津波・高潮ステーション訪問/全港湾大阪支部安全衛生委員会●大阪

全港湾大阪支部では、港湾で働く労働者を組織していることもあり、津波をはじめとする自然災害発生時にどのように彼らの安全を確保するかについては重要な課題として取り組んでいる。とりわけ、近い将来に発生が見込まれる南海トラフ巨大地震に伴い、大規模な津波が大阪を襲うと想定されることから、避難訓練だけではなく、事業所としての災害発生時の対策や、避難ビルの確認など常に注意喚起は怠らない。

大阪の水害史トンネル

2022年7月15日の安全衛生委員会定例会では、大阪市西区の津波・高潮ステーションを訪問し、改めて自然災害発生に備える必要性を確認した。津波・高潮ステーションとは、大阪府が運営する防災教育施設で、大阪府西大阪治水事務所に併設されている。大阪府のうち大阪湾に面する西側は、昭和9年の室戸台風以来、高潮などで多数の人命が失われてきた。もともと大阪はほとんど海で、弥生時代までさかのぼると上町台地と呼ばれる南北に走る高台以外は大阪市全体が海である。5世紀以降、治水工事を進めて大阪平野を構築し、近代化に伴い沿岸を埋め立てて拡大して現在の姿になっている。

近代化の弊害は、工業用水確保のために地下水をくみ上げた結果、地盤沈下という形で現れる。海抜ゼロメートルの地域が大阪府下では40㎢にまで広がり、そこに108万人が暮らしている。津波・高潮ステーションは、「海より低いまち大阪」を体感できるように、海面に見立てた床から町を見下ろすコーナーを冒頭に設け、この環境が水害に対していかに脆弱であるか訴えてくる。次にこれまでの大阪の被害について当時の写真と映像を通じて訴え、最後に、現在の水害対策を、実際に堤防の出入り口を増水時に塞ぐために使われていた鉄扉と水防団活動のジオラマで紹介している。

台風がもたらす高潮は、昔から大阪の人命や財産を脅かしてきたが、これまで最も潮位があがったのは平成30年の台風21号時である。大阪では昭和45年以降、高潮対策に安治川、尻無川、木津川の下流に水門を設け、川をさかのぼってくる高潮対策を取っているが、この水門を閉めなくてはならない回数が近年目に見えて増えているという。高潮だけではなく、大規模な地震に伴う津波では予想をはるかに超える高さの波が来る可能性もあり、その場合の浸水地域も公表されている。大阪で自然災害に遭ったときの準備は、労働者もその家族も日々意識していく必要がある。準備とは、単に食料等の備蓄や非常時持ち出し品だけではなく、避難場所や安否確認などの情報を家族と共有することなども含まれる。

高潮防止の要である水門(模型)

事業所によっては大規模な地震が発生した直後に現場の状況を従業員に確認させようと現場に戻るよう指示を出したという報告も定例会で出されたが、まずは安全の確保が第一である。

津波・高潮ステーションでは、津波災害体感シアターも用意してあり、南海トラフ巨大地震が発生し、大阪に大津波がやってきた、というシミュレーション映画を放送している。この映画の中で海岸沿いの道路を走る営業マンが地震後に事故渋滞に巻き込まれ、「どないしようかなぁ…これ、会社の車やしなぁ」と車を降りて高台に逃げることを躊躇するシーンがあったが、これは私たち日本の労働者の一般的な感覚ではないだろうか。最近は小規模な地震も多発していることもあり、各参加者は分会でもう一度確認する良い機会になったに違いない。

津波・高潮ステーション(大阪市西区江之子島2-1-64)地下鉄阿波座駅8番出口から徒歩1分

関西労災職業病2022年7月534号