上記のような詳しい事情を伝えないまま原処分庁である岸和田労働基準監督署の判断をゆだね、不支給となってしまった。その理由は主に腰痛が加齢によるものであると労災協力医が意見をし、監督署もその意見を批判することなく受け入れたためである。
全港湾大阪支部安全衛生委員会は、この判断をくつがえすべく審査請求から代理人として介入したが、結局再審査請求まで争ったものの原処分が取り消されることなく終結してしまった。三橋医師や滋賀医科大学社会医学講座の協力を仰いでログローダーの振動調査も実施し、故障したエアサスペンションシートがいかに全身振動を増大させるか証拠として提出したものの、調査結果について充分な検討がされなかったのだが、この調査結果は今後の安全衛生活動や労災請求闘争に大いに役立ててほしいと思う。
2例目は私が取り組んだ20年前の大商海運の非災害性腰痛の労災請求である。
1例目のような災害性腰痛ではなく、非災害性腰痛はなかなか業務上災害として認められないが、作業内容や作業で扱っている商品や資材などの重量を具体的に示すことで業務上災害として認めさせることができたのである。また、休業期を経て職場復帰を果たしたのちも、療養だけは継続し、その療養についても労働者災害補償保険が適用されるのであるため、被災労働者も安心して仕事を続けることができることを報告した。
腰痛は港湾病とも言われ、全港湾に加盟する組合員が働く事業所は腰痛症の多発業種である。全港湾では、20数年前に腰痛アンケートを全組合員に対して実施し、公表にはいたらなかったものの、あまりに症例が多かったために組合をあげて腰痛対策の強化を図った経験がある。また、その他2つの事業所においては、業務上災害として認めさせるだけではなく、仕事を続けるうえで労働者が抱える腰痛を悪化させないことを目的として、監督署交渉を通じて長期療養を認めさせてきた。
私たちからの事例を紹介するだけではなく、他の参加者の経験もあわせて意見交換を行い、今後につながる学習会となった。今後も参加者を増やして活動をしていきたいと思う。(事務局:林繁行)
関西労災職業病2022年1月539号