今年も課題が盛りだくさんの省庁交渉/全国労働安全衛生センター連絡会議●全国

9月6日、東京の衆議院第一議員会館にて、全国労働安全衛生センター連絡会議(全国安全センター)の省庁交渉が行われた。全国安全センターの省庁交渉はほぼ毎年行われ、加盟する全国の各団体から課題を集めて作成された要望事項は、労働行政に対して、情報公開、労働安全衛生、労災補償など多岐にわたった。国からは厚生労働省、総務省の職員50名弱が項目ごとに入れ代わりながら対応した。

主な要望項目は、厚労省の行政文書開示・保有個人情報開示、化学物質管理、個人事業主の安全衛生対策、ハラスメント防止、新型コロナウイルス感染症・過労死・じん肺・アスベスト・腰痛・化学物質による労災、建設労働者の労働者性問題、傷病補償年金の運用、審査請求制度、公務災害制度の運用、厚労省職員の増員などだった。

要望書は以前に提出して、前もって文書回答をもらい、交渉当日はその回答を元に質疑を行った。このやり方で交渉を行うのは2度目である。このやり方になる前は、行政側が要望事項に対する回答文書を長々と読み上げるのに時間が取られて、質疑があまりできなかったのが、改善された。それでも項目が多く、すべての項目についてやりとりする時間はなかった。それでも、いくつかの重要項目について、行政側の担当者と話し合うことができた。

当センターが支援するアスベスト関連労災で、行政保有個人情報の開示請求をした際に、大阪労働局が添付されているCT検査などの画像データを、複写したCD-ROMで交付するのではなく、CDの表面を紙にコピーしたものを渡すだけとしたことがあった。労働局に抗議したところ、今年2月より運用を見直して、そのような形にしたとの返答だった。しかし、情報開示の制度上、間違った運用であるので何度かやりとりした後、最終的に複写したCDを交付させた。それをふまえて、厚労省に情報開示でこのようなことが今後はないように文書を出して徹底してほしいと要望した。厚労省は今後も全国的に適正に行えるようにする、と回答した。行政保有文書の開示制度が始まってずいぶんと経つが、不開示の判断が局によって異なったり、今回のようにずさんな判断が見られるようになっているように感じる。厚労省は一度、適正に行われているか見直しをしてほしい。

フリーランスの安全衛生の問題では、厚労省の専門検討会が労働者でない働き方を推進する業界側の意見ばかりでなく、当事者のヒアリングをきちんと行うように要望した。

またテレワーク労働者の労災事案で、時間外の労働時間が認められなかった事があり、テレワークの労働時間把握を事業主側に徹底すること、そのためにも実態調査を行うように求めた。

じん肺の標準X線写真の改訂について、前回の交渉でも要望したのに何も進んでいないことについて、問い詰める場面もあった。またある裁判において、厚労省にじん肺管理区分2の認定を受けた原告について、厚労省でじん肺の専門家とされる芹澤氏が、被告ニチアス側の依頼で原告は管理2ではないとの意見書を出すなど、企業側と金銭関係のある学者を、国の専門検討会で重視するのはおかしいという批判も出された。

新型コロナウイルス感染症の労災については、都道県別のデータ公表や、通勤災害、ワクチン接種による事案などについて質問した。またコロナ後遺症を今後アフターケアの対象とすることも求めた。しかし、件数の多さや多様な症状から判断しにくいことなどから、手が回らない、手探り状態というような返答であった。

ジアセチルによる閉塞性肺疾患のように1件でも労災認定のあったものは、職業病リストへの掲載するよう求めたことに対して、厚労省の動きは鈍く、早急に検討するように強く求めた。

建設業で雇用契約に切り替えて社会保険に加入させた元一人親方が、労災請求した際に、労働者性なしとして不支給処分となった事案があった。このような事態への対策を講じるように要求した。

約2時間と短い時間で話し合いを行うには、到底時間が足りず、消化不良なまま終わった課題も多かったが、重要な案件については、今後も様々な手段を用いて、行政へ改善を求めていく。

関西労災職業病2022年10月537号