精神障害の労災認定基準改訂に向け専門検討委員会開催中/狙いは処理の迅速化

厚生労働省は、現在、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会を開催している。

「心理的負荷による精神障害に係る業務上外の判断指針について」という判断指針でしかなかったものが2011年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」策定で認定基準となり、その後、2020年5月と8月の2回の改定が行われ、今回3度目の見直し作業となる。

精神障害の労災補償について(厚生労働省)

第1回検討会は2021年12月7日に開催された。

今回の改定作業で、主な課題とされているのは、「迅速化」である。2020年度の平均処理期間は8・5か月で、請求件数の増加に伴い長期化傾向にある、と第1回専門検討会に現状が示されている。そして、現状の労働環境の変化に対応するため、最新の医学的知見、裁判例、支給決定事例を踏まえて、認定基準を検証し、より迅速かつ適切な業務による心理的負荷の評価が行えるものとする、と資料にある。

「迅速化」が一番の最終目標であるが、検討会では、これまでに業務上外を争った裁判や認定作業で問題となった点なども、論点として取り上げた。

これまで検討された項目は、

  • 判断の基準となる労働者-「ストレス-脆弱性理論」に基づき、心理的負荷の強度を客観的に評価するに当たり、どのような労働者にとっての過重性を考慮することが適当か
  • 業務による心理的負荷の考え方-心理的負荷の強度の判断で「出来事」と「出来事後の状況」を一括して負荷強度を強・中・弱と評価しているのは、医学的知見や裁判例に照らしても適当か
  • 業務による心理的負荷評価表の検討-出来事の修正・統合、または追加、出来事が複数ある場合の全体評価
  • 心理的負荷の評価期間-発症前おおむね6か月は妥当か

などである。

まず、気になるのは最初に議論された「判断基準となる労働者」であるが、「ストレス-脆弱性理論」に基づいて「同種の労働者」あるいは裁判では「平均的な労働者」が基準とされているが、判例も踏まえて、一定の幅があるということは検討会としても異存がないが、広く捉えすぎては本人を基準とすることと同義となり不適切である。現行の「同種の労働者」の定義である「職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する労働者」は妥当とした。

心理的負荷評価表には現行37の出来事が示されているが、その中の類似したものを統合し、ほかに追加を行うべきかも検討することになった。出来事の表記もより分かりやすく修正する作業を今後行う。

出来事が複数ある場合の評価について議論するに当たって、2020年度の支給決定・不支給決定事例の数の資料が示された。支給件数608件のうち、66件が「中」が2つ以上あり全体評価を「強」とした件数だった。「中」の出来事に加えて恒常的長時間労働があった場合も「強」と判断されるが、その件数は別に41件で、それを除いた件数である。一方、不支給事例1298件のうち、「中」が2つ以上あり評価は「中」としたのは、64件だった。委員の中には、認定された66件は多い、ばらばらに起こったように見える出来事でも本当は最初の出来事と関連して起こったというこのは少なくないのではないか、と疑問視する声があった。全体的に単純に足し算で、複数あれば「強」にするのは違うという意見が多く出た。

我々被災者支援の立場から言うと、66件は少ないと感じる。大阪で「中」の出来事が複数あり「強」と判断される事例は年に2件、多くて3件である。なので全国47都道府県の集計で66件は各県1、2件ということである。ならば不支給の64件は少ないかというと、複数の出来事で負荷がかかった事案の多くは、訴えた出来事を出来事として評価してもらえなかったり、「弱」と評価されたため、ここに当てはまらなかったという事案が無数にあったと考えられる。だから、そのような中で「中」2つの評価を得ることも難しいのに、それでも「強」とならないのは、被災者にとっては理不尽この上ないと思われる。

心理的負荷の評価期間については、現状の6か月が妥当とされた。医師の意見がそうなので、今回変更はないだろう。しかし、これまでセンターで受けた事案だけで考えても、半年以上前の出来事から負荷が始まっているようなことは多く、納得がいかない。

その後、検討会は具体的な心理的負荷評価表の修正に取りかかっている。今年9月20日に開かれた第7回では、評価表の類型①事故や災害の体験、②仕事の失敗、過重な責任の発生等、③仕事の量・質の項目について、表記の修正を議論したところである。

この検討会には何度か各団体からの要望が提出され、検討会資料に添付して配布されている。当センターが加盟する全国労働安全衛生センター連絡会議からも意見を2度提出した。

認定基準を変えられる機会であり、また検討会の議論では委員の意見について、実態とかけ離れたものと感じることも多く、今後も検討会を注視し、意見を出していくつもりである。

関西労災職業病2022年10月537号